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『オン・ザ・ウェイ』
僕は、学校に来ている。
鳥のさえずりが、クラスメイトのざわめきに。木漏れ日とベンチは、長細い蛍光灯と硬い椅子に。僕を魅了していた物語は、教科書とタブレットに。ちょっと初々しく、少しうんざりで、それなりに楽しみだ。
僕は、学校に来ている。
「セオリーを考えよう」
人差し指を立てながら、伊藤先生は口にする。
まだお互いが距離感とキャラ感を探っていた四月初め。卓馬は、「セオリーとか知らねぇし
『誰かが、あなたと。』
「そこ座ってもいいかな」
春に春を重ねたような声。まばらな木漏れ日がページの上で揺れる。僕は栞をそっと挟んで本を閉じた。まだ、随分とページは残っている。
「あ、そこは座らないでほしいんだ」
「え、どうして?」
困惑した声も春の趣。彼女は続けてさえずる。
「誰か、来るの?」
「あ、うん。おとうとが来るかもしれないんだ。ほら、そこに仮面ライダーのシールが貼ってあるでしょ。だいぶ剥がれかかってい