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ビジネスにおける「アート」の価値はあるのか? / アート・イン・ビジネス(編)電通美術回路

・アート・イン・ビジネスとは、ビジネスに「アートパワー(問題提起力 / 想像力 / 実践力 / 共創力)」を取り入れること
・マネックスが実践する ART IN OFFICE の取り組み
・アート・イン・ビジネスを実践企業と一般企業では、アートパワー、アートの効果のすべてにおいてアート・イン・ビジネス実践企業の平均スコアが高くなった

上記は、「アート・イン・ビジネス(編)電通美術回路(著)若林宏保、大西浩志、和佐野有紀、上原拓真、東成樹」に書いてある内容です。

昨今、アート思考や教養としてのアートについて耳にすることが多いと思います。またベンチャー企業などでもオフィスにアートを飾る企業も増えており、今までのビジネスとアートという遠い存在だったものが、とても近づいている用に感じると思います。しかし、実際には、アートがどうビジネスに効果があるのかを明確に説明できる情報はあまりないと思います。

本書は、その「ビジネス」における「アート」の価値を明確にしようと試みた内容になっています。

アートをどうビジネスに活かせるのか?またアートがなぜこんなに取り上げられているのかを知りたいと思っている人にはぜひおすすめの内容になっています。

アート・イン・ビジネスとは?

本書では、アート・イン・ビジネスとは、ビジネスパーソン一人ひとりが、ビジネスに「アートパワー(問題提起力 / 想像力 / 実践力 / 共創力)」を取り入れることとあります。

「アートパワー」とは、アーティストがアート作品を生み出す過程で生まれる創作の原動力となる「問題提起力」「想像力」「実践力」「共創力」の4つの力を示しています。

上記のアートパワーが「アート効果」をもたらすとあり、「アート効果」とは、ビジネスにおけるさまざまなアート効果から代表的なものとして、「ブランディング」「イノベーション」「組織活性化」「ヴィジョン構想」として4つを抽出し、本書ではアート効果として語られています。

本書では、アートを活用した多くの事例を掲載されています。

ルイ・ヴィトンは、アーティスティック・ディレクター(当時)のマーク・ジェイコブスが、交流のあった現代アーティストを起用して、伝統的なイメージに現代的なイメージを取り入れることでブランドの刷新に成功しています。さらに、アーティストのコラボレーションによる商品を限定品として展開するなど、まるでアート作品のように売り出すことで、ビジネス的な成功をとげています。

日本でも、寺田倉庫が、アート作品を預かることで、それに付随する付加価値の高いサービスを提供すると同時に、ブランドイメージを高めています。さらに近年は、東京の湾岸エリアのひとつにすぎなかった天王洲という倉庫地区をアートを活用することで、ひとつの街としてブランディングしています。

マネックスが実践する ART IN OFFICE の取り組み

オフィスにアートを取り組んだ事例として、マネックスの「ART IN OFFICE」が紹介されています。

松本氏は、アートとビジネスは親和性が高いと考えおり、オフィスを拡張する際に、部屋の壁に展示する現代アート作品を公募し、アーティストにオフィス内で制作してもらうという案を思いつきます。こうして、ART IN THE OFFICE が始まったとあります。

アートが展示されるように設計された会議室は存在感があり、多大なPR効果を生み出すことになります。また、それだけでなく、定期的にアーティストを招き、作品制作を依頼し展示することで、社員がアートにふれる機会が生まれ、顧客との接点で用いるデザインが向上したり、さらには革新的な金融サービスが生まれたりすることを狙いにしています。これらは、組織構成員の美意識と自律性を高め、やがては金融業界のイメージを革新するというヴィジョンを実現するためにアートを活用しようとしています。

この取組は、すぐには効果はでないかもしれませんが、ART IN THE OFFICE に関わった多くの企業(CCCやJINSなど)も同様に各々の企業で、ART IN THE OFFICE の企画を進めていることから、何らかのつながりをうみ、価値を感じていると言えると思いました。

アートがもたらす効果を成果指標(KPI)

本書では、アートインビジネスを実践した企業(寺田倉庫、マネックスグループ、アクセンチュア、スマイルズ)と一般企業の従業員にアンケートを実施し、本書で定義している「アートパワー」と「アート効果」を測定し、それぞれで比較しています。

下記は本書の引用になりますが、すべてのスコアにおいて、アートインビジネスを実践した企業が高くなっていました。

アート効果の検証結果として, 我々が予想していた以上にアー ト・イン・ビジネスを実施することによる効果が大きいことがわか りました。 たとえば, アート・イン・ビジネス実施企業の従業員の ほうが, 美的なものに魅了されたり, 表現したいと感じたりする気 持ちなどの 「審美的志向性」 に関して, アートへの親和度が非常に 高いことが確認できました。 また, アートパワーとアートの効果の 比較分析によって, アート・イン・ビジネス実施企業では, 個々の 従業員におけるアートの内在化が進んでいて, 企業のビジネスにお いてもイノベーションの促進や組織活性化に成果をあげていることがわかりました。
若林宏保. アート・イン・ビジネス(カラー写真版) (p.132). Kindle 版.

今回調査対象となったアート・イン・ビジネス実践企業側は4社のみと数が少なく、業界もサービス業への偏りがあるため、結果に偏りがでている可能性があるため注意が必要です。

しかし、今まで具体的に語られていなかった「ビジネス」における「アート」の価値を明確にしようとしている点について、今後にも期待できる内容となっています。

社内にアートを設置したり、アーティストとコラボすることでイノベーションが起こせないかと考えたり、アートのワークショップを検討している方は、ぜひ参考にされると良いと思いました。

アート思考については、過去読んだ「13歳からのアート思考(著)末永幸歩」「アート思考(著)秋元 雄史」のどちらもとても参考になったので、アート思考に関心がある人は、本当におすすめです。



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小倉 研太 / プロマネ x フルリモート
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