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エッセイ

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2021年12月の記事一覧

双六シンドローム

双六シンドローム

欠伸が幾ら出ようが眠気が治まらない程に、その日の授業は退屈だった。

そうしたら、中学校の頃から面識のあったひとりの友人が、配布されたプリントの余白に、双六のマスを描き始めた。

この時、一人の暇な少年は、双六に出会った。

十マスと少ししかないそれは、それでも、何も持たないままで居るよりは有意義な時間を生み出した。

そして、何よりも、異常に難易度が高かった。

「さいしょにもどる」

すごい多

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兜

小学五年生の頃、「クラブ活動」なる学校の設けた謎の風習により、部活動を悉く回避していた僕だったものは、半ば強制的に、何かしらの文化的な活動に片足を突っ込む羽目になった。

そうして、僕は「折り紙クラブ」を選んだ。

特段折り紙が好きというわけでもなかったし、得意というわけでもなかった。寧ろ手先は異様に不器用で、何かを作ろうとして、出来るのは決まって鮮やかなスクラップだった。もう、それは、一周回って

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柚子の皮、菓子に成る

柚子の皮、菓子に成る

自分の事は、柑橘類の皮の様なものだと思っていた。
うざったらしく果肉を隠し、ティッシュに包まれて捨てられるだけの命。何にもならない命。

或る日、例えば天気に注目すれば晴れの日、例えば状況に注目すれば有難き休日、俗なパッケージに守られたそれは、コンビニの単調な蛍光灯を当たり前の様に跳ね返していた。
菓子だった。加工された柚子だった。それは。

「ゆず」

って、でかでかと書いてあった。

パッケー

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茶室といちごオレに混沌

茶室といちごオレに混沌

チョコパイだと思っていたのに、そのチョコパイのパッケージには、赤の文字で「この製品には洋酒を使用しています。」と言う風に書かれてあった。
この時、無念僕は未成年だった。

代わりに、スーパーに発ち、何かおやつになるものを求める。愚かにも、チープな甘味そのものが、カスな妥協点が、その瞬間の僕にとっては、人生の目標その全てだったのだ。

「抹茶ラテ」

飲み物コーナーの一角、実に魅力的な四文字が僕の視

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