思考力を高めるコミュニケーション / 一番伝わる説明の順番(著)田中耕比古
・伝わらないコミュニケーションの3つの特徴
・結論の前に、前提をそろえよ
・相手の思考を整理する地図を用意する
上記の内容は、「一番伝わる説明の順番(著)田中耕比古」で紹介されている内容です。仕事で取引先へのプレゼンや上長への報告をする際に、「わかりにくい」と言われた経験のある人は社会人ならかなりの数がいるのではないでしょうか。私は、社会人経験が10年以上になりますが、ついつい夢中になって話をしてしまうと、今でも指摘されてしまいます(恥ずかしい)
本書では、こういった伝わらないコミュニケーションを劇的に改善するポイントがまとめられています。
伝わらないコミュニケーションの3つの特徴
伝わらないコミュニケーションの特徴として、下記の3点をあげています。
①「自分」が考えた順番で説明する
②相手の理解度を意識していない
③言いたいことがわかっていない
どれも思い当たる節があります。考えながら話してしまうと思考をたどるように、考えた順に話してしまいますが、相手に伝えるには、自分の思考順ではなく、「相手が聞きたい順」、理解しやすい順に、必要な情報を精査して伝えなければなりません。
自分主導 / 結論の前に、前提をそろえよ
本書では、説明を2種類にわけ、それぞれの伝える順番を解説してくれています。2種類とは、自分主導(自分の主張を伝えるパターン)の場合と、相手主導(相手の質問に答えるパターン)の場合の2パターンです。
仕事における、クライアントへの提案などの場合は、用意した提案書を使って説明するような「自分主導」のパターンが多いかと思いますが、自分主導の説明の場合は、下記の順番になります。
- ①前提をそろえる
- ②結論・主論・本質
- ③根拠・理由・事実
- ④補足情報
- ⑤結論・相手に促したいアクション
よく「結論から話せ」と言われますが、それよりも前に、前提をそろえることが大切です。前提がそろわない状態では、相手と話が噛み合わなくなる可能性があります。
普段話している同僚であれば、問題ないかもしれませんが、取引先などの場合は、相手の理解状況や、話の範囲を確認しなければ、論点がずれたり、話が発散してしまいます。
相手の思考を整理する地図を用意する
本書では、自分の思考を整理し、正しい順番で伝えることでわかりやすい説明になるようなノウハウを提供してくれています。しかし、これらは基本であり、本書ではさらに相手の思考を整理するための3つのコツが書かれています。
①「地図」で相手の思考を整理する
②「質問」で相手の思考を整理する
③「フレーム」で相手の思考を整理する
①「地図」で相手の思考を整理する。というのは、話の全体像を提示するということです。相手に伝わるために、自分の考えを整理する方法を本書のこれ以前の部分で丁寧に説明されています。しかし、相手はどういう論理展開をするかがわかっていないため、話についていくのに労力がかかります。
仕事でも、当初の予測とは異なる結論や新情報などを盛り込んだプレゼンのときは、相手がついてこれていないと感じることがあります。実際に、プレゼンについて繰り返し質問をされることになります。解決策として、全体像の分かる「地図」をはじめに提示することで、話の向かってる方向性、現在地を知ることで、相手は理解しやすくなります。
相手の思考を整理する「大きな地図」
説明に用いる地図は、下記の2種類があるとあります。
①筋道が描かれた「小さな地図」
②全体が描かれた「大きな地図」
①筋道が描かれた「小さな地図」とは、プレゼンの冒頭で何について話すのか、相手に何をしてほしいのかなどを話し、いまなにを話しているのかを目次をなぞるように話す方法です。
プレゼン資料などでも最初に「目次」を表示し、項目が進むたびに現在「目次」のどの位置にいるかを表示することで、話の流れを理解してもらいやすくしますが、それを口頭で説明する場合にも実施することかなと思いました。
②全体が描かれた「大きな地図」は、下記5つの鉄則が紹介されています。
鉄則1:地図は大きい方がいい
鉄則2:地図を作り替えることを恐れない
鉄則3:焦点を明らかにする
鉄則4:常に、地図に立ち戻る
鉄則5:地図を広げるタイミングは最初
鉄則1については、どんな話でも切り捨てずに地図に収めることで、議論が本筋から離れさせない方法として紹介されていますが、とても秀逸なテクニックだと思いました。こちら紹介されている文面を引用させてもらいます。
こちらも説明ベタな私は、関係のない話やスコープ外の話がでたと思うと、話を切り上げていっていました。しかし、うまく地図に収められることで、話をまとめることができます。
コンサルの現場でいえば、拡散系・発散系の会議においては、世界地図なり宇宙地図なりの「果てしなく広大な地図」を用意して、本筋から大きく外れた意見についても、「なるほど、それは火星の話ですね」と、しっかり受け止めます。それにより、発言者も満足し、議論も本筋から離れずにすみます。もう少し具体的にいえば、「商品のよさを説明する」のに、「価格優位性(安さ)」の話しかしない、というのは問題がありますよね。「製品特性=機能」や「流通の特徴」「実施中の販促キャンペーン」などの情報が含まれているべきです。このときに「綺麗な女優さんがCMに出演しているのもいいですね」と、関係ない話をされた場合には、「販促キャンペーン」の項目にマッピングします。そして、「ひょっとしてファンなのですか?では、彼女の写真のついたノベルティがないか確認して、次回お持ちしますね」というふうに受け止めるわけです。決して、「今はその話は関係ないですね」と切り捨てず、広く定義した地図にプロットした上で会議の本筋に戻るのです。
引用:田中耕比古. 一番伝わる説明の順番 (Japanese Edition) (Kindle の位置No.1091-1100). Kindle 版.
本書には、いろいろなテクニックはもちろんですが、「説明する」ということについて多くのことが思考されています。伝わるコミュニケーション力も身につきますが、頭の中を整理する力も身につくような一冊かと思いました。
コミュニケーション力やプレゼン能力を高めたい人は、ぜひご一読ください。
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