芸能界の闇とマスコミの「見て見ぬふり」 山口組・吉本興業・ジャニーズ
山口組の顧問弁護士だった山之内幸夫氏のYouTubeチャンネルのファンです。
彼が知る有名ヤクザの話が興味深いし、もう70代後半のはずの山之内氏が元気にYouTuberをやっているのにも励まされます。
その山之内チャンネルの「山口組三代目田岡組長と吉本興業元会長は身内」という動画を見て、芸能界の「闇」を改めて考えさせられました。
そして、ジャニーズ事務所の問題との関連も考えてしまったのです。
山口組三代目田岡組長と吉本興業元会長は身内(山之内幸夫チャンネル)
山口組と吉本興業
山口組の正業は、港湾荷役と芸能興行でした。
上の動画で山之内氏が言うとおり、「興行師の3分の2はヤクザ」と言われた時代もあったのです。
そして、芸能興行を通じた、山口組と吉本興業の深い関係も有名です。上の動画を見てもらえればよくわかる。
山口組3代目・田岡一雄組長と、吉本興業の林正之助社長は、恐喝の共犯で一緒に逮捕されたこともあります。山之内氏の言うとおり「身内」同然でした。
山口組は、それ自体が芸能会社(山口組興行部)でしたが、吉本興業の「用心棒」でもあったわけです。
(今は、島田紳助問題でわかるとおり、吉本は反社と関係ない、ことになっています)
ヤクザの心のつかみ方
我々の世代には、田岡組長と美空ひばりの特別な関係が有名です。
2人の関係について、上の動画では、私が知らない話もありました。
鍵になるのは「川田晴久(義雄)」という芸人。「地球の上に朝が来る」という浪曲漫談で一世を風靡した人です。「浪曲」というジャンルが廃れたのでほぼ忘れられましたが、戦中から終戦直後にかけて、吉本興業の代表的な人気芸人でした。
川田晴久は、脊椎カリエスで車椅子の人となり、人気が凋落していく。だが、彼を引き立てて立ち直らせたのが田岡組長でした。
その川田晴久を歌の師匠と慕っていたのが美空ひばりだったのです。田岡が、落ち目の川田を支えたのを見て、美空は田岡を信頼し、心酔していったのだそうです。
これは、よくわかる心理です。
芸人がヤクザに頼るのは、不安定な芸能生活を支えてほしいからでしょう。それは、編集者と作家の関係にも似ているので、出版界にいた私にもわかります。
田岡の、芸能に対する「情」のようなものが、芸人を惹きつけた面はあったと思うんですね。
ヤクザの怖さ
しかし、ヤクザはヤクザです。
それがわかるのが、1953(昭和28)年の「鶴田浩二襲撃事件」。
それも上の動画で解説しています。
山口組が、2枚目俳優の鶴田浩二を旅館に襲い、顔を傷つけた傷害事件です。襲撃の動機は、「鶴田のマネージャーの挨拶の仕方が気に食わない」といった理不尽なものでした。
しかし、「ちょっと気に食わない」だけで滅茶苦茶やるのがヤクザです。
(そのマネージャーは数年後「謎の自殺」を遂げます)
そして、この事件が、山口組にとって意図せざる巨大な宣伝効果を持ちました。
山口組の名前が全国にとどろき、これ以降、「山口組は恐ろしい」「西日本で興行を打つときは、山口組を通さないと怖い」ということになるのです。
ちなみに、山口組が当初、興行の中で力を入れたのは、浪曲と相撲でした。
Netflix「サンクチュアリ 聖域」で脚光をあびる相撲界ですが、ヤクザにとっては決して「聖域」ではありませんでした。密接な関係があったわけですが、それはまた別の話になります。
「山口組支配」から「ジャニーズ支配」へ
いずれにせよ、1964(昭和39)年から始まる、警察のいわゆる「頂上作戦」、暴力団壊滅運動で、山口組は芸能興行から手を引かざるを得なくなります。
そのくだりを上の動画で聞いて、私は何となく、現在のジャニーズ事務所の問題を思い出したわけです。
山口組が芸能界から手を引くのと入れ替わるように、ジャニーズ事務所が発展していく。そして同時に、ジャニー喜多川の性加害問題がささやかれ始めたのが、そのころ(1965年ごろ)でした。
この時代の流れは、私の子供時代の記憶にも符合します。
1960年代の前半は、山口組系芸能人の全盛期で、父親がキャバレーで田端義夫とかのレコードを買って帰ってきたのを覚えています。
しかし、60年代の後半になると、グループサウンズやアイドルの時代になり、近所の若いお兄ちゃんお姉ちゃんが、それらのレコードを子供の私に聞かせてくれたりした。
60年代の半ばに、日本の「芸能」の質の転換があった、という実感があるのです。
警察の頂上作戦をきっかけに、芸能界での「山口組支配」から「ジャニーズ支配」への交代が1960年代半ばに起きて、芸能界の「闇」も変質した、という「仮説」が頭に浮かんだんですね。
西日本と東日本という違いもあるので、しょせん素人考えではあるのですが。
ジャニーズ事務所と暴力団との関係も、あるとか、ないとか、いろいろ言われますが、私にはわかりません。
マスコミと「闇」
それに、もちろん、芸能界の「闇」といっても、山口組のような反社の暴力と、ジャニー喜多川の属人的な性加害疑惑とは、一緒にできないでしょう。
ただ、マスコミにとっては、あまり変わらないとも言えるのです。
どんな「闇」に対しても、マスコミの「臭いものに蓋」「見て見ぬふり」の姿勢は、同じです。
上の山之内幸夫氏の動画で、私がいちばん勉強になったのは、1960年前後、山口組芸能部が「神戸芸能社」へ改名したきっかけです。
山之内氏によれば、当時のテレビ局の業界団体「民放連」が、「山口組」では契約しにくいから、名前を変えろと促したからでした。
芸能界の闇には見て見ぬふりですが、自分たちにかかわる部分では、積極的に「闇」を覆い隠すように働きます。
逆に言えば、表面上「きれい」に見えれば、マスコミとしては、芸能界が反社とつながっていようが、性的搾取の巣窟だろうが、どうでもいいわけです。
芸能界に問題があることを知っていても、極限まで「見て見ぬふり」をする。
「見て見ぬふり」をするだけではなく、自分たちに害が及ばないように、「きれい」に見せることもする。
そういうマスコミの姿勢が、「山口組支配」時代も、「ジャニーズ支配」時代も、一貫している、と言えるのではないでしょうか。
結局は曖昧に
今回、藤島ジュリー社長が「お詫び」をしましたが、これもマスコミが促したのだと私は思います。
マスコミにはジャニーズが絶対に必要なので、
「禊(みそぎ)は終わった。きれいになった」
という状態に、早くしたいのでしょう。
しかし、やはりジャニー喜多川の疑惑は、暴力団問題とは質が違うと思うんですね。
芸能界と反社の関係は、映画「ゴッドファーザー」に見るごとくどこの国にもありましたが、性搾取は異例です。それを50年以上許してきたというのは、同じ「闇」でも、現代では決して許されない「闇」でしょう。
しかもマスコミとの共犯です。
被害者がいるわけだし、曖昧に終わらせるべきではありません。
でも、結局は、曖昧に終わると思います。
芸能人は「芸」を売りますが、日本のマスコミにも「芸」がある。
それは、「見て見ぬふり」という芸と、上辺だけ取りつくろい、「汚い物をきれいに見せる」芸です。
その芸で人びとを騙しても、誰かが責任を取らされたり、処罰を受けたりしたことはありません。
戦中の責任を「なかったこと」にした新聞社のことを思い出してみましょう。
今回も、そのマスコミの至芸を見せられて終わりなのではないでしょうか。
下手すると、「自分たちがきれいにした」くらいのことは言いますからね。
マスコミは正義を実現してくれません。悔しいことばかりです。
記者の方は大変だね。今後、ジャーナリズムの役割とか、権力の監視とか社会正義とかをどれだけ熱く語っても、「でも貴方はジャ◯ーズに忖度したんですよね?」「怖くて何も書かなかったんですよね?」「ジャ◯ーズに忖度する勤務先の論理に屈してたんですよね?」と言われちゃうから大変だね(ゲス顔)
伊藤剛氏(東京工芸大教授)
ジャニー喜多川氏より、ジャニー氏の性犯罪を知っていて長年報道しなかったマスコミのほうがよほど邪悪だと思う。シレっと掌を返すだけで、なぜいままで報道をせずに来たのかの検証を行わないだろうというところまで込みで。
近田春夫氏(ミュージシャン)
国会に呼ぶべきはタレントじゃないよ。事務所でもないよ。マスコミ各社の責任者でしょ? どうしてずーっとこの件に関してタブーにしてたんですか? って、そこを追及しないとねぇ? やってよ国会。
マスコミはなぜジャニーズを「キャンセル」しない(しなかった)のですか?
<参考>
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