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“フェアは愛情”なり…流れに逆行?「ナツゲーフェア」の成果は?|新文化◆2006年9月28日号 10面
新文化◆2006年9月28日号 10面
「ショテラー・スズキの仕掛け大全」
“フェアは愛情”なり…
流れに逆行?「ナツゲーフェア」の成果は?
ども、先日、奥会津の山奥へ釣りに行き、バイクのバッテリーがあがって国道上で遭難しかけたスズキです。
さて、釣りといえば糸を垂らして太公望を気取るってのが一般的イメージですがスズキの釣りはフライという疑似餌を使った魚との真剣勝負でございます。気づくと自然環境のことまで考えてしまうほどスケールの大きい遊びで、ハマって人生間違った人間が数多くいます。スズキはすでに間違いだらけの人生なので大丈夫だと思いますが。
と、言うわけで、そんなスズキがいままで開催した仕掛け販売・フェアでの失敗談や後悔したこと、自己嫌悪に陥ったことを赤裸々に綴ってみました。
さてさて、フェアや仕掛け販売ってものは、今や当り前のようにどの書店でもおこなっておりますが、たかだか一〇年ほど前までは仕掛け販売や多面陳列なんてぇものはトンと見かけませんでした。
スズキが当時コミック担当だった時に、多面陳列をやって「コリャ目立っていいかも」なんて思っていたら当時の上司に「買ってくれと言っているようであまり好かん」なんて言われておりました。当時はそんな「待ちの販売」が当たり前でした。
時は流れ流れて現在。店先にはメディア化商品が山積み。「今はこれが売れてますよ~。これが話題ですよ~」と言わないと売れない時代です。だからこそ、「ちょっと違うなココは」と思ってもらうために、そんな流れに逆らってやろうじゃないかいコンチクショーと、独りよがりなフェアを日々考えております。ではその実例を。
「一九七〇年代生まれに贈る。ナツゲーフェア」
最近は中古ゲームを販売しているお店が近所に増え、ワタクシも休みの日に行ったりするのですが、友人と行くと懐かしいゲームの話しで盛り上がってしまいます。
じゃ、七〇年代生まれが盛りあがるファミコンでフェアをやっちまおーってんでこのフェアを考えました。ではそのレシピを。
用意するもの
①フェアの商材「古いゲームの専門誌のバックナンバー」②モニターとファミコンとゲームソフト③ゲームへの愛情
①に関しては当り前ですが売るものが無いとフェアになりません。雑誌のバックナンバー(BN)というのはワタクシが良く使う手なのですが、BNは普段取り寄せでもしない限り滅多に店頭で手に入りません。それだけでレア度アップです。(発注時はフェア用であることを伝え、返品了解がもらえる様に交渉する。その方法は後ほど)
②はディスプレイに使用する。タダでさえ動きのない書店の売場では動く映像というのは絶大な効果があると信じています。特にマ○オを映像で流したら、そりゃもう立ち止まること間違いなしです。(ゲームを提供してくれたバイトくんたちには感謝)
③はフェアテーマへの愛情ですが、愛にまさる調味料はナシ。というくらいにお客様へフェアのメッセージを伝えるには必要不可欠な要素ですが、場合によってはテーマへの関心、興味も動機としては大切だと思います。実はもう一つこのフェアテーマへの愛情の使い方があります。
それは①で述べました発注時の返品了解を事前にいただくために版元担当者へその愛情をアピールするときに使用します。これで了解をいただくわけです。七年ほど前、「広告批評」カンヌCM特集の号を「是非置きたい。都内では山積みで売っているけど地方では置くのが難しい、けどそんな本があることを田舎モノ(スズキも含む)にも知ってもらいたいのです! けど返品了解くださいね」。考えたらあまりにも図々し過ぎるお願いを地方小出版流通センターの川上賢一さんにお願いしたところ、「残ったら連絡くださいね」と心よく承諾してくださいました。憶えてないと思いますがその節はお世話になりました。その後おかげさまで完売いたしました。
ということで、この「ナツゲーフェア」の結果は恥ずかしくて言えませんが(実売部数二桁程度)、お客様の興味を引いたことと自分が楽しかったことは間違いありません(笑)。
とまぁ「料理は愛情!」なんて言っていた料理人がいましたが、「フェアは愛情!」と言い換えても良いくらい思い入れが一番大切なのではないでしょうか。
本屋以外に興味を持て
ニーズつかんでこそ真の提案ができる
それともう一つ、フェアを考える上でスズキが一番必要だなぁとアホ面でボーッと思っていることを一つ。
それは、本屋以外のことに興味を持つことだと思います。なにかに興味を持つ、なにかを始める、挑戦する。その時点で書店の人間はお客様と同じ立場にいるわけで、その瞬間、店側がお客様のニーズ、ウォンツを理解、共有し、真の提案ができるのだと、偉そうにスズキは思う次第でございます。
前述しました釣りについてスズキの思うところ、魚が好んで何を食べているかその川の虫を見て、季節を感じ探るわけですが、これはニーズを探ることと同じことじゃねぇの? と思います。お客様が何を望んでいるか? 何を必要としているか? 来店されるお客様だけで調べるより、店周辺のお客様の生活スタイル(学校が多いとかどんな会社があるか)、はたまた時代とともに変わる行動の変化、習慣(駐車場が大きいところが便利とか少子高齢化とか)を考え、釣りのようにピンポイントで展開する。
なんとまぁ、自分の仕事と共通点が多い遊びなのでしょう。
■ □
それともう一つ面白いことが。
魚はしょっちゅう釣り人との真剣勝負を繰り広げ知恵をつけていきます。多くの釣り人が勝負を挑むような川では魚は非常に警戒心が強くなります。「スレている」そんな時は、突拍子もない擬似餌を投げ込むと釣れる時があるそうです。
お店も一緒です。たまに変なフェアや普段本屋で見かけない商品を展開することで興味を引いて客が釣れ…いや、買っていただけることがあります。
釣り、恐るべし。
と、釣りを利用し一人よがりのフェアを自己弁護させていただきました。エラそうなそうなことを書きましたが釣りを始めて日が浅く、しかも独学なので数多くの本を読み漁りました。その中で参考になった本で「釣り入門フェア」を春にでもやろうかなぁと、アホ面でボーっとしながら考えているスズキです。
■ □
最後にお忙しい方のために、ポイントを三つ要約いたします。
一、フェアはテーマへの愛情、興味、関心から考えること
二、社長への言い訳は普段から準備しておくこと
三、奥会津をナメるな
以上、自称、新文化のスペーサー(穴埋め)、スズキでした。
追伸 タイトルの「ショテラー」とは「レジから檄」にて書店人に代わる呼び名としてスズキが考えた名称である。いまや使用頻度はスズキ一人から「新文化」の白本氏の合わせて二人という、当初の予想を大幅に上回る規模で広がっている…。
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