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【追悼】私のポリーニは「モーツアルト19番」
ポリーニさんが亡くなったねえ。
1つの時代を代表するピアニストにはちがいない。
しかし、その「時代」は、かなり前の気がする。
1970年代ですね。
1960年に10代でショパンコンクールに優勝して、10年間雌伏。
70年代に、ストラヴィンスキー「ペトルーシュカからの3章」(1971)、ショパン「エチュード」(1972)、ベートーヴェン「後期ソナタ」(1975)などを矢継ぎ早に出して、それぞれの曲の代表盤になった。
「これ以上、何をお望みですか」でしたっけ、「エチュード」のレコードのコピーが有名でした。
1960、70年代には、ノーノとともにイタリア共産党員として活動したのも、朝日とかに微妙に評価されたかも。
私ももちろん、それらのレコード(まだレコードの時代)に夢中になりましたが、いちばん聴いたのは、モーツアルトの協奏曲19番でした。
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23番がA面(この表現ももう通じないか)なわけですが、B面の19番(ヘ長調)がすばらしかったですね。高校から大学生のあたりで、毎日聴いていました。
そのころの「完璧主義」のイメージがあまりに強すぎて、その後はテクニックの衰えとともに、苦しんだのではないでしょうか。
もっとも、私は実演はついに聴いたことがなく、噂で聞いただけですが。
録音では、その後、ベートーヴェン(初期、中期)やバッハを聴きましたが、感心はするけれど、正直好きにはなれませんでした。
1970年代のポリーニは、たしかに「時代のアイコン」になっていた。
乗り越えられないような、芸術の峻厳な規範を体現しているようでした。
いま振り返ると、1960年代で、だいぶ芸術観がぐちゃぐちゃになったあと、時代がそういう人を求めていたような気がします。
私にとっては、「エチュード」などの録音に、一種の威圧感を覚えたあと、カール・ベームとのモーツアルトの協奏曲録音は、人間味を感じさせる演奏になっていました。
私は「19番」のポリーニが好きでしたねえ。
ご冥福をお祈りします。
Mozart: Piano Concerto No. 19 in F Major, K. 459 - 1. Allegro Vivace- Cadenza