「王様ランキング」〜真の強さとは何か〜本当の人の姿を垣間見る〜
友人が「はい、これ」、と渡してくれたのはGATEAU FESTA HARADAの袋。
「あ、ここのラスク美味しいよね!」と言葉にしそうになっ…たけれども、一瞬で自分の食いしん坊ぶりを恥じた。
よくよく中を見たら漫画が入っている。
「王様ランキング」〜十日草輔著〜
「あ、これ、スマホの広告で見たことあるやつ、そうだよね?」
私は自分の食いしん坊を誤魔化した。
「これはもう、とにかくおもしろいから読んでみて」
「え、どんな内容なの?」と聞いても友人は
「とにかく読んだら分かる」と、一向に内容を教えてくれない。
ならば読もうじゃないか。
筆者の十日草輔氏は一度漫画家を目指し、大賞も獲るが、本を出版するも敢えなく出版社が倒産し、夢であった漫画家への道を断念する。
そうしてサラリーマンとしてWeb関連の仕事を通し、コーダーやデザイナー、webマーケティングを経験し、またホワイト企業もブラック企業も経験したという。その後絵本を描いてみたいとペンタブを購入し、その未来を感じたという。
しかし投稿や応募するも、他の公募者の年齢層が若いと知り、絵本は敷居が高いと考え、web漫画家として再度昔からの夢、漫画家を目指す。
言葉を発することも耳も聴こえない、そしてほとんどの筋肉がないボッス王国の第一王子、ボッジ。
日々人の物を盗み、ボッジを騙しながら ボッジの服を売るカゲ。
毎日ヒステリックにボッジを怒り、第二王子のダイダと常に比べるボッス王国の第二王子の母、ヒリング王妃。
自身が強くなりたいと望み、今後生まれてくる我が子の力を全て自分の力にできるよう魔物と契約したボッス王国の王、ボッス。
ボッジが第一王子のため、ボッス王国の王位継承にはならないが、しかし努力家で優秀なため、周りからは王位継承者として期待されている。常にボッジを小馬鹿にしているダイダ王子。
そこに剣術指南役としてボッジにはドーマス、ダイダにはべビン、と、騎士同士はライバルになっている。
こういうキャステイングなら、弱い主人公が周りからバカにされながらも強く生きていくという話…と想像する。
そして、その読者のイメージ通り、キャストたちは主人公に対して意地悪に見えるような行動する。
ボッジはカゲに「俺を貧乏から救ってくれ」という言葉に騙され、洋服を渡し、お城までの帰り道を、毎日裸で町を歩く。
道中、町民に笑われても、お城に戻って城内で家来に笑われても笑顔でいるボッジ王子。
連日裸で歩いていることにヒステリックに怒るヒリング王妃。
出だしはイメージ通りだ。
しかし、キャストたちはそれぞれに全くの裏切りを見せる。
これはボッジにではなく、読者にだ。
味方のように良い人に見えて実は自分のことしか考えてない人。
性格の悪い、意地悪そうな人に見えて、実は裏では第一に考えてくれていて、助けている人。
裏では悪いことをしているように見えて、実は良い方向へ導こうとしている人。
お前を信じていない、と言って馬鹿にしていたけれど、実は行く先を心配して代わりに守ろうとしてくれていたという人。
憎んでいた、と思ったら実は心から愛してた、という人。
普通なら、勧善懲悪で話は進む。
良い人は良い人で、悪い人は悪い人。
私達もそんなふうに、決めつけたりと、日常で考えたり経験したりと人間関係ではよくあることなのではないだろうか。
人にはそれぞれ事情があるだろう。
その全てを理解することはできないけれど、想像することはできる。
実はそんな簡単なことだけで、人を許せるのではないだろうか?
この話の中ではそんな良い裏切りもあるが、もちろん悪い裏切りもある。
その裏切りは、人の心の弱さからくるもので、そのため、自分かわいさのために行動してしまう。
自分が逃げてしまったばかりに仲間が窮地に立たされたりと、自分の心の弱さ故に犠牲になる人が出てくる。
しかし人はそれを目の当たりにした時、自分の卑怯さに反省する。
例え自分の行動が間違ってしまったとしてもすぐに修正し、正しい行動を起こす人は、もう弱くはない。
そしてこの題名にもある、「王様ランキング」
本当の強さとは何かを教えてくれる。
十日草輔氏が若い時に描いていた漫画は謂わば「独りよがり」なものだったと言う。
しかし挫折を味わった後の、一見回り道をしたかのように見えたサラリーマン時代の経験を生かし、この漫画が生まれた。
友人が
「とにかく読んでみて」
と言った言葉の意味が分かった。
つづく