ギザ10
10円玉って本来側面がツルッとしてるんですけど、100円玉みたいにギザギザしてるやつが時々あって、それをギザ10というんです。
私はギザ10が好きで、財布にあると大抵上機嫌なんですが、結構、それを忘れて使ってしまうんですよね。
でも最近貯めよう!って奮起したら4枚くらい集まってきて、嬉しくて…
こういうことをしてると、ギザ10に10円玉以上の価値ってないらしいよ笑、と心無い言葉をもらうことがあります。
これに対して、言いたい。
私は、救いたい。
ある都市伝説を知っていますか?
夢の電話ボックス…、その話。
時は2001年。21世紀始まりということで祝祭が開かれたあの年、町の電話ボックスが全部、金色に塗り替えられたらしいんです。
その電話ボックスたちはみんな、祝祭が終わるとまた緑に塗り戻されたらしいんのですが、…1つだけまだ金の電話ボックスは残っているらしいのです。
嘘か誠か………………、
この金の電話ボックスにギザ10を入れて、受話器を通して、一つ、願いを言うと、叶うらしいのです。
願いが…………、叶う。
私は信じています。金の、…夢の電話ボックス。
対価はギザギザの10円玉。そうです、ギザ10の価値っていうのは、プレミアじゃない、ロマンなんです。
おそらく、本当に必要な時、運命の刻、私の前に黄金に輝く電話ボックスは現れるんです。片手に何枚かのギザ10を握りしめて、私は、やっと、一歩、踏み出すんです。
特別に叶えたい願いがあるわけじゃないけど。本当に欲しいものなんてわからないけど。
開いた片手の中のギザ10を愛おしく、思いたい。
見つめたい。
ずっとこの時を待ってたんだって、一粒の涙を流して、しゃがれた声で願いを言いたい。祈りたい。
叶う、叶わないじゃない。受話器を手に取りたい。ギザ10に、生まれてきた意味を、本当の居場所を教えてやりたい。
こいつらを希望への片道切符にしてやりたい。
強いて言うなら…それが私の願いなのかもしれない。