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源氏物語 10
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『源氏物語』第二部後半の第37帖「横笛」から第41帖「幻」までは、もはや王朝恋愛絵巻という華麗さとは遠くなって心理小説と呼びたくなる展開である。光は50代となり、年若い正室女三の宮の柏木との禁断の子を受け入れ、柏木の死を悼む。わが子夕霧は、かつての自分と同じ過ちの道を進み始め、運命に翻弄された紫の上の苦悩と孤独は深まり、出家を願うも光の許しを得られず悲しみのうちに落命する。光は、かかる現実こそ自らが重ねてきた人生、人間関係の因果応報と受け止め悲歎にくれ、出家を決意し紫の上の文を焼き尽くすことで、永遠の訣別を果たし読者の前から姿を消してゆく。52年の生涯だった。作者は本文のない「雲隠」を置いて光の死を暗示するばかりだが、かつては本文があったものの読者がつぎつぎ光ロスを儚んで出家が横行したので消されたとか、実は死をめぐる6帖があったのだとか俗説がさまざま生まれることとなった。 2021/06/29