「コンセプト」のつくりかた
・コンセプトは、ものづくりの一部
・コンセプトは、未知の良さに形を与えたもの
・ひとつでは否定されるビジョンが、無数になると解決できる
これらの内容は、「コンセプトのつくりかた(著)玉樹真一郎」に書かれている内容です。本書は、元任天堂で、「Wii」の企画担当として、最も初期のコンセプトワークから、ハードウェア・ソフトウェア・ネットワークサービスの企画・開発すべてに横断的に関わった方です。任天堂は2010年に退職されており、本書は、2012年に出版されている本になります。
本書では、コンセプトの位置づけや、構造をわかりやすく整理されており、Wii がまだ生まれていない時代に遡ったと過程して、コンセプトワークを実践的に体験することができ、すぐにでも、コンセプト作成に活用しやすい内容として提供されています。
コンセプトは、ものづくりの一部
本書では、「なぜ、この本を読んでいるのか?(なぜ、コンセプトのつくりかたが知りたいのか?)」という問いからはじまります。
コンセプトを策定しようとするには、「良い商品 / サービス を生み出す」という動機があり、それを達成するには、「良いコンセプト」が必要だと考えられています。つまり、商品 / サービスをつくっていくには、「企画」をしたり、「開発」をしたり、「マーケティング」したりと、色々な要素が必要となりますが、「コンセプト」も、同じように商品 / サービスを生み出す際に、必要な要素ということになります。
本書では、ものづくりには、「コンセプト」を作り、それに則って「良いもの」を作り上げること。を「ものづくり」としています。つまり、コンセプトとは、「ものづくり」のすべての工程で一貫した考え方であり、ものづくりの原理原則ということになります。
コンセプトがずれていては、「良い商品 / サービス を生み出す」ことはできないということなのです。
本書では、コンセプトの定義として下記をあげられていますが、これらは、「良いコンセプト」の要素になります。
・コンセプトは、ものづくりの一部
・コンセプトは、世界を良くする方法
・コンセプトは、あなたがしあわせに生きられる方法
・コンセプトは、母国語を用いた文字20字程度の言葉
・コンセプトは、未知の良さに形を与えたもの
・コンセプトは、ビジョンの集合体から生み出される
・コンセプトは、アイテムの集合体によって伝えられる
・コンセプトは、何を用いて、何をしたいか
引用:玉樹 真一郎. コンセプトのつくりかた (Japanese Edition) (Kindle の位置No.688-693). Kindle 版.
この中で、「コンセプトは、未知の良さに形を与えたもの」について、「SHIFT:イノベーションの作法」にでてくる、「バイアスを構造化し、破壊する」という考え方に一致するものがあると思います。
コンセプトは、未知の良さに形を与えたもの
本書では、コンセプトに良いという言葉を使ってはいけません。と書かれています。いわゆる「良い」というのは、「既知の良さ」と「未知の良さ」が存在しているとあります。
コンセプト作成時や、企画時に、「良いものを作ろう!」とした場合には、企画の落とし穴にはまることになります。それは、たとえば、「良い自動車を作る!」ということにしたとすると、「良い」という言葉にしてしまうと、「燃費がよい」「スピードが早い」「乗り心地が良い」というような、開発側も、利用者側も喜ぶサービスになっていきます。
これが、実現するには、莫大な開発費であったり、研究費や時間が必要になることになります。しかし、「コンセプト」とは、みんなが喜ぶことをやりきろう!ということではなく「リソース以外の何か」がコンセプトなんだとあり、誰もまだ気づいていない価値を探し、新しい良さを言葉にすることになります。
「既知の良さ」と「未知の良さ」をまとめると、次のようになります。
・既知の良さ:ユーザーも作り手も、その良さ自体や良い理由を直感的に理解できるが、実現するには無限のリソースが必要になる。
・未知の良さ:ユーザーはその良さ自体がうまく表現できず、他メーカーも追従できない。実現するには「リソース以外の何か」が必要になる。
引用:玉樹 真一郎. コンセプトのつくりかた (Japanese Edition) (Kindle の位置No.441-445). Kindle 版.
ひとつでは否定されるビジョンが、無数になると解決できる
では、まだ発見されていない「未知の良さ」をどうやって見つけるのか。本書では、ビジョンの集合体がコンセプトが生み出されるとありますが、そもそもビジョンを発見するのが難しいのではないでしょうか。
本書の第2部で、実際にコンセプトを作成するプロセスを疑似体験できますが、そこでは、現状の「文句」や「不満」を書き出しています。次世代ゲーム機の企画というなかであがったものは、「奥さんゲーム嫌い」「ゲームが嫌われるのは嫌」「ネトゲ廃人」「他社は高スペック」「資本力の違い」みたいな内容です。こういった愚痴の裏返しを考えていくと、「奥さんに好かれるゲーム」「家族でやれるゲーム」「健康的にゲーム」「ゲームはスペックではない」「資本力を必要としないゲーム」みたいなものがキーワードとして現れてきます。
そして、ひとつのビジョンだけでは、価値は感じられませんが、全体でみることによって、新しいサービスが見えてくるような気がします。「奥さんに好かれるゲーム」というのは、単純に大人の女性向けゲームをだしたとしても、ターゲットと違うのではないか?ターゲットにしても、可処分時間は存在しているのか?といった議論になってしまいます。
しかし、全体を通してみていくと、家族全員がリビングで楽しくやれるゲームのイメージになっていくのではないでしょうか。それは決して、高スペック・ハイクオリティなゲームではありません。大量にでているゲームではなく、カジュアルなゲームであり、全年齢・男女に受けるゲーム像が見えてくるのではないでしょうか。
まとめ
コンセプトの要素や、策定プロセスをシンプルに学ぶことができました。同じようにシンプルにできるわけではなく、視点に気づけなかったり、うっかり既知の良さに流れてしまうこともあると思います。
しかし、どう進めていけば、コンセプトを策定する方向に進んでいるという道筋は見えたと思います。
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