【Netflix】「ザ・キラー」別格の面白さ
<概要>
ザ・キラー
2023 | 年齢制限:16+ | 1時間 59分 | サスペンス
ある任務失敗により、雇い主を相手に戦うことになった暗殺者。世界中で追跡劇を繰り広げる彼は、それがかたき討ちであっても目的遂行に個人的な感情を持ち込まないよう自分自身と闘い続ける。
出演:マイケル・ファスベンダー、ティルダ・スウィントン、アーリス・ハワード
<評価>
久しぶりに夢中になって見ました。
ネトフリも、最近つまんない映画ばかりで、解約を考えてたんだけど。
こういうのをぶち込んでくるから油断できない。
こういうのを見ると、映画はストーリーではなく、語り口だとわかります。
殺し屋の内心の声をダダ洩れさせる映画。
いつしか殺し屋と同じ呼吸で、殺し屋になりきったように、非日常を体験させられる。
殺し屋が、任務の途中に「人間の心」を取り戻し、殺し屋組織と対立する、という話は百万回くらい見たけれど。
これは、殺し屋が、任務の失敗を、プロとしていかにリカバリーするか、という話。
つまり、われわれが仕事でミスした時、どういうことが起こり、どう修復するか、というのと同じような話を、同じリアリティで描いている。
だから、映画を見るうちに、いつしか、日常の倫理観はどっかにいって、殺し屋を、普通の専門職の人と同じように見ている。
ここでの殺人や暴力は、悪ではなく、ひたすら「ミスの修復」「処理の一環」として描かれる。
こういう感じは、デヴィッド・フィンチャーの映画に特有ですね。「セブン」にしろ「ゴーン・ガール」にしろ、画面の中の圧倒的リアル感で、善悪とかの、われわれの日常感覚がすっかり塗り替えられ、「緻密な作業感」に集中させられる。
もちろん、クールな殺し屋のプロ意識、冷血非情を描く、というのはたくさんあるし、この映画も一種のハードボイルドと言えなくもないけど、どうしてもわざとらしくなるでしょう。普通の監督が撮ると。
それをわざとらしくなく撮る、というのは、意識してできることでもないと思うんです。こいつ、一種のサイコパスじゃないかと思う。世界の見方が、根本部分でちがう。北野たけしなんかと共通するかもしれない。
こういう世界観次元での非日常を体験させてもらえるのが映画のだいご味で、やっぱこいつ、天才だなあ、と思う。
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