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快報


人によって物事の捉え方はそれぞれだ。

彼と再び出会ったその日は大雨で、季節の香りも特にないただ寒い夜だった。
彼は本を作っているという。
令和になって万葉集を研究し始め、梅の花の歌だけで歌集を作ったそうだ。
私は1つの和歌を教えてもらった。
彼の一番のお気に入りらしく、雲が切れ光がさすような、そんな明るい歌で、説明をしてもらうと本の中から梅の香りがより鮮明にひろがった。

和歌なんて興味もなかったけれど、過去の偉人が作ったその歌はなぜかとても共感できた。
彼曰く、日本語は歌を作るために生まれた言葉だという。
感情を表したり、情景を表す言葉が無数にある言語で、その奥行きを聞き手は感じながら、推し量りながら会話をする。
それは私の考え方や振る舞い方と少し似ていて、物事をはっきり言えない私の性格を肯定する言葉であった。
彼はそれを研究している。

私は言葉を心で感じ、勝手に傷つき、勝手に安心する生き物だ。
彼は言葉を現象と捉え、本質を考え、次に繋げる。

私が感じた肯定感や、高揚感は彼の感性にはわずかな振動も起こしていない。
でも彼が梅の花の歌を集めたいと思った気持ちを私は勝手に想像し、手に取るように感じることができたことを覚えている。
  
その日、私は静かで、でも少し寂しい日々から解放された。

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