画面の向こうのアフガニスタン/④M65ジャケット
冬の定番アウター
アフガニスタンでここ40年間は大人気のアウターM65ジャケット(以下、M65)について書いてみます。この服はミリタリー関係から市井の人々にも愛されています。
1979年からのソ連の侵攻に立ち上がったムジャヒディンのオリーブドラブのM65がアフガンでの初観測になります。民族衣装のカミースはポケットがろくにないので、4つポケットがあるM65は重宝されたことが想像されます。一方で共産政権のアフガン人民軍はあまり防寒服の印象がなく、着ていてもシュネリなのでM65はムジャヒディンのアイコンとなりました。
ナジブラー政権崩壊後のカブール攻防戦や、タリバン運動でも着用例が沢山あります。2001年のタリバン政権崩壊後に共和国で再建されたアフガニスタン国軍や国警においてもM65は使用されています。そして、第二次タリバン政権においても継続使用されており、国防相ヤクーブも愛用しているアウターです。
なぜM65が愛されるのか
二つ仮説が考えられます。
まず対ソ戦のムジャヒディンのイメージから「本物の男の服」」「戦士の服」というイメージが付与されたと考えられます。この傍証として、同様に対ソ戦から愛されているウッドランド迷彩。共和国軍兵士のイキリ仕草であるベークライト鞘の6Kh4銃剣をマグポーチにこれ見よがしに指す仕草(俺の父祖がソ連兵を倒した戦利品だ。俺は戦士の家系だ!)があげられます。
2つ目は立ち小便をしない文化です。
M65と他のアウターの大きな差としてファスナーの短さがあります。
M65を着てバイクや自転車に乗る方。または強い便意に襲われてM65を着たままトイレに駆け込んで用を済ましたことがある方はピンとくるかもしれませんが、ファスナーが短いと座ったり屈んだりした時に裾が邪魔になりません。立って用をたさないアフガン男性にとってこれは大きなメリットです。
私は潰瘍性大腸炎で頻繁にトイレに駆け込むのですが、経験上失禁するリスクが高いのはトイレの前です。ついては冬場はトイレの前でコートを脱ぐ一手間が危険で危ないです。しかしM65であれば着たままトイレに駆け込むことができます。またバイクショップにいくとM65タイプのアウターが販売されています。M65は屈む動作と親和性が高いアウターと言えるでしょう。
日常動作との親和性と戦士の服というブランドイメージ、この二点が愛される理由だと私は考えます。
どのM65が汎用性が高いか
オリーブドラブ、ウッドランド、ANAデジ、グレー6C、ANPのブルー、ALPのカーキ、タイガーストライプ。多様な柄のM65がアフガンで使用されてきました。最初の一着として、使い回しが効くのは40年近く使われているオリーブドラブとウッドランドになります。リプロが中田商店で販売中ですし、リサイクルショップ等でもよく見かける入手性の高さも魅力です。