カケラジ#2 子どもの発達 欠けたものを補う力
この記事は、YouTubeチャンネル「カケルとミチル」で2020.12.30に配信した「カケミチラジオ#2」の内容を抜粋しまとめたものです。
今回は、児童精神科医のオカタク(oktk@筋トレ×児童精神科医)と、小児整形外科医の中川先生(中川将吾 産前産後のケアをやる整形外科医)の対談です。
ーーそもそも小児整形外科と児童精神科って、普段から関わるものなんですか?
中川先生
ほとんど普段の関わりはないですよね。
整形外科は体、精神科は心なので、全く対極にいるような感じです。
入院したときに精神疾患を持っていてお世話になるとか、あとは痛いときに精神的なものからくることもあってお世話になることはありますが、まぁそんな程度で、普段は全然関わり合いはなかったんですよね。
オカタク
中川先生おっしゃったみたいに、痛みという点では精神科医と整形外科医がつながることはあるんです。
慢性疼痛といって、精神的なことでストレスの負荷が非常にかかった時に、ずっと体が痛い状態が続くことがあって、そういう場合、先に整形外科の先生にかかって、それから精神科に来られる方もいるんですよね。
大人の場合は、そういう形で整形外科と精神科が関わることがあるんですけど、私たちの専門である「小児整形外科」と「児童精神科」が関わるって、ほとんどないですよね。
中川先生
そもそも、なかなか身の回りでも児童精神科の先生を聞いたことがなかったですからね。
ーー何がきっかけで二人はつながったのでしょう?
中川先生
僕とオカタク先生は、あるオンラインサロンに入っていて、そこの同期にあたるんです。
そこで自己紹介をする場があるんですけれど、オカタク先生が児童精神科医をやっているというのを知って、これは面白そうだなと目をつけました。
いろいろ話を伺ってみると、僕の考えている、やろうとしている子どもの予防医学っていうのと一緒の方向を向いているなと思って。
僕の得意としていない精神的な分野のサポートをオカタク先生にお願いできたらいいなと考えたんですよね。
オカタク
予防のことでお医者さん同士で話が合うことってなかなか少ないんですよ。
お医者さんって、基本的に手術をしたりとか、治療をしていくっていうのが一般的な仕事なので、予防という、何か準備していくことで病気を防ぐというところを仕事として考えることはなかなかないんですよ。
日本の医療保険制度だと、そもそも予防に保険点数がついていませんし、予防のために病院に行くことってほとんどないですからね。
ーー確かに、歯医者さんに検診に行くくらいかもしれないですね
オカタク
歯医者さんは病院とは少し勝手が違って、自由診療と保険診療を合わせて行える、混合診療というルールがあって、予防に力を入れることができるんですよね。
その一方で、お医者さんで予防に目を向ける人が少ない中で、中川先生とたまたま知り合うことができたんです。
私たちは子どもを相手にしますが、子どもたちが大きくなってくるのを見ていくなかで、つまずかずに済んだ部分もあるんじゃないかとか、スムーズに治っていく子と、なかなかうまくいかない子と違いはなんだろうとかを考えるようになったんですね。
中川先生
(小児整形外科の診療の中では)なかなか治療をしていて、すっきりうまくいく経験がないんですよね。
もっと自分のところに早くきてくれていれば、やり方も違うし、そこからのフォローもかわってきて、もっとすっきりうまくいったのになっていう経験が何度かあったので、やっぱり症状が出て受診するその前の段階から何とかしようというのが、予防の考え方のはじまりだと思います。
オカタク先生とは、子どもの予防のために、病院ではできないことをお互いやってみようという話になったんですよね。
ーー児童精神科と小児整形外科、ジャンルは違っても通じるものはあるんでしょうか?
中川先生
僕が今までやってきたことは手術中心だったので、生まれつき体の機能の一部がおかしいとか、体の一部が変形してたり欠けてたりとか、そういった子たちを手術で治していたんです。
でも、手術が必要のない場合もあるんですよね。
周りのリハビリだったり、家族のケアだったり、どこか機能の悪いところがあったとしても、その子自身がそれを悪いと思わなかったり…。
周りの環境次第で、その子にとってマイナスの要素にならないような状態を作れるっていうことに気づいたんですね。
子どもって適応能力がすごく高いので、例えば指が一本なくても、手が片方しかなくても、それが当たり前だと思って生活していれば、全然普通なんですよ。
むしろ何かを変えようとすると嫌がったりすることもあるくらいで、治療っていうのは今あるものがすべてじゃないなと思いはじめて、どんどんいろいろな可能性を探るようになりました。
オカタク
心の文脈でも子どもってすごく適応能力が高くて、何かが起きた時に、自分の頭の中でいろいろ解釈して、その子なりの解決方法を見出していくんですよね。
よくあるのが、「子どもを怒っても怒っても、全然行動を変えてくれないんですよ」という相談なんですが、子どもにとって、怒られるというのがコミュニケーションのパターンになっている場合があるんですよね。
例えば、兄弟で下の子が生まれたときに、悪いことをして注目させるってことを子どもはちょこちょこやるんですよ。
大人からすると「怒られるのは嫌なことだ」って思うから、「叱られる」と怒られるようなことをやらなくなるだろうと思うんですけど、そうじゃないんですよね。
子どもは、怒られて嫌な気持ちになることよりも、注目してもらうとか関わってもらうとかいうことを重視してたりするんです。
自分にないものをどうやって手に入れるか考えたり、その方法を編み出す子どもの適応能力って本当に高くて、その視点がないと、大人の視点だけで考えると、見えてこないものがでてきちゃうんです。
中川先生がおっしゃったような欠けた部分をいろんな形で埋め合わせるっていうのは、ある意味人間のすごいところだなと僕は思うんですよね。
カケミチラジオ(YouTubeチャンネル「カケルとミチル」)
「生きづらさ」「育てづらさ」などをテーマに、児童精神科医オカタク(oktk@筋トレ/児童精神科医)が様々なゲストを迎えて毎週水曜夜に配信中。
ゲスト:小児整形外科医 中川将吾先生
Twitter 「中川将吾 産前産後のケアをやる整形外科医」
note 「ファミリハつくば」
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