『君と宇宙を歩くために』|日常の孤独と友情を描いた感動漫画
noteで漫画について書くのは、久しぶりです。
先日Xで、石田スイさんからのフォローが外れていたのですが、再びフォローされる不思議な出来事が起きました。 驚きましたが、嬉しかったです。
これまでと変わらず、僕は漫画が大好きなので、おすすめの作品を紹介したいと思います。
感動の漫画『君と宇宙を歩くために』
最近読んだ中で特によかった漫画は、『君と宇宙を歩くために』です。
この漫画を読んで、ジーンと感動しました。
&Sofaにて連載されているマンガ大賞2024の大賞作品です。
あらすじ
漫画の感想と共感ポイント
主人公の宇野くんは、人と同じように生活するための工夫が必要です。この漫画は、『アスペル・カノジョ』とテーマが近いと思いました。
しかし、読んでいるときの気持ちは、似ているようで違います。
この漫画は、宇野くんが日常生活を送る中でどのような悔しさを抱え、それを友達の小林くんとどう解消していくかを描いています。
2人の変化と、少しずつ周りに広がっていく様子が魅力です。
たとえば、小林くんのアルバイト先では、このような出来事があります。
アルバイトでうまくいかないことが続いていた小林くんは、宇野くんと話すうちにだんだんと変わっていきます。
そして、変わろうとする小林くんを支えてくれたのは、先輩の山田さんです。
2巻では、山田さんが抱える思いもよらないコンプレックスや悩み、それを乗り越えていく様子に焦点が当たります。
ここに、共感する人も多いのではないでしょうか。
少し話はそれますが、こういったテーマの漫画を読むとき、どこに共感するかによって物語の響き方が変わると思います。
この漫画は、宇野くんや小林くんの周囲の人たちも自分と向き合い、変わろうと行動する姿に心を動かされます。
山田さんのエピソードは、漫画では簡単そうに見えても、実際にやろうとすると、とても抵抗を感じることでしょう。
必ずしも誰もがやらなければならないことではありませんが、はじめの一歩を踏み出すことや何かのきっかけとして、とても素晴らしい漫画だと思います。
1. 主人公「宇野くん」の魅力
では、物語の起点となる宇野くんが、どのようなキャラクターか、特徴を大きく分けて3つ紹介します。
1つ目は、人よりも記憶力は良いけれど、一気にたくさん行動することや臨機応変に動くのは苦手なことです。
それを見たときに、記憶力が良いことは一概に悪いことではなく、むしろポジティブな面もあると思いました。
記憶力の可能性
本来、才能に対してポジティブかネガティブかを判断したり、加点や減点をすること自体がズレているかもしれません。
また、宇野くんのお姉さんのように、人は良い・悪いを決め、悪いことの方に目を向けやすいものです。
一方で、宇野くんが人よりも記憶力が良いことは、とてもポジティブに感じます。
僕も記憶力が良いと自覚していますが、それが何の役に立つかといえば、使えていないと感じることも多いです。 ただ、宇野くんの場合は、記憶力の良さを活用できるように思えます。
宇野くんが記憶力の良さを活かすシーンは、3巻以降に描かれるんじゃないかと、勝手ながら想像が膨らみ、とても楽しみです。
2. 日常の孤独を宇宙に重ねて
冒頭では、『アスペル・カノジョ』とは全然違う漫画かもしれないと予感していました。そこから確信に変わったシーンがあります。
この宇宙の描写です。
宇宙空間に一人で放り出されたような感覚は、きっと多くの人が体験したことがあるのではないかと思います。
たとえば、飲み会で周りの会話に入れずに、一人ぼっちになっているときや、会社などのコミュニティには所属しているけれども、家に帰ってふとした瞬間に、
自分って、すごく一人なんじゃないかなと思うようなときです。
宇宙に例えるのは、とても綺麗だと感じました。
また、宇宙は単なる比喩ではありません。物語が進むにつれてわかる宇野くんの2つ目の特徴は、彼が宇宙そのものを好きであることです。
3. テザーの意味と価値
続いて、宇野くんの3つ目の特徴を紹介します。
テザーを持っていることです。
宇野くんは、命綱としてノートを作り、常に肌身離さず持ち歩いています。これも、人と同じように生活するための工夫です。
彼にとってのノートは、僕にとっての人、社員にとっての会社やオフィスのような存在なのかもしれません。
突然ですが、みなさんにとってのテザーは何でしょうか?
率直に言うと、僕はたぶんテザーがなくても生きていけると感じています。それくらい、ざっくばらんでタフな性格です。
同時に、みんなそれぞれのテザーがあっても良いだろうなと思いました。
所属感と名刺の役割
テザーとして他に何があるかを想像したとき、ふと頭に浮かんだのは名刺です。
名刺があることで、自分がそこに属していると感じられる人もいるのではないでしょうか。 その人にとって名刺は、テザーの役割を果たすでしょう。
今、僕の名刺には、会社名や肩書きはなく、鎌田和樹とだけ書かれています。
振り返ると、僕と付き合い続けてくれている人は、UUUMを離れて役職や環境が変わっても変わらないものに目を向けているのかもしれません。
また、社会の大半は、会社に属さなきゃいけない、もしくは会社に属さずにフリーで、YouTuberやインフルエンサーのように個人で働く人たちではないでしょうか。
一方で、僕は社会の大半の人々のようには働いていないし、特に何も持っていませんが、恥ずかしいとも思わないし、何かにしがみつきたいとも思いません。そういった感覚を、宇宙の表現やテザーの話から連想しました。
僕はむしろ、そんなことを思ってるんだなと気づかされて、より一層、この宇宙という表現が好きになりましたね。
一番印象に残っているシーン
1話の終盤に、大切なノートを捨てられそうになったとき、2人はこのような会話をします。
このシーンには感動しました。それは泣くでしょうと思うほどのエピソードです。
1話は無料公開されているので、ぜひ読んでみてください。
身近なところにあるはずの日常に気づく
『君と宇宙を歩くために』は、移動中や眠る前など、日常からふと離れてその漫画の世界に一瞬だけ入り込み、それを繰り返しながら読み終えました。
『東京喰種トーキョーグール』を読むときは、仕事や日常と漫画が逆転するように没入しますが、『君と宇宙を歩くために』は異なる体験です。
繰り返し何かをしているときの合間に読み、刹那的に触れることでも十分にひとつずつ感じ取れるような漫画でした。僕にとっては、『スーパーの裏でヤニ吸うふたり』とも近い感覚があります。
『君と宇宙を歩くために』を読むと、実は意識していないぐらい身近なところにある日常に気づける、という表現が最も近いかもしれません。
ぜひ手に取ってみてください。
(ヘッダー画像引用元:&Sofa(アンドソファ)公式X)
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