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偽善の祭典「NHK紅白歌合戦」

今年の紅白歌合戦をめぐっては、星野源が、予定されていた曲を変更するという「事件」があった。

2013年にリリースした6枚目シングル「地獄でなぜ悪い」を「紅白」特別バージョンとして披露することが発表されていた星野。これについて一部のネット上では、近年性加害が報じられた園氏の同名映画の主題歌であることや、園氏から依頼を受けて制作したといった経緯に触れて問題視する声が上がり、26日には歌唱楽曲を「ばらばら」に変更することが発表された。
(モデルプレス 2024/12/28)


曲の関係者の園子温が性加害者だから、曲を変更するという。

星野が自主的に変更したとはいえ、まあ、キャンセルカルチャーだわな。


でも、これをキャンセルカルチャーと言わせない空気があるようだ。

毎日新聞は、これを「キャンセルカルチャー」と報じたあと、すぐにそれを取り消すという、「キャンセルの上塗り」を演じている。


星野源の紅白の件を「キャンセルカルチャー」などと報じた毎日新聞さん、恐ろしく速い記事削除をした模様
(たっつー△  2024/12/26 23:37)


見苦しい限りだ。キャンセルカルチャーは気に入らない。

来年は、日米韓のキャンセルされた監督、園子温とウディ・アレンとキム・ギドクの映画ばかりを見せる「キャンセル監督映画祭」を企画したい、などと思う。

だけど、星野源の歌とかよく知らないから、この件について、直接にはスルーさせていただく。


私がここで言いたいのは、

NHK紅白歌合戦がキレイゴトを言うんじゃない!

ということだ。


1963年、白木みのる差別事件


私はいまだに忘れない。

1963年のあの事件を。


わが人生のテレビの記憶は、「てなもんや三度笠」から始まる。

1962年から、近畿の朝日放送制作で始まった超人気番組だ。

当時、番組中の「あたり前田のクラッカー」というフレーズを、知らない子供はいなかった。

主演は、藤田まことと、白木みのる。藤田まことは、本作が出世作だ。


白木みのる演じる「珍念」は、大人としては非常に小柄(120センチ)ながら、堂々としていて、口達者で、子供の私にとって大スターだった。

その人気絶頂期の1963年末。藤田まことはNHK紅白に呼ばれたが、白木みのるは呼ばれなかった。

NHKは、身体的特徴を理由に、白木みのるを差別したのである。

白木みのるは傷ついた。この件を、wiki「白木みのる」では、以下のとおり記している。


人気絶頂期の1963年、第14回NHK紅白歌合戦(NHK総合・ラジオ第1)には『てなもんや三度笠』の相棒役である藤田まことのみがゲストに呼ばれた。「(白木が)出ると視聴者に不快感を与える」との理由を人づてに聞いた白木は激怒し、受信料の支払いを取りやめたほか、NHKが一切見られないよう、電器店に自宅のテレビのチャンネルを削らせたという。


この一件は、私が人生で初めて経験した「差別」かもしれない。

子供の私も、この件に深く傷ついたのだ。

そして、大人はこんなに酷いことをするのか、と驚いた。


周りの大人をふくめて、白木みのるの身長を差別する人はいなかったと思う。

みんな、ブラウン管の中の白木みのるの才能を楽しんでいた。


だが、NHK紅白歌合戦だけは、白木みのるを差別した。

私の子供時代の大スター、白木みのるのキャリアを潰したのはNHK紅白歌合戦だ、と今でも思っている。


NHKがどんなキレイゴトを言おうが、白木みのるを差別したくせに、何をエラそーに言いやがる、と思う。


1980年、佐良直美落選事件


1980年には、それまでNHKに気に入られ、紅組の司会も務め、連続出場していた佐良直美が、「同性愛スキャンダル」で落選した。

NHK紅白歌合戦は、同性愛者を差別したのである。wiki「佐良直美」は以下のように説明している。


1980年にタレントのキャッシーとのスキャンダル報道がされて以後は、次第に芸能活動から遠ざかり、同年のNHK紅白歌合戦も落選した。佐良本人は後に「あれは何がなんだか全然わかりません。ビックリするだけでした。ただ、どの社会にも裏表や力関係がある。そういうことなんでしょうね」と騒動を否定している(一方、キャッシーはこのスキャンダルについて、佐良のコメントに反論する形で2020年2月に改めて事実であったことを告白している)


NHKは、同性愛者だから落選させた、とは言っていない。いつも彼らは理由を言わない。

でも、同時代に見ていた私からは、明らかにそうであった。


もちろん、佐良直美とキャッシーの「同性愛」をスキャンダルにしたのはNHK自身ではない。当時の週刊誌であった。

だが、紅白歌合戦の落選が、佐良直美のキャリアを最終的に潰したーーそれは、白木みのるの場合と同じだったと思う。

あれほど毎年聞いていた「世界は二人のために」が、その後聞かれなくなる。


要するに、NHK紅白歌合戦は、差別と偏見を人々にダメ押しする。

世間一般、公認の「まともさ」と、それからはみ出るものとの間の一線を、引いてみせる役割だった。

日本の多数派の力を見せつけるためにある。

多様性の尊重、からは、最も遠い存在だ。


キャンセルされるべきは、差別主義者のNHK紅白歌合戦である。


今さらだが、だいたい、「紅白」などと、まるで性が生まれつき二つしかないような設定は、ジェンダー論的におかしいんじゃないの? LGBT法違反だろ。


どうせ偽善の祭典なら、「虹色歌合戦」にして、

「男」VS「女」VS「L」VS「G」VS「B」VS 「T」VS「Q」・・

とバトルロワイヤル形式で、大晦日の一晩中やってろ、と思う。



<参考>


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