
中居正広問題と映画「クイズ・ショウ」 「テレビは勝ち残る」
中居正広に、フジテレビが、女性を「上納」したとされる問題。
おおごとになっているようですが。
でも、正直、私はなんか「燃えない」。
というのも、もともとテレビなんて、そんなもんだと思っているから。
ましてフジテレビでしょう。
われわれの世代では、フジテレビなんて、まともな会社とは思われていなかった。
フジテレビに限らず、テレビというのは真面目なメディアではなく、不真面メディアのNo1だ、という認識。
で、不真面目メディアのNo2が、週刊誌ですね。
その不真面目No2の週刊誌が、不真面目No1の悪事を暴く、という。
世の中、どうなってんのか、と。
どっちも、売れりゃいい、というのが根本のメディアだから、なんか正義の基準がわからない。だから、「燃えない」。
そして、真面目なメディアNo1のはずの新聞は、何をやってんだ、と思う。
まあ、新聞も、クロスオーナーシップで、経営陣がテレビと一体だから、何も言えないんだろうな。
*
私は古い人間だから、新聞だけが真面目なメディアだと思っていた。
あとは、「本」ですね。本には嘘が書いてないと思っていた。
バカでしたねえ。
でも、私の子供のころは、そういう雰囲気でしたよ。
世のまともな人たちは、テレビなんて信じてなかったと思う。
まともなジャーナリストは、新聞界にしかいないと思われていた。
少なくとも、1970年代までは、そんな感じじゃなかった?
ジャーナリストになりたいから、私はテレビ局に入る、なんてやつは、見たことがなかった。(私のまわりでは、コネがあるからテレビ局に行きます、という人が多かった)
大学にあったのも「新聞学科」だけだった。「テレビ学科」なんてなかったからね。
新聞記者にも、テレビを下に見る矜持があったと思う。
ところが、1980年代に、私が新聞社に入ったころは、もう価値観が逆転していた。
新聞社の編集部で、みんなテレビばかり見ている。
新聞でいちばん読まれているのは、テレビ番組表だから、と、テレビ面ばかり充実させたりしてね。
実際、「記事ではなく、テレビ面の読みやすさで、新聞が選ばれている」「新聞は、テレビ面を見るためにとられている」と新聞社内で言われていた。
私は情けなかったね。
まあ、そのころには、とっくにテレビ局の給料は、新聞社を抜いてましたからね。
*
テレビについて考え始めると、私は映画の「クイズ・ショウ」を思い出す。
ロバート・レッドフォード監督の1994年の映画ね。
1950年代に実際にあった、NBCのクイズ番組のヤラセ問題を題材にした映画です。
当時は評判になったけど、最近はこの映画が話題になることはあまりないね。
映画「クイズ・ショウ」予告編(英語)
国民的人気があったクイズ番組「21」で、ハービーというユダヤ人がチャンピオンとして勝ち続けていた。これをジョン・タトゥーロが演じていた。
でも、ハービーは、容姿が冴えないので、テレビ局は、番組の人気が落ちないかと心配していた。
そこで番組側は、レイフ・ファイズ演じる、爽やかな容姿の大学講師チャールズに、クイズの答えを教えて、勝たせようとする。
実際にあった話です。
その結果、チャールズが新たなチャンピオンになり、テレビ局の思惑どおり、視聴率が爆上がりした。
収まらないのはハービーで、番組はインチキだと告発するんだけど、なぜか世間は騒がない。
だが、たまたまハービーの訴えに興味を持った政府の立法委員会捜査官、リチャード(ディック)・グッドウィン(ロブ・モロー)が調査に乗り出し、結果、アメリカ放送界空前のスキャンダルに発展する。
政府立法委員会で、チャールズはヤラセがあったことを告白して、謝罪する。
それで、チャールズは、勤めていたコロンビア大学をクビになる。
しかし、現場の責任者は処分されたが、テレビ局の上層部や経営者はお咎めなしで、テレビ局は事実上、無キズで存続する。
その結果を見て、捜査官のグッドウィンは愕然とし、「テレビは勝ち残る」とつぶやくところで映画が終わる。
*
今回に限らず、日本のテレビ局にも、さまざまなスキャンダルがあった。
直近にはもちろん、ジャニーズの問題があった。
この映画「クイズ・ショウ」のようなヤラセ問題もあったし、いまでは信じられないような嘘八百を番組にしていた。心霊だの、UFOだの。コマーシャル含めていい加減だった。
でも、社会は、そういうテレビを許してきた。
テレビ局で問題が起こるたび、「でも、どうせ忘れられるだろう」と思うのが、私の習慣になっていた。
今回の件だって、そうだろうと思う。
そういうのを見るたび、私は、映画の「テレビは勝ち残る」という文句を思い出していた。
私は、社会人になってから、テレビを見るのをやめています。
仕事の関係があったし、新聞社に行けばテレビがどうしても目に入るから、まったく見てないわけではないけれど、家でテレビを見ることはほぼない。
退職した今は、もう100%テレビを見ていない。(でも、NHK受信料を支払わされている。悔しい・・)
だから、中居正広という人が動いているのをほとんど見たことがない。
それで興味がわかないということもあります。
*
ところで、映画「クイズ・ショウ」は、捜査官の「テレビは勝ち残る」というセリフで終わる、と記憶していて、日本語Wikiでも、そういう記述になっている。
チャールズの態度は1名を除く裁判官から感動したといわれるが、大学からは辞任を勧告される。ディックは「テレビは勝ち残る」といって、暗澹たる思いに包まれる。
(日本語Wiki「クイズ・ショウ」)
でも、映画のスクリプト(英語)がネットにあったので、それで確認してみると、「テレビは勝ち残る」にあたるセリフがないのね。
あれえ、と思って。
たぶん、以下のセリフが、「テレビは勝ち残る」と字幕で訳されていたのだと思う。
Hey, I thought we were gonna get television. The truth is, television is gonna get us.
私の英語力で訳すのは難しいけど、
「テレビは我々のものだと思っていたけど、我々がテレビのものだった」
みたいな感じかな。
スクリプトによれば、実際には映画は、立法委員会に喚問されている番組プロデューサーの、以下のような開き直った応答で終わっているようだ。
これはこれで、テレビの本質を突いていると思うので、(映画を見直してないので、ちょっと自信ないけど)訳出しておきます。
(委員会委員)あなたは、自分が悪いことをしたとは思ってないようですね。
(TVプロデューサー)ええ、でも悪かったとしたら、成功しすぎた、ということでしょうね。
(委員)成功しすぎた?
(TVプロデューサー)広告料が、どこからともなく流れ込んでくるもので。
(委員)あなたは新聞や雑誌がなぜ大騒ぎしているかわからないのですか? まるで自分が被害者のような口ぶりですね。
(TVプロデューサー)まあ、スポンサーはうまくやるし、ネットワークもうまくやるし。クイズ番組の参加者も、たぶん彼らが一生見られないような大金を見られたし・・
And you obviously don't think you did anything wrong.
Yes, we did one thing wrong: We were too successful.
You were too successful?
Those advertising dollars came from somewhere.
Why do you think the newspapers and magazines are making such a big thing about this? Mr Enright, you make it sound like you are the victim here.
Well, the sponsor makes out, the network makes out... the contestants see money they probably would never see in a lifetime...
<参考>