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渡辺裕之と中野英雄 Vシネ俳優たちの浮沈

渡辺裕之をVシネ俳優というと失礼かもしれない。

しかし、こんな断りを入れることこそ、Vシネ俳優に失礼かもしれない。

いずれにせよ、私はVシネマに出てくる渡辺裕之が好きだった(それは前にも書いた)。

そして、現在のVシネの代表作「日本統一」(Netflix、AmazonPrimeなど)に渡辺裕之が出てこないのが、ずっと不満であった。

「日本統一」が2013年に始まって約10年、最新の「日本統一50」で、ようやく登場した。

しかし、かつての「首領への道」や「修羅がゆく」のような同じショーケース作品では、渡辺裕之はもっと早くから登場していた。それを考えたら、「日本統一」での登場はいかにも遅い。


単純に世代交代ということはあるだろう。

しかし、白龍や中野英雄のように、20年前からずっと主役級で出ている役者がいる。

そして、小沢仁志のように、むしろ渡辺裕之を追い越してVシネ界の看板になった役者もいる。

白龍や中野英雄は、北野武の「アウトレイジ」でも目立つ役を振り当てられ、西田敏行らと絡んだが、渡辺はキャスティングされていない。

そして、「アウトレイジ最終章」で端役も端役であった本宮泰風と山口祥行が、「日本統一」の主役だ。

そうした周囲を見回して、渡辺氏はどう感じていただろうか。


渡辺裕之が亡くなったとき、真っ先に追悼コメントを発表したのが中野英雄だった。


その中野英雄は、最近、「大阪闇金」などで新境地を見せている。

大阪闇金

中年男のくたびれた容姿を晒し、肩の力を抜いた演技で、社会の片隅の人間像を好演している。

こうした崩し方を、渡辺氏はできなかったんだろうな、と思う。

中野英雄は、追悼コメントで、渡辺氏が自分の息子(仲野太賀)を褒めてくれた感激を話した。

それは、第一線は息子の世代に譲った、という心境の表れでもあると思う。


ヤクザ映画自体の表現の変化も感じる。

「日本統一」から「山崎一門」がスピンオフしたように、ドタバタやユーモアが強調される傾向がある。「東京アベンジャーズ」のようなコミック表現の影響があるだろう。

そうした変化も、渡辺裕之のようなタイプには不利だったように感じる。


渡辺氏の自殺の理由はわからないから、上に述べたことは関係ないかもしれない。

ただ、私も同世代であり、サラリーマン人生で世代交代に寂しい思いをした。世界はちがっても、そのあたりは、あまり変わらないのではないか、と思うのだ。



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