【Netflix】「オールドピープル」 老人は悪霊より恐ろしい
もともと老人は恐ろしいものだ。
「老人恐怖症 Gerontophobia」という立派な病気もある。
「老人恐怖症は主に若者が老人に対して恐怖や嫌悪を抱くものだ。パニック症状が出ることもある。人間の本来の寿命は50~60歳なのに対して、日本の超高齢化社会における老人や老害の多さが許容量を超えている。」(wikipedia 「老人恐怖症」)
老婆はさまざまな物語で魔女のモデルになった。「老婆が怖い」という色川武大の小説もあった。
もうすぐ死ぬ老人は、死刑も懲役も怖くない。キレると恐ろしいのである。
だから老人がホラー小説やホラー映画の悪役になるのはおかしくない。M・ナイト・シャマランの「ヴィジット」とか、Amazonオリジナルの「老人たちの呪われた館」(ブラムハウス)とか、最近わりと増えている印象はある。
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この「オールドピープル」は、そのものズバリ、老人ホームの老人が集団で殺人鬼となり、若者を襲う映画だ。
以上、終わり、という感じの映画で、あらすじとしてはそれ以上ない。
そのストレートさはいいのだが、なんだろう、もうひとつ怖くもなく、面白くもない。
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老人が集団で襲ってくる、という絵は、ほとんどゾンビ映画と変わらない。
ゾンビ映画と変わらないのに、ゾンビ映画より地味だ。そのあたりに、老人ホラーの課題がある。
老人殺人鬼ならではの武器というか、キャラ付けが欲しい。
この映画では、老人がヨダレを流して襲ってくるところがあって、アレは良かった。でも、攻撃力が弱すぎる。
シャマランの映画で、老人が大人用オムツを武器にするのがあったが、ヨダレとかウンコとか、そういうのばかりだと若者にナメられるだろう。
歩行器で殴ってくるとか、点滴のスタンドでぶっ刺してくるとか。電動車椅子で暴走して来るとか。
そういう攻撃力、破壊力が欲しい。そのあたりに工夫が必要だと思う。
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また、ドイツ映画だからというのもあるのだろうか、この映画はもうひとつ垢抜けてない。
こっちは老人が次々と若者を血祭りに上げるところを見たいのに、なかなか見せてくれない。テンポが悪い。
そして最後に、「だから老人は大切にしておかなければ」みたいな教訓をくっつける。そういうのがダサい。
老人がひたすらスプラッターに若者を殺戮すればいいのではないか。それで「教訓」は伝わるだろう。
やはりこのテーマでは、高齢化の先頭を走る日本に期待したい。