
「週刊金曜日」と左翼の落日
Colaboに屈した「週刊金曜日」
須田慎一郎と黒薮哲哉が、「週刊金曜日」との紛争をYouTube番組で語っていた。
左翼は結局、権力に屈した!?…その権力の持ち主とは!?野党の崩壊につながる!?(別冊ニューソク通信 9月13日)
須田と黒藪がかかわった、Colabo批判を含む『人権と利権』という本が5月に出て、その広告が「週刊金曜日」に載った。

『人権と利権』を出した鹿砦社と、「週刊金曜日」は、同じ左派言論界で、友好関係にあった。
だが、その広告にColaboが抗議し、「週刊金曜日」はColaboに屈する形で、「『人権と利権』は人権侵害的、差別的書籍であった」と誌面で謝罪した。
それにたいして、黒藪や鹿砦社が怒っている、という話だ。
黒藪によれば、「週刊金曜日」は、しばき隊やColaboなどの問題をタブーにしている。それは、こうした市民団体が定期購読者として貴重だからだ。
つまりは、タブーなき言論を目指したはずの「週刊金曜日」が、経営的苦しさから、問題ある市民団体の圧力に屈している。
その黒藪や須田の批判は正当だろう。
背景に「朝日」「毎日」の落日
この動画を見て、私が思ったのは、もう少し広い範囲での「左翼言論」の落日だ。
ご承知のとおり、「週刊金曜日」は、1991年、冷戦の終了とともに「朝日ジャーナル」が終刊になったことに抵抗し、佐高信や本多勝一が創刊したものだ。
朝日のスター記者だった本多は、それを機に朝日をやめて「週刊金曜日」に移る。
「朝日ジャーナル」は、左翼や市民活動家のための理論誌だった。私の田舎の日教組の先生たちもよく読んでいた。
「週刊金曜日」は、その代替物として、朝日や毎日の、左翼すぎてハミ出した人たちが担ってきた。
現社長の植村隆は朝日の左翼記者、前社長の北村肇は毎日の左翼記者。要するに「週刊金曜日」は、朝日・毎日の左翼の別動隊という認識だ。
左派新聞の左翼は、ひとつには出版局のような社の「辺境」に流れ着く。だから、「朝日ジャーナル」なき後は、「週刊朝日」や「サンデー毎日」がその受け皿になっていた。
本多は、朝日をやめた後、「金曜日」とともに、「サンデー毎日」でも連載していた。
「金曜日」前社長の北村は、「サンデー毎日」の編集長だった。左翼すぎて新聞を追い出されて「サンデー」に行き、そこでも左翼すぎて「金曜日」へ、というルートをたどっている。
だが、そういう左翼の居場所を作れたのも、新聞社にまだ余裕があったからだ。
そして、「朝日」「毎日」が「週刊金曜日」に人材を供給できたのも、まだ新聞社に優秀な人が来ていたからだ。
しかし、いまの「朝日」「毎日」に、そんな余裕も、人材も乏しい。「週刊朝日」は潰れ、部数でその半分の「サンデー毎日」もすでに死に体だろう。
左翼は流行らず、斜陽の新聞業界に優秀な人材は集まらない。
左翼の「上流」がそのように枯れたことで、その末梢神経のような左派新聞の雑誌や「週刊金曜日」に麻痺が起こっている。
だから、「週刊金曜日」の落日は、「朝日」「毎日」の落日の反映である。
「朝日」「毎日」が、「ジャニーズ」や「創価学会」のような「カルト」に頼らなければならなくなったように、「週刊金曜日」はColaboに依存せざるを得なくなっている。
いったん「カルト」に依存すると、落日のあとの「ヤミ落ち」が待っている。
ただの左翼の内輪もめに終わらないかもしれない。
左派メディアと安全保障
私は左翼ジャーナリズムの存在意義は認める。
しかし、「カルト」に依存し、大衆的基盤を失うと、次に怖いのは、Treasonーーつまり国家への「大逆」だ。
外国のスパイや、資本が入り込んでこないか。中国やロシアに言論が買収されないか。それがコワい。
毎日新聞は、中国から広告費をもらっており、問題になっていた。
毎日新聞は、元社長(斎藤明)が中国派の福田康夫の姻戚だったり、創価学会と骨がらみだったり、疑われやすい環境にある。
朝日新聞には、もちろんゾルゲ事件の「前科」がある。
右翼はよく「朝日や毎日は中韓の手先」などと言う。
私は業界にいたから、そんな簡単なことではないのを知っている。朝日や毎日の中に、イデオロギー的に中韓に惹かれる者がいるのは事実だが、彼らをカネをもらっているスパイとまでは思わない。
しかし、本当に経営が苦しくなってきたら、わからない。
だから私は、新聞のあり方を、広く社会で議論すべきだと提案した。
中国やロシアがたえず世論工作をしかけてくるのは間違いない。
そして、新聞社やテレビ局にはまだ資本規制があるが、出版社はそういう規制もない。
左翼言論の落日は、安全保障問題につながりかねないのだ。
<参考>