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【本の紹介】鬱屈精神科医、占いにすがる

タイトルのとおり、精神科医(執筆当時60代男性)が複数回にわたって占い師を頼った経験が綴られている、私小説っぽさもあるエッセイ。「精神科医が占い……?」という意外性が絶妙なタイトルですが、精神科医だからこそ今の自らの状況を薬で治せないことがわかっている、同業みのあるカウンセリングは頼りたくない……というところから占いにすがっていくのは、ある意味いろいろわかってしまっている「精神科医だからこそ」なのかもしれません。

占い師の前で嗚咽してしまうなど、実際に占いを受けたときの話も出てくるのですが、それ以上に、付随する思考や自己分析、自己開示などが結構なウェイトを占めています。このあたりをどのように読むかは読者次第だと思いますが、他人の内面を読むと、自分の内面も改めて問いたくなるというか、何らかのカウンセリング的要素があるなと私はいつも思います。

「この不安の原因がわかってほしい、納得できる答えが欲しい、でもわからなくても所詮占いだし、言い訳できるし」みたいな感じで占いに向かう様子は、すごく人間的でちょっと面倒で、でもなんか共感できてクスッとしてしまいます。そして、占いに対する認識がどうであれ、著者にとって占いは重要な「きっかけ」として機能したようです。どんなことでもいいから、小さくてもいいから、動きや変化をくれるもの、いつもと違う物事って大事なのだろうな……と。


*こちらの本はオンライン購入可能です→からだとこころと暮らす棚

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春日武彦『鬱屈精神科医、占いにすがる』(河出文庫)


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