【独立する前の基礎知識9】フリー( 個人事業主) になったら税金は変わる?
Question
会社を退職してフリーランスになりました。今まで税金の支払いは会社が処理してくれましたが、これからは自分で対処するとか……。そもそもどんな税金を払う必要があるのでしょうか? また税金の仕組みは変わりますか?
Answer
サラリーマンは所得税と住民税を払っていますが、フリーランスになっても同様に所得税と住民税を払います。ただし、計算の仕方と納付のタイミングが違ってきます。
サラリーマンもフリーランスも、所得税(国に払う税金)と住民税(都道府県・市区町村に払う税金)を払う必要があります。ただし、サラリーマンは、会社が勝手に給料から天引きしてくれるので、税金のことはほとんど意識せずに済んでいました。サラリーマンは会社のおかげで楽ができていたのです。
ところが、フリーランスは違います。フリーランスは、税務上「個人事業主」と呼ばれて、自分で税金の計算をしなければならないのです。
なぜなら、独立したら、収入や経費がいくらなのか、自分にしかわからないからです。
そのために、個人事業主であるフリーランスは、毎年3月15日までに「確定申告」をして、国に対して所得税を払わないといけません。自分の収入や経費がいくらだったか、そして支払う所得税がいくらになるかを自分で計算して、税務署に自己申告します。この一連の手続が「確定申告」なのです。
一方で、サラリーマンは、年末調整という別のやり方で、会社が代わりに税金を計算してくれます。(確定申告や所得計算については、拙著『駆け出しクリエイターのためのお金と確定申告Q&A』をご参照ください)
一方で、住民税は、少し仕組みが違っています。住民税は、所得税に比べて、支払いのタイミングが遅いのです。所得税は3月15日までに支払いを済ませるのに対して、住民税はその後から遅れて支払いが発生します。
フリーランスの方は、5〜6月頃になると、お住まいの市区町村の役所から、前年の所得に対する住民税の金額が記載された納付書が届きます。一括または年4回(6月末、8月末、10月末、翌年1月末)のいずれかを選んで支払うことになります。
つまり、2018年分の収入に対する所得税は、翌年の2019年3月15日までに払うのに対して、住民税はさらに1年近く遅れて、2019年6月末から2020年1月末まで支払うことになるのです(年4回分割支払の場合)。
一方、サラリーマンの住民税は、2019年6月から2020年5月まで、12分割で毎月の給料から天引きされることになります。会社を退職すると、会社が税金を天引きしてくれなくなるので、自分でなんとかしなければなりません。
まず、所得税については、退職した年から、その年の1年間の所得を全て集計して確定申告をする必要があります。そのため、前の会社から源泉徴収票を取り寄せて、他の所得と一緒に集計しなければなりません。
次に、住民税ですが、退職した月によって扱いが違います。
退職月と住民税の関係
①1〜5月に退職した場合
会社が天引きできなかった残りの月分の住民税が、最後の給料から引かれることになります。例えば、3月に退職した場合は、最後にもらう給料から、残りの3〜5月分の住民税がまとめて天引きされます。
②6〜12月に退職した場合
退職した月の1か月分だけが最後の給料から天引きされます。残りの住民税はどうなるかというと、後日、市区町村から直接自宅宛に納付書が届くので、自分で支払うことになります。
ただし、事前に会社に伝えれば、最後の給料から残り全額の住民税を天引きしてもらうことも選択できます。
さらに注意すべきなのは①の場合です。①で天引きされたのは、2年前の給料に対応する分の残りの住民税なのです。住民税は後払いなので、1年前の給料に対応する住民税の納付書がまた5〜6月頃に来ることになります。
この時期はもう退職して、会社からの給料がありませんので、この住民税を払えるだけのお金を残しておく必要があります。給料が2年前とそれほど変わらなければ、天引きされていた頃の毎月の住民税×12か月分が目安となります。
納付書の金額を見てびっくりしないように、心の準備をしておきましょう。
▼出典
『駆け出しクリエイターのためのお金と独立準備Q&A』
(桑原清幸・玄光社)
キャラクターデザイン=山内庸資
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