『路傍のフジイ』でみつける新たな視点—35歳からの変化
この漫画を最初に見たのは、確かXだったと思います。「路傍」はどう読むのだろうと思いながら、一話を読み始めました。
その後、単行本を読んでいると、出版社が気になりました。
調べてみると小学館で、ああ、小学館ってこういうコンテンツが好きだよなと、ほっこりしたのを覚えています。
『路傍のフジイ』はビッグコミックスピリッツにて連載中で、次にくるマンガ大賞2024コミックス部門のノミネート作品です。
『路傍のフジイ』のあらすじ
藤井の間が引き出す心の奥底
この漫画を読んで、人は大きく二つに分かれると思いました。
会話の最中に沈黙が生まれたとき、
その間を気に留めない人と、
間を埋めるように話し始める人です。
間違いなく、主人公の藤井はその間を楽しめる人ですが、周りのみんなは耐え切れずに話し始めます。
こういった沈黙の瞬間に、ヘビーな話題が飛び出した経験はありませんか?
もっとライトな話題から始めればいいのに、と思うほど唐突な話が始まることは、意外とよくあるのではないでしょうか。
たとえば、珍しく藤井が飲み会に参加した帰り道の出来事です。
同僚の石川さんがパパ活の話を切り出し、その後に「なんで私、これ言っちゃったんだろう」と、自分でも驚いていたシーンがありました。
僕にも、初対面の人にどうしてこんなことを言ってしまったのだろうと思ったときがあります。
近い経験をされたことがある人も、多いのではないでしょうか。
あらすじにもありますが、この漫画では実際にも起こるけれど、それを共有する術がみつからないような場面を掬い取られていると思います。
人間模様が染みる漫画です。
35歳からの変化—大﨑洋さんの言葉に学ぶ
他にも、この漫画をきっかけにつながった点がありました。
人に対する姿勢の変化です。
最近、初対面の経営者たちで集まる会がありました。自己紹介では、よく耳にするポジショントークをする人もいれば、威勢がいいタイプもいたと思います。
もしも、20代や上場したての頃に参加していたら、おそらく僕はかましにいくタイプだったでしょう。当時はそれが会社を守ることでもありました。
ただ、今の自分からすると、まずは相手の話をしっかり聞きたい、という心境に変わってきました。これはどのスタンスが、好きか嫌いかということとは異なります。
こういった変化には、節目になる年齢があるのではないかと感じます。
そう思うようになったきっかけは、ラジオ番組の収録でした。
吉本興業HDの会長を退任された大﨑洋さんと、「らぶゆ〜おおさか」というラジオ番組を担当しています。
番組の内容は、学生さんの悩みをゲストと一緒に聞くことが中心です。
その収録で、大﨑さんが次のようにおっしゃいました。
このエピソードには、自分でも共感する部分が多く、メモを残していました。
たしかに僕も35歳ぐらいから、人に関心を持つようになったのかもしれません。それまでは、とにかく自分のことでいっぱいでした。
ゆるやかな変化を感じる40代
35歳を越えると、結婚や子どもの誕生といったライフステージの変化を意識する人が多くなるでしょう。
しかし、同世代の経営者と話してみると、40歳というのは中途半端な大人で、名だたる経営者にはまだまだ届かないという印象を持っています。
50歳くらいになると、仕事の仕方が確立され、どう仕事やプライベートを充実させていくかを考える時期になると思いますが、僕はその域に到達していません。
仕事を軸に人生を捉えると、社会人としての最初の十年は自分が主役のように、がむしゃらに働く期間です。
30歳から40歳も似たようなものですが、少しずつ社会的な立場ができてきて、その次にどう楽しんでいこうかと考え始めます。
一人で取り組むには限界があり、人によっては本を読んだり、他人に興味を持ち始めるといった変化があるのではないでしょうか。
この変化は、衰えや弱さを感じるのではなく、人を知ることで人生の豊かさや楽しさに目を向けるようになるものです。
少しずつ、僕もその時期に差しかかっているのかもしれません。
漫画の感想からは、遠いところにきてしまいましたが、『路傍のフジイ』は人生を反芻させながら味わえる作品です。
ぜひ読んでみてください。
(ヘッダー画像引用元:鍋倉夫 @nabekurao)
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