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【YouTube】「宇宙大怪獣ギララ」大人の恋の物語w

<概要>


<2024.1.5~1/18 2週間限定無料公開!> 『宇宙大怪獣ギララ』(1967年/約88分) 宇宙からきた発光体が、鉱物のような無機質の怪獣に変異、歩けば震度八以上の地震と風速九十米の竜巻を巻き起こす。その名もギララ!軍事攻撃が逆に巨大化を招くというジレンマの中、原発に迫る…
(動画解説より)


<評価>


18日までYouTubeで無料公開。


初めて見ましたが、怪獣映画なのに「大人の映画」になってて、正直びっくりしました。

しかも、大人の男女の恋愛ドラマ仕立てです。マジ意外でした。

SF映画としても、怪獣映画としても、いまでは古臭く退屈で、怪獣の造形にも難がありますが、志の高い映画で、見ごたえはあります。


松竹初の怪獣映画でした。

怪獣映画では、1954年公開「ゴジラ」の東宝がぶっちぎりで先行し、大映が「ガメラ」で1965年に参入。

そして、1967年は、日活が「ガッパ」を、松竹が「ギララ」を投入して、4社そろい踏みした年です。

1967年の各社怪獣映画の封切日は以下のとおり。


1967(昭和42)年

3月15日「大怪獣空中戦ガメラ対ギャオス」(大映)

3月25日「宇宙大怪獣ギララ」(松竹)

4月22日「大巨獣ガッパ」(日活)

12月16日「怪獣島の決闘 ゴジラの息子」(東宝)


怪獣好き少年は、急に忙しくなった年でした。

わたしは当時、小学校低学年。

当時の子供で、この4本を全部劇場で見たという幸運なやつはいるのかしら。

わたしが連れて行ってもらえたのは、「ゴジラの息子」だけでした(つまらなかった)。


60年代の恋愛観


「ギララ」は光瀬龍監修で、ハードSFとしてまじめに作ってるんですが、翌1968年にはキューブリックの「2001年宇宙の旅」が公開されたことを考えると・・・まあ、くらべちゃ酷ですね。

時代設定が謎です。月と地球を楽々と往復するほど宇宙開発は進んでいるのに、自衛隊の装備は当時のまま・・。一種のパラレルワールド設定なのでしょうか。


それよりも、冒頭に書いたように、大人向けに作られているのが意外でした。

わたしは1965年の「ガメラ」を最近見て、子供向けでがっかりしたとnoteで書いたけど、「ギララ」はそれと対照的です。

パツキンの外人美女と日本製美女が、宇宙船パイロットの男に思いを寄せ、恋のさや当てを演じます。

日米美女のシャワーシーンが大スクリーンで! 昭和の男大興奮のサービスカット。アメリカ人女優は在日米軍人の娘とされるペギー・ニール(wikiによれば2021年、74歳で死去)


そのモテモテ男が、短躯で、いかにも昭和顔なのが、現在とはまるでちがう、1960年代の恋愛観をあらわしています。

昭和のモテモテ男(左)。演じるのは名優・和崎俊哉(2011年、72歳で死去)。ヒロインは原田糸子


高度成長期が始まっていた時期。こういう24時間働ける(そして黙って家計にカネを運んでくれる)真面目でたくましい男がモテたのでした。

「イケメン」なんて言葉がはやり出したのは1980年代以降。ホストみたいな男がモテる今とは全然ちがいます。ああ、昭和が懐かしい・・


肝心の怪獣「ギララ」ですが、映画は見なくても、当時の怪獣好き少年には有名でした。子供向け雑誌でさんざん紹介されていましたから。



実際に映画を見ると、スケール感も十分で、なかなかいいです。

でも、画像だけ見ていた子供たちのあいだでは、人気がなかった。「ガッパ」にも負けていたのではないでしょうか。

やっぱり、「目」がよくない。怪獣には「目ヂカラ」が必要なんですよ。ギロリとにらむ目がゴジラなんかのチャームポイント。その「目」が横断信号風だったのは、造形的なミスでした。


フーテンの怪獣


全体として、やっぱり「松竹」的だなあ、と、いま見ると思います。

上述の恋愛の「しのぶ恋」的要素と、宇宙船クルー・柳沢真一のコミカルな演技。

一種の人情喜劇になっていて、「男はつらいよ」怪獣編みたいです。


「男はつらいよ」は、オリジナルのTVドラマ版が1968年、映画は1969年からスタートしました。だから、「ギララ」の時点では、まだ影も形もありません。

わたしは、TV版の「男はつらいよ」からリアルタイムで見ていました。

もし、劇場で「ギララ」を見ていたら、「男はつらいよ」に、子供心に同じテイストを感じたかもしれません。(ただし、TVドラマ版のテイストは、のちの映画版ともまた別でしたが、それはともかく)


それで言えば、「ギララ」が「フーテンの寅」ですね。

「フーテン」というのは、辞書によれば「定職を持たず街中などをふらつくこと」ですから、まさに怪獣の定義でもあります。

「フーテンの寅」と同じく、「ギララ」も、社会的には役立たずの害悪ですが、ドラマのなかでは、大人たちの恋を成就させる狂言回しとして役に立っている。


ともかく、松竹という会社の個性、テイストが、50年以上前から確固としてあることに感心した次第です。



<参考>






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