~スタートアップ~シリコンバレーの一流投資家が教える世界標準のテクノロジー教養 山本康正(著)を読んで⑤
前回の記事では、DXの本質と企業の実例に関して述べましたが、この記事では第八章について触れて、個人的にまとめのコメントをしたいと思います。※前回の記事は以下のとおりです。
1 第八章 スタートアップ 最新テクノロジーを取り入れる
第八章ではテクノロジーを企業に導入する一つの選択肢として、スタートアップとの連携について触れています。この章では、シリコンバレーにおいて日本企業とスタートアップの協業案件を数多く手がけてきた野村佳実氏に話を伺っています。
日本が抱える最大の課題
野村氏は、日本企業が陥りやすい問題を以下のように指摘しています。
「スタートアップと連携するに当たって、目的やゴールが不明瞭なのが一番の問題です。何か新しいことをするためにスタートアップと協業するというのが、企業にとって共通する目的だと思います。しかし、それ以上の深いゴール設定がきちんとされていないケースが多いのです。」 「シリコンバレーの一流投資家が教える世界標準のテクノロジー教養 山本 康正(著)」より
野村氏が指摘するように「深いゴール設定」ができない理由は、「スタートアップと協業する」ことが目的になってしまっている点にあります。
これは第六章の記事でも触れた、「DX」や「デジタル化」はあくまでも手段であり、「課題の解決こそが目的」という部分とも共通する点ですね。
「深いゴール設定」のためには、スタートアップとタイムスケジュールを共有し、事前にシナリオを想定しながら実証実験することが重要です。
シリコンバレーに行くべき人材
実際に、スタートアップと業務を進めるにあたり、シリコンバレーに社員を常駐させる場合には、どのような人材を選ぶべきなのでしょうか。
特に最初の一人とそれ以降の人と分けて考えたほうがいいと野村氏はいいます。特に最初に送り込む人はパイオニア的な存在であることが重要です。
「新しいもの好きで、物怖じせずに自社の強みと足りない部分をコミュニケーションしながら、開拓していける前向きな人が合っていると思います。できれば社内組織に詳しく社内政治に長けた人がいい。社内のどこにどういうボールを投げたら刺さるか理解している人が好ましいです。 「シリコンバレーの一流投資家が教える世界標準のテクノロジー教養 山本 康正(著)」より
最初の一人の場合には、風穴を開けないといけないので、勢いのある人が最適だと野村氏はいいます。
そして、二人目、三人目は社内で組織化していくことが求められるので、「戦略的・分析的でプロセスを作っていけるタイプの人がいい」とのことです。
規模の大きい、歴史のある企業では、DXやテクノロジーを導入する場合に、段階的に、戦略的に人員配置することが重要ということでしょう。
2 おわりに
これまで、各章ごとに要点やコメントを記述してきました。最後になりますが、本書において述べられているDXや、テクノロジー分野の課題と導入のポイントは以下のとおりです。
これまで日本の強みとされてきた、日本独自のシステムやオペレーションは、かえってDXやテクノロジーの導入を困難としている。
DXやテクノロジーの導入には主要事業の成長だけでなく、長期的な視点に立って新規事業を育てることが重要。
しかし、DXやテクノロジーの導入そのものを目的としてしまうケースも見られることから、あくまでも「DXやテクノロジーは手段である」との認識のもとに進めるべき。
最後に、DXやテクノロジーの導入を考えることは、企業トップだけでなく、従業員においても重要であり、車の両輪としてそれぞれが役割を果たすべき。
DXやテクノロジー導入に関して、日本が抱える課題と解決策についてまとめられた良書でした。
本記事を最後まで読んでいただきありがとうございました。