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実践的な組織開発法 / マーケティングとは「組織革命」である (著)森岡 毅

・組織とは、「一人一人の能力を引き上げる装置」
・チームの生産性を劇的に上げる秘訣は「ボトルネックを潰し続ける」
・会議とは、「人を動かせるための儀式」

上記は、「マーケティングとは「組織革命」である (著)森岡 毅」に掲載されている内容です。人事や組織マネジメントを専門とした人が書いた組織論ではなく、マーケティング専門家であり、実業家の森岡毅氏が書かれているため、事業サイドからみた組織論として書かれていると感じました。

本書は3部構成になっており、第一部「組織に熱を込めろ!」は、前提となる組織についての考え方を説明されています。第二部「社内マーケティングのススメ」は、実際に、どうやって組織革命を実行するかが説明されています。この組織革命を実行するのは、トップなどの経営者視点ではなく、現場の平社員視点で説明されています。第三部「成功者の発想に学べ!」は、多くの著名な経営者との対談になっています。第一部で、組織についての考え方のフレームを提示されており、社内での組織開発などに使える内容も多くあります。

事業部門の立て直しや立ち上げに関わる人はもちろん、経営者も参考になる本ではないでしょうか。いくつか気になったポイントを紹介します。



持続的なマーケティングができる組織を構築する最大の課題は、組織改革

著者は、マーケティングには消費者の購買行動を決定的に変える力があると確信しており、実際に、USJでは、一時的な成功だけでなく、持続的なマーケティングができる組織に変革させるという実験に成功させることができました。そして、新たに創業した「刀」に相談にくる日本企業の話から、USJのように持続的なマーケティング力を構築する際に最大の課題は、組織改革だとあります。

マーケティングは、マーケティングだけでは機能しません。優秀なマーケターを雇ったとしてもマーケティングを機能させるようにできません。各企業の置かれた市場環境や諸事情、経営者のビジョンを咀嚼し、最適な組織を設計し、既存ビジネスへの実害を最小化しながらあるべき姿へ組織改革するには、高度な戦略人事のノウハウが必要となると説明しており、マーケティングができる組織を生み出すことが重要だとあります。

組織とは、「一人一人の能力を引き上げる装置」

著者は、組織とは、「一人一人の能力を引き上げる装置」だと考えています。組織は多くの人が集まることでマンパワーを増やすことに価値があるのではなく、個人がもつ能力を引き出すことにより組織の力を強くすることができるとあります。


例えてみれば、数学だけしか能が無い私がセンター試験を受けるようなものです。国語や他の科目に絶望的な弱点を抱えながら、センター試験では冷酷に総合点を問われます。数学は満点を取ったとしても、私の文系能力のポンコツさがボトルネックとなって総合点は非常に厳しいものになります。対して組織をつくるとはどういうことか?それは、私は数学のみを担当し、国語は文系天才の佐藤さん、地理は地図オタクの鈴木さんと、それぞれの得意分野を組み合わせて総合点を稼ぐということです。自分の弱点がボトルネックになって、全体の生産性を著しく落とすことを回避できる。それどころか、各々の突出した強みを組み合わせて圧倒的な結果を出すことができる。これが組織をつくるメリットです。
引用:森岡 毅. マーケティングとは「組織革命」である。 (Japanese Edition) (Kindle の位置No.262-268). Kindle 版.

チームの生産性を劇的に上げる秘訣は「ボトルネックを潰し続ける」

著者は、組織の生産性を考えるうえで、「ボトルネックをつくらない」ということと、「ボトルネックは動く」ということを常に頭の中においておくべき視点だとあります。ボトルネックをつくらないとは、一連の機能の中で最終成果を限定しているボトルネックを発見し、改善し、最終成果を最大にすることだとあります。そして、ボトルネックが解消されると、別のところがボトルネックになって変化していきます。そうすると、次に現れるボトルネックを一つ一つ潰し続けていくと、組織の生産性は劇的に改善するとあります。

この考え方は、「ザ・ゴール」にでてくる制約の理論に近いものかと思います。著者は、最高の結果をだすには、誰かが余力を残してはいけないとあります。全員が持てる力をすべて出しきってやりきるという全体最適を考えていることがわかります。

また本書では、新メンバーの加入についても述べられていますが、著者は、新メンバーをボトルネックにしないために生産性に関係ない業務しかやらせないのは本末転倒とあります。新人も戦力として活用し、早く戦力になるように教育することが長期的にみた視点では効率がよいとあります。そのために、新人が戦力として能力を発揮できるようにしっかりと仕事を教えることが大切だとあります。

会議とは、「人を動かせるための儀式」

本書には、3つの組織改革として、「意思決定システム」「評価システム」「報酬システム」をあげています。そのなかで「意思決定システム」として、会議のあり方について書かれています。

会議とは、情報共有や議論し新しい価値を生み出すことが目的ですが、会議そのものの価値ではないとあります。著者は会議について、会議そのものの価値は、「人を動かせるための儀式」とあります。

人は、人前で恥をかきたくない、組織の中でよく思われたいと考えるので、その気持を利用して、会議と会議の間で必死に働かせることができるとあります。

これは普段働いていて、とても感じるところがあります。会議が定期的に設定されているプロジェクトなどでは、会議を中心にスケジュールが組まれており、その会議を中心にタスクの締め切りが設定されています。そうすると会議のない日の締め切りよりも、期限が明確になり、期限通りにタスクを完了していきます。


会議の意味とは何でしょうか?皆が集まって情報を共有することでしょうか?議論をして新しい価値を生み出すことでしょうか?それらは正しいと思いますが、それは会議を使う目的であって、会議そのものの存在価値をうまく言い当てられているとは思いません。人間の本質が自己保存であることを頭に入れると、会議の本当の意味が見えてくるのです。私にとって、会議とは「人を働かせるための儀式」です。人間は人前で恥をかきたくない、組織の中で良く思われたい。なぜならば、組織の中での自分の信用の向上は生存確率を高める自己保存に強く感応するからです。その特性を理解しておけば、会社にとって正しく人を動かすための手段として、会議を非常に有効に活用できるのです。
引用:森岡 毅. マーケティングとは「組織革命」である。 (Japanese Edition) (Kindle の位置No.1410-1417). Kindle 版.

本書では、マーケティングを組織定着させるためだけでなく、どうやって強い組織を作るか、どうやってメンバーをマネジメントするか、どうやって自分の提案を上長に認めもらうかといった様々な組織に関わるヒントがあります。

とても学びの多い本だと思いますので、ぜひ、ご一読ください。




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