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家事整理と時間02「起きたての家」

 みなさんは、1日のうちで一番集中している時間帯はいつですか? 朝から晩まで、家のこと、仕事のことと休む間もないくらいかもしれません。それでも、1日のうちで頭がすっきりしている時間といえば、やはり朝ではないでしょうか。
 前回のご紹介した「寝る前の家」では、前日の出しっぱなしがない状態で、朝を迎えると、1日が片づけから始まらずに、清々しくスタートできると、羽仁もと子は語っています。今回は、その続きとなる「起きたての家」というお話です。

起きたての家 
 そろって早起きをすること。家庭としてまたそれほど願わしいことはありません。早く起きているものがあっても、まだ寝ている人があれば、その家はまだ半分だけ眠っているのです。日が高くなっても、まだ半分眠っている家は、どうしても仕事に追われ、夜はしたがっておそくなります。われわれの家庭はどうか潔いさぎよく、朝の太陽とともに寝床を出るように。そうしてめいめいが一日の仕事の支度をすっかりしてしまうように。
 身じまいをかいがいしく十分にすること。家人のすべてが受け持ちによって、家の内外の掃除にかかり、朝食の支度にかかり、短い時間で家中がすっかりきれいになってしまうと、朝の食事をすませ、それぞれに、一日の予定によって、各自の勤めにつきます――外に出るものも家に残るものも――。主人や子供の出かけたあとは、主婦も大切な勤めにつくときと考えて、すぐと仕事にかかり、午前中に一番主な仕事をかたづけるのは、ほんとうによいことです。午前よりも午後、午後よりも夜と、仕事の負担がだんだん軽くなるのはよい生活で、朝から晩までだらだらに仕事のあるのは、疲れるもとだと思います。ことに朝がおそくて夜ほど仕事が重くなるのは、非常な不健康のもとになります。私たちは朝からだんだんに調子よく働いて、夜になるほど仕事が軽くなり、十時ごろには眠ってしまうのが、身体にも頭にも一番よいのでしょう。夜重い仕事をしてそれによい眠りをつづかせようとするのはむりなことです。夜泣く子供と、夜勉強する大人は、ともに心身を害します。そうして他の家人の安眠をもさまたげます。少年少女男女学生などの、夜ふかし勉強はおそろしいことだと思います。
 家庭の朝は、幼児にもさっさと身支度をさせ、みながものもいわないくらいに、それぞれ真剣に仕事をし、おやつのときも、あまり話がはずまないように、すんだらさっそく勉強や仕事にかかって、九時ごろにはみな仕事を終えた楽しい顔で集まって語り、礼拝のある家ならばともに祈り、あすを楽しみに早く眠りにつきたいと思います。

羽仁もと子著作集 第9巻『家事家計篇』第5章 家事整理と時間 二  起きたての家

起床時間を決めて、太陽の光を浴びる

 気持ちよく1日を始めるためには、「寝る前の家」が大切ですが、加えて、家族そろって早起きすることを、羽仁もと子は勧めていますね。また、朝起きたら、太陽の光も浴びましょう。厚生労働省が運営する「e-ヘルスネット」に、不眠を解消する一つの方法として、「太陽の光を浴びる」が挙げられています。[詳細はこちら

太陽光など強い光には体内時計を調整する働きがあります。光を浴びてから14時間目以降に眠気が生じてきます。早朝に光を浴びると夜寝つく時間が早くなり、朝も早く起きられるようになります。すなわち「早寝早起き」ではなく「早起きすることが早寝につながる」のです。逆に夜に強い照明を浴びすぎると体内時計が遅れて早起きが辛くなります。

厚生労働省「e-ヘルスネット」より抜粋

 朝の太陽とともに起きるのはなかなか難しいですが、仕事に学校にと家を出る時間から逆算して、余裕を持った時間に家族みんなで起きて、それぞれが身支度をすれば、いろいろなことに煩わされることも減るでしょう。昨年紹介した羽仁もと子のことばに『「金の頭脳」「金の仕事」』があります。

きん頭脳あたま」で「きんの仕事」をしたい。私は毎日そうがっています。一日のうちで、ほんとうに金のようなよい頭脳あたまで、金のような労作を生み出す時間は少ないものです。雑物の刺激のためにつかれて来ると、私たちの頭脳あたまぎんになりなまりになります。

羽仁もと子著作集 第4巻『思想しつつ生活しつつ』下巻 巻頭の言葉より

 私たちの生活の中で、本当によい仕事のできる時間は限られています。1日の中でもそれは同じ。その貴重な時間を大切に使うためには、朝、目が覚めてからストレスなく始められることが大事ですね。


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