【著作権の基本9】著作権の保護期間は70年間
著作権は著作物を作った時点で発生しますが、この権利はいつまで続くのでしょうか。
著作権の原則的保護期間は、著作者が著作物を公表した時点から70年までです。また、実名の個人が作った著作物は死後70年間保護期間が継続します。逆に著作物を利用する側は、著作権が切れた著作物は、著者に許諾を得る必要がなく、利用できることになります。
死後、公表後、創作後の期間は、計算を簡便にするため、死亡、公表、創作の翌年の1月1日から起算されます。なお、保護期間中でもその著作権者の相続人がいないときは、著作権は消滅します。
計算の方法はいろいろ考えると複雑だったりするのですが、とにかく「70」という数字を覚えておくとよいと思います。
著作権の保護期間
実名(周知の変名を含む)の著作物
→死後70年
無名・変名の著作物
→公表後70年(死後70年経過が明らかであれば、そのときまで)
団体名義の著作物
→公表後70年(創作後70年以内に公表されなければ、創作後70年)
映画の著作物
→公表後70年(創作後70年以内に公表されなければ、創作後70年)
俗に「著作権切れ」と言われているコンテンツはこれだけの期間が経っているということになります。今から70
年前にさかのぼるとすると、これは相当に前ということにはなります。
ただ、「古い写真を使いたい」「昔のチラシを使いたい」といった相談を受けることがありますし、「松尾芭蕉の俳句を使いたいが誰に連絡を取ったらいいか」とかそういう相談を受けることもあります。
存続期間を調べていると「案外使えるかも……」ということがありますので、覚えておいて調べてみるといいかもしれません。
著作権の保護期間は長いほうがいいのか
実は、2018年まで日本の著作権の存続期間は50年という数字がベースになっていました。
それが諸外国に規定を合わせるという形で、70年に期間が延長になってしまいました。著作権者(主には遺族)の権利保護を充実するという大義名分はありますが、自由な利用をそれだけ遅くするという側面もあります。
著作権切れとなった作家の作品を集めたウェブサイトとして有名なものに、「青空文庫」(https://www.aozora.gr.jp/)があります。夏目漱石や太宰治をはじめ、1100名を超える作家の作品のテキストを無償で公開、ダウンロードできるサービスです。
しかし、著作権の保護期間が延長されたことにより、今後20年間、青空文庫には大きな追加がないということにもなります。
これは一例ですが、今後20年間、新たに自由利用できるようになる著作物はごくわずかにとどまるということになってしまいました。これでいいのでしょうか。
著作権が切れたコンテンツを一般にパブリックドメインと呼んだりします。著作物は時期がくると公共の財産になるということです。公共財が今後20 年は生まれないという側面があるのです。
なお、2018年までにパブリックドメインとなったもの、著作権が切れたものはそのままとなります。保護期間が突然70年に延長されたりということはありませんので、この点についても覚えておきましょう。
▼出典
『駆け出しクリエイターのための著作権Q&A』
(川上大雅・玄光社)
キャラクターデザイン=山内庸資
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