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世帯人数「2.0未満」時代のドラマ

ほとんどひとり


総務省が12日に発表した2023年10月1日時点の推計で、

日本人が前年より83万人減った

というのは、「まあ、そんなもんだろう」という感じだった。

人口減は知っているから、いまさら驚かない。


でも、同日に国立社会保障・人口問題研究所が発表した、

9年後に1世帯平均2人未満になる

という推計は、インパクトがあった。


「もう、みんなほとんど単身やん」

「単身が普通やん」

ということになる。


日本の1世帯あたりの人数が9年後の2033年には平均1.99人と初めて2人を下回るという推計を国の研究所が発表しました。
背景のひとつには、結婚をしない人の増加があるとみられ、高齢化が進むなかで同居する家族がいない高齢者を、どう支えていくかが課題となっています。
「国立社会保障・人口問題研究所」は5年に一度、国勢調査をもとに将来の日本の世帯数などを推計していて今回2050年までの予測を発表しました。
それによりますと、全世帯に占める「1人暮らしの世帯」の割合は2020年の38%から増加を続け2050年には44.3%と30年間で6.3ポイント増える見通しです。
これに伴って1世帯あたりの人数は2020年の平均2.21人から減り続けて9年後の2033年には1.99人と初めて2人を下回り、その後、2050年には1.92人にまで減少すると推計しています。

(NHK 4月12日)


あらためて日本の平均世帯人数を振り返ってみると、こんな感じです。


1922-1950 5.0人前後

1960      4.5人

1980      3.22人

1990      2.99人

2000      2.67人

2020      2.21人

2033      1.99人(推計)

2050      1.92人(推計)

https://www.ipss.go.jp/syoushika/bunken/data/pdf/14210606.pdf


私が生まれた頃は、まだ1世帯4.5~5人くらい。

「サザエさん」世帯です。


私が子供だった1960年代に「核家族化」が言われた。

それでも余裕で平均4人前後はいた。


それが、私が生きているあいだに半分になりました。

どうりで私はひとりなわけです。


「家族」モチーフで感動できない


でも、これは腑に落ちる。

最近、映画を見ても、Netflixを見ても、なんかつまらない。

それは、世帯平均「3~4人」くらいを前提にドラマを作ってるからじゃないか、と思うんですね。


ドラマのモチーフが、あいかわらず「家族」なわけです。

若い男女が恋をする。「家族」をつくる目的で。

結婚ないし同居すると、子供ができる前提になっている。

その子供もまた、将来結婚して「家族」をつくる前提になっている。

そういう、世帯人数「3~4人」で推移する世界観になっている。


そこでの主人公たちの行動の動機は、「家族を守る」であることが多い。

パートナーや子供たちを守る。パートナーや子供たちのために出世とか頑張る。パートナーや子供たちとうまくやる。パートナーや子供たちとの平和を回復する。

そういうことに、登場人物は情熱を燃やす。


最後は、「家族の平和が回復され、末永く幸福に暮らしましたとさ」で終わるか、「うまくいきませんでした」で終わるか。

いずれにせよ、ドラマの終着点に「家族価値」が置かれていることが多い。


「1人」を描くドラマでも、過去に家族との思い出やトラウマを抱えていて、それが彼ないし彼女ないしLGBTの人生の決定要因になる。


私はずーっとひとりで生きているから、あんまり共感できないわけです。

そういうドラマを楽しむことはできるけど、まあ他人事ですね。感情移入ができない。


今後はますます、単身世帯がふえ、いずれはそれが主流になるのだから、ドラマツルギーを変えたほうがいいと思う。

世帯人数「1~2人」を標準にしたほうがいい。

基本、1人だけど、ときどき2人になる。そういうドラマになるだろうな。


「家族を守る」あるいは「家族をつくる」というモチーフがなくなったら、登場人物たちの情熱の源は何になるんだろう。

まあ、「承認欲求」とか。


「高齢単身者庁」の必要


その世帯人数設定の変化とともに、高齢化という要素もくわわります。


単身高齢者がふえるわけだけど、どうもいずれ、70歳くらいまで働かされる可能性が高い。70歳くらいにならないと、年金が出ない。

単身で、高齢で、引退していない人たち。

生涯単身だったから、もう「孫の顔を見るのがいちばんの幸せ」みたいな年寄りではない。子供も孫はいないからね。


しかも、これからの年寄りは、けっこう目は肥えているわけです。

20世紀のエンターテイメントはひととおり経験して、情報に関してはすれっからしでもある。

テレビゲームもサブカルも知っている。


そういう相手が主流になる時代に、エンターテイメント産業は、何をつくれるのだろうか。

10年先を見据えて、単身高齢者向けのエンターテイメントを、真剣に考えるべきだと思うですね。


まあ、もちろん、エンターテイメントだけの問題ではない。

社会設計が根本的に変わってくる。


たとえば、70歳まで働かされる人がふえれば、通勤電車の半分は高齢者向けシートにしなければならない、とか。

「孤独死」が普通になるから、70歳以上はチップを埋め込んで、「生存確認管理」しなければならない、とか。


いまの若い現役世代は、

「年寄りが多すぎて負担だ。切腹しろ」

とか言いますが、あんたたちも、すぐ高齢者になる。「高齢現役世代」になる。他人事ではないよ。


日本は「こども家庭庁」をつくっている場合ではなくて(もう手遅れなんだ)、「高齢単身者庁」をつくって、こういうことを総合的に考えるべきです。



<参考>


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