「泣くな、ミック!」2022 rd.5 マイアミGP F1問わず語り #5(無料)
(全文無料)
♪カーモン、ベイビー アメリカ
♪どっちかの夜は昼間
J-POP史に残る歌詞である。詩に込められた深い意味をつかめたことはまだないが、マイアミの昼は朝っぱらだった。
柄にもなく早起きし、眠い目をこすりながら観戦したマイアミGP。まぶしくて目を細めたのは、寝ぼけていただけか、フロリダの強い日差しゆえだろうか。類型を恐れることなく、いやむしろやりすぎくらいがちょうどいいと言わんばかりの演出で、アメリカを演じきったマイアミGP。あっぱれだった。みんなアメリカが大好きだ。
ハードロックスタジアム、すごいネーミングだと思われた方はおられるだろうか。まさか、ネーミングライツによるスタジアム名でないことはないだろうとwikipediaを繰ってみたところ、ハードロックカフェが命名権を取得し、現在の名称になったようだ。ちなみにハードロックカフェは、統合型リゾート事業を手掛けるフロリダ州のインディアン、セミノール族により2006年に買収されている。アメリカ、奥が深い。
「マネーの香りのするサーキットだな」
金曜フリー走行を少し見た際のサーキットの印象である。稼ぎに稼いでマネーの使い道に困っている人々がF1に集まるのは、アメリカに限ったことではない。だが、マイアミのトラックサイドに数十万、いや数百万もしくはただでスペースを確保して全力でGPウィークを楽しむ金持ちたちは、なんとも嫌味がないのだ。
コースは常設コースではない。立地的には、あの、誰も好きではなかったサーキット、ソチ・オートドロームのようだ。しかし、国が代わればこれほど違うのか。偽マリーナにヨットを浮かべ、アメリカの愚かさを自ら笑い飛ばす、ウィットともアイロニーとも無縁のひたすら陽気なアメリカンが、見事にサーキットを彩っている。きっと、ランプからスマホで撮影をしていた警官も半ば演出のうちなのだろう。
トラックがウォールに囲まれていて、安全性に一抹の不安は感じさせるものの、これは時代の流れなのかもしれない。嫌味のない観客たちとは対照的に低速区間のレイアウトは嫌味に満ちていた。まるで、流行ることまで想定済みであることが透けて見える「U.S.A.」のサビの振り付けのようだ。新しいサーキットであるだけに、デザイナーの意図が見えてきてしまい良い印象ではない。しかし、簡単なオーバーテイクにはならないものの手に汗握るせめぎあいがみられる良いバランスのサーキットに思える。
さて、前段はこのあたりにして、予選決勝を振り返ってみよう。
予選
・周、災難に遭う
だれにも迷惑をかけず、だれにも感銘を与えないドライビングを心掛けていると思われる周。しかし、良い心がけの彼を災難が襲う。
そう、トラフィックパラダイスだ。GWのUターンラッシュに巻き込まれ周はアタックを完結出来ず。あえなくQ1敗退となった。
・白熱しないQ3、ポールポジションはルクレール
予想に反し赤旗連発とならず、スムーズに進行したこの予選だったが、Q3はアタック合戦となった。しかし、ポール獲得のルクレール、サインツ、マックスともに会心のアタックとはならず、結果的にましなラップタイムでまとめたルクレールが今シーズン3度目のポール獲得となった。
会心のアタックとならなかったのは角田も同じで、Q1、Q2とガスリーを上回るタイムを記録したが、Q3ではまとめきれず、9番手となった。
決勝
・タイヤに厳しいフェラーリ、マックスにリーダーを譲る
イモラのスプリントレースで露呈したフェラーリのデグラデーションの多さだが、このマイアミでも苦しむことになった。
スタートでサインツをかわしたマックスが、焦らずにルクレールを追い詰め9周目にパス。ここからマックスは、リーダーの特権を生かし切った王者の走りを見せる。
・セーフティカー(AMG)が入る
レースが動いたのは41周目。ノリスがガスリーのマシンにヒット。大きなクラッシュとなり、VSC→SCとなる。
少なくともレース前半は全車中もっともペースの悪かった角田とは対照的に、ガスリーは順調なペースを刻んでポイント圏内を走行していたが、アロンソに接触され、その後ノリスに当てられ結果はリタイア。辛いレースとなった。しかし、レースはこれで面白くなった。
SCを見越してスティントを伸ばし引っ張っていた自称天才ラッセルは、このSCによってジャンプアップ。しかし、この判断もレースペースのすばらしさあってのもの。いまだ優勝はないし、チャンピオンシップでもそれほどの差はないはずだが、ハミルトンとの明暗が余りにもくっきり分かれているように見える。マックス、ルクレール、ラッセルの三つ巴の争いが実現すれば、どれほど良いだろう。メルセデスの競争力の向上が待たれる。
・泣くな、ミック!
いや、泣きたくもなる。初めてのポイントは目の前だった。
週末通じて、ヌッセンを上回る走りを見せていたミックだが、終盤ベッテルと接触。残念ながらポイント獲得はならなかった。泣き声の無線が切ない。
タイムリミットは迫っている。正直言って、F1に5年以上乗ることのできるドライバーには思えないのだが、不思議と応援したくなる人だ。またチャンスはある。思い出を残そう。
・F1をだれよりもエンジョイしてる男
この人は非凡だ。人が良いけど、ドライビングはアグレッシブで、陽気だけど、レース運びは冷静そのもの。ただのオタクではない。実は角田のライバルなのかもしれない。
・やりすぎ
うるさすぎるが、ホーナーと奥さんが楽しそうで何よりだ。
面白い演出が目白押しだったマイアミGPだが、このアメフトのヘルメットはわからなかった。
レースが終わったのは、日本時間早朝。「♪ユナイテッドする朝焼け」とはこのことか。
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