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【Netflix】「イカゲーム2」 感情移入しにくい「革命編」 不評で関連株が急落

【概要】

イカゲーム シーズン2(2024)

勝てば天国、負ければ…即死。賞金に目がくらみ、奇妙なゲームへの招待を受けた参加者たちを待っていたのは、昔ながらの遊びを取り入れた死のゲームだった。

出演: イ・ジョンジェ、イ・ビョンホン、イム・シワン

制作: ファン・ドンヒョク
(Netflix公式サイトより)

予告編↓


【評価】


 27日の韓国株式市場で、動画配信サービス、ネットフリックスの人気ドラマ「イカゲーム」の関連銘柄が急落。シーズン2の完璧とは言えないスタートが影響した。

 主演俳優イ・ジョンジェが筆頭株主の映画配給・マーケティング会社アーティストユナイテッドは、値幅制限いっぱいの30%安。同社の別の株主、ウィジウィックスタジオは一時25%安を付けた。ネットフリックスの韓国パートナー、デクスタースタジオは24%下落した。

「イカゲーム」関連株が急落、シーズン2の期待外れなスタートで(Bloomberg 2024/12/27)



*以下、必要以上にネタバレにならなないよう留意して、率直に感想を記していますが、やっぱりちょっとネタバレになるかもしれないので、ご注意ください。また、見ていないと意味がわからないことも書いています。イ・ビョンホンの演技について書くと、もろにネタバレになるので、ここでは彼について触れていません。


12月26日に世界公開。約1時間×7話。

待望のシーズン2だけど、尻すぼみの残念な内容になっている。

「メンコ男」が登場する最初のエピソードはとてもよくて、「イカゲームの興奮再びか」と期待させる。

特徴的な舞台セットも、前回よりさらにスケールアップされていて、音楽も相変わらず冴えていて、最初は「世界最高水準のエンターテイメントを見ている」という感覚をおぼえる。

でも、エピソードが進むにつれて、それがしぼんでいく。


シーズン1が、100点満点で95点だとしたら、シーズン2は、せいぜい70点だ。(シーズン2エピソード1だけなら90点)


「イカゲーム」のシーズン1は、資本主義への苛烈な批判だった。

資本主義の競争社会で敗れた「クズ」は、死んでも構わないーーそう言い放つ「敵」を描くことで、資本主義という「ゲーム」の真の残酷さを描いてみせた。


それに続くシーズン2は、その体制への反乱、すなわち「革命」を描くことになるだろう、というのは予想できたことだ。

その「革命」を率いるのは、もちろんイ・ジョンジェ演じるソン・ギフンである。


だが、あれほど魅力的だったソン・ギフンが、今回は魅力的でない。

シーズン1ではギフンに感情移入できたのに、今回はできなかった。

終始、思い詰めた、やつれた顔で、「革命」を扇動するだけ。もっと頭を使って、こちらを驚かせるような手段を使ったり、あるいは、人間的魅力で同志を増やしたりしてくれないと、面白くない。

それなのに結局、あまり頭を使わない「暴力革命」に訴える(韓国は徴兵制があるから、男が銃器を扱える、というのがここで効いてくる)。「それでは失敗するに決まっている」と思わせてしまう。兵役の仲間とかで「同志」が簡単に集まってしまうのも安易でつまらない。


シーズン1のチョン・ホヨンや、イ・ユミのような、新鮮な魅力の役者も、今回は見当たらない。

時節柄、トランスジェンダーが出てくるだろうな、というのも、予想の範囲だった。でも、それも含めて、すべての人間の描き方が、中途半端、あるいは類型的なのだ。


でも、もっと根本的な問題があるように思う。

たぶん、資本主義という悪魔的な敵に対して、「正義」や「ヒューマニズム」を武器に戦うという図式が、退屈なのだ。


シーズン2の設定では、ゲームが終わるたびに、全員の「投票」で、ゲームを続けるかどうか決める。

だから、シーズン2の後半は、その投票での多数派工作の話が主になる。

ギフンたち、ゲームの存続反対派と、存続賛成派は、ほぼ同数で拮抗しており、常に数票の差で争うことになる。


それならーーギフンたちのやるべきことは、その数票をカネで買うこと、つまり「買収」ではないか、とどうしても思ってしまう。そう思った視聴者は多いのではないだろうか。

ギフンは、前回の優勝で、莫大なカネを得ているのだから、それを使えばいい。ゲームを存続して得られる賞金より以上のカネを与えられる、と説得できる。相手は、何よりカネに飢えている連中なのだから。


つまり、カネにはカネで対抗すればよかった。なぜそうしないのか、それが皮肉の効いた解決なのに、と思うのだ。

でも、ギフンは、あのカネは、人々の命の犠牲によって得た神聖なカネだから、とかなんとか言って、そのカネを使わない。

投票の「買収」という「汚い手」を使い、それでゲームを中止に追い込めば、少なくともそこにある命は救えるのに。


カネで解決できるところはカネで解決しろよ、と思ってしまうこちらが、資本主義のイデオロギーに冒されているのだろうか。


いずれにせよ、「革命」の決着は、来年公開の最終シーズンに持ち越しになっている。

面白くなりそうな「伏線」も、いくつか回収されないまま残っている。


ドラマの中で、「マトリックス」が何度も言及され、製作者がマトリックス3部作を意識しているのがわかる。ああいう成り行きにはなってほしくないものだ。

せっかくの名ドラマ。なんとか持ち直して、有終の美を飾ってほしい。



<参考>


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