バイオとローダ その2
※「serial experiments lain」のネタバレも微妙
にあるから、気をつけてね。
『あのさ、記憶と記録って、何が違うんだろうねえ』
ローダは、レインちゃんの話が、まだ気になっているようだ。
『あの娘は、記録に全てを託して、生物としての肉体は消すことを選んだ。それが、幸せな決断かは分からないけど、娘の存在は、記録として残る訳だから、半永久的に存在することになるのでは?』
いつも彼は、唐突に問いかけてくる。全く、求めるままに。やれやれ。
「確かにね。では、それに答える為に確認していこう。記録されたものは例えば何があったかな?」
『娘の写真、動画、音声ファイルの日記、CG、彼女のカウンセリングカルテ、そして、娘の周囲の者どもの日記だな。』
「そう。そしてそれらは、全て外部化された彼女だ。様々な方法で、一部を切り取ったものを統合して"彼女"としているのは、寄せ集めに過ぎないよ。」
『しかし、娘がつくり出したものなんだから、それは娘の一部と言えるのでは?』
「・・・一つ言えるのは、それがあるから、彼女の存在が証明できたとして。結局、それを僕らが認識し、記憶しているから、彼女を認識する訳だ。誰かが覚えている限り、その人が存在したと言えるのだとしても・・・それは命の記憶に他ならないのだからさ・・・」
『命に記憶は宿る。その命を失っては、その人にはもう触れられない訳だから、もう記録はそれ以上増えない。その人との絶対的な断絶、つまり生と死があの娘との間に横たわる限り、記録は、その人たり得ない訳だ。つまり・・・』
「生きてこその人生だよ。ローダ。」
深く溜め息をつきながらも、満足し、彼は静かに眠ったようだ。