組織の罠
なぜわたしが選ばれたのでしょうか?
わたしはこの組織のほんの一部なんですよ。
本当にごく一部。
組織を代表して?
そう言えば聞こえはいいですけど、
もはやわたしは罠に落ちた囚われの身。
これからどうなるんですか?
つるしあげですか?
さらしものになるのですか?
じっくり観察される?
白黒つけるため?
となりの部屋にはどうやら仲間がいるようですが、
もう一緒になることはないんですか?
この広大な組織のなかで
出る杭は打たれるんですね
出過ぎはよくないと?
確かにそうですよ、
出過ぎたがために
こうしてつままれてしまったわけですから…
こうなってはしかたありませんね
もう抵抗の余地もありませんから
組織を代表して適切な診断がくだされることを願います
これは「組織の罠」に落ちた組織の一部の声である。
いや、実際にその声が聞こえるわけではない。
が、
聞こえてくるような気がした。
「組織の罠」とは?
これは製品の名称である。
そのネーミングセンスにふざけ過ぎじゃないかとも思ったが、
妄想がふくらんだ。
妄想の世界での対話…
その製品とは、ポリープトラップシステムというものである。
つまり、とったポリープを回収する医療機材。
大腸内視鏡検査において採取したポリープ、つまり組織を吸引して入れる容器のことである。
組織が入る容器、蟻地獄的に言うと穴、つまり罠。
思わずうなるネーミングセンス。
こんなふざけたネーミングの製品を使って大丈夫なんだろうか?
しかし、れっきとした日本製であった。
今まで使用していた外国製のものより、表示が見やすく、使い勝手はわるくない。
何よりリーズナブルであるらしい。
要するにコスト削減か…
「組織の罠」
はて、自分はこの組織、
病院という組織の中で
どう生き抜いていくべきか?
生き抜くためには
出しゃばらず
目立たず
ひっそりと…
縁の下の力持ちが理想である。
なんて言っておきながら
毒を吐いていることもしばしば…
結局、駒のひとつでしかなく、
自分の代わりなんていくらでもいるし、
自分の存在なんてたかがしれている、
自分ひとりでできることには限界がある、
などと自虐スパイラルに陥るだけなので
やめておこう(笑)
何はともあれ、
大抵のことは何とかなる
この世の終わりだと思ったことは数知れずだが、
何とかなってきた
しかし、自分の力だけで生きてきたわけではない。
他者の存在、
自然という大きな存在によって
生かされてきた、ということは
忘れてはならないだろう。
学びなくして成長なし
組織の罠に陥らないために…
で、結局何が言いたかったのか?
「組織の罠」というネーミングセンスについて語りたかっただけである。(笑)
(余談) この「組織の罠」を製造販売しているのは創業80年以上の歴史がある会社であった。
信用と実績があるからこそ、そのセンスが磨かれ、発揮されていくのだろう。