「分かりやすい授業」ってなんだ?
中学校の研究主任として日々奮闘している自分ですが、学校の研究課題の一部に「生徒が分かったと感じる授業」とあります。「分かりやすい授業」を構築せよということです。職場の先生方に「分かりやすい授業」をしてもらえるように、研修を行う立場にあるわけです。
研究主任になる前は、この「分かりやすい」という部分をよくよく考えもせず日々の授業を行っていたわけですが、研究主任になると、この「分かりやすい授業ってなんだ」と考えるようになりました。
今回はこの「分かりやすい授業」って何なんだろう、どうすればできるんだろうってことを述べていきます。
1.以前考えていた「分かりやすい授業」
以前の私は「分かりやすい授業」のために、課題を簡単にしていました。また、生徒がつまづくまえに、つまづかないように、必要以上にヒントを出したり、参考となるようなお助けプリントを準備して渡したり、教師の支援を増やしたりしていました。他校の研究授業を見ても、教師の手厚い支援があったり、ペア・グループ学習をすることで、課題に取り組みやすくするなど工夫したりしていました。自分も「それでいいんだな」と考えていました。
しかし、課題となった文法問題や長文問題を解けるようになっていても、他の文法が混ざったような問題や似たような長文問題を解くことはできなかったり、ペア・グループではできたが、個人になるとできないということが、とても目立つと感じていました。
また、生徒の達成感・自己有用感を醸成していたとも言えなかったと思います。低いハードルを用意して、教師や仲間に支えられながら跳ばされて喜ぶ生徒を育成していたように思います。
2.今考える「分かりやすい授業」とは
今は次のように考えています。
(1)「分からない・できない」からスタートする
低いハードルは与えません。いきなり高いハードルをどんと出します。そして、ひとまずやらせます。New Horizon Englishi Course 3 のUnit 1では扉絵に「What does "Sports for everyone" mean?」という質問があります。スポーツで得られる良い点についてひとしきりブレストした後、この問いに「英語で」答えさせます。もちろんできません。その後、「このUnitを学習した後、もう一度この問いに答えるからね。だから頑張ろう」と生徒に伝えます。
「分からない」ことに耐えられる生徒を育てたいと思います。「分からないからやめた!」ではなく「分からないから何とか分かるようにしたい」「分かるためにはどうしたらいいんだろう」「自分はどこが分からないんだろう」と考えらえる生徒を育てたいなと考えるようになりました。
「問題解決能力」が大事と言われてきましたが、もうこの力は必要ないのかもしれません。「問題を発見する力」を育てるほうが大事なのかもしれません。問題を発見する力を持った生徒は、身の回りから何が問題なのかを発見し、その解決に主体的に取り組むようになるでしょう。
(2)生徒に学び方を選択させる
簡単にその文法の説明をした後、文法問題が分かっているかどうかテストすることを宣言します。学び方は自由です。
① 副教材として使っているワークをやる。
② 黒板をノートに写しながら、自分の疑問点を解決する。
③ 教師用デジタル教科書にある文法説明のムービーを見る。
④ 自分で用意した参考書や問題集に取り組む。
これを「個人」や「グループ」で行います。必ずグループを組むことは強制しません。緩やかにつながることをさせます。
最後にペーパーやkahoot, Quzizzなどのアプリでテストをして終わりです。
まず寝る生徒や他のことをする生徒はいなくなります。もちろん何をどうやって学習したらよいかわからないで右往左往する生徒もいますが、すぐにアドバイスはしません。求められたらそこで初めてアドバイスします。
(3)教師の役割を「知識を伝える人」から「学習環境を整える人」や「学習活動をファシリテートする人」に変えていく。
昔の教師の役割を知識を効率よく生徒に伝えること、覚えさせることであったと思います。
今の教師の役割は、生徒が主体的に学ぶような課題を考え、学習環境を整えて、生徒が自分から課題解決に向けて動くような授業デザインをしていく立場になりました。
3.最後に
今まで教師が与えてきたような知識はもうインターネットの中にあります。解決方法もある程度はインターネットの中に示されていることが多いです。これからの社会には、今まで経験したことがない、解決方法が確立されていない問題が出てくることは間違いありません。そういったことにしっかりと立ち向かうことができる生徒を育てていきたいものです。