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大切なのはプログレスであって、プロダクトではない / ジョブ理論

・大事なのは、プログレス(進歩)であって、プロダクト(商品)ではない
・どんなジョブをを片付けたくて、その商品を「雇用」したのか
・ニーズは漠然としており、ジョブは、はるかに複雑な事情を考慮する

上記は、「ジョブ理論(著)クレイトン・M・クリステンセン」に書かれている内容です。「イノベーションのジレンマ」がとても有名でビジネスマンであれば、誰しもが聞いたことがあるのではないでしょうか。2020年1月にお亡くなりになられていますが、多くの著書は、著者がなくなったあとにも多くの学びを与えてくれます。
今回は、新規事業を考えるにあたって、考えるべき「ジョブ」と「ジョブハンティング」についてまとめます。


ジョブ理論の概要

ジョブ理論の例として、ミルクシェイクの事例が登場します。
ファーストフード店が「ミルクシェイクの売上増加」を検討します。どこの企業でもよくある光景だと思いますが、担当者は、顧客に「どんな点を改善すれば、もっとミルクシェイクを開拓なりますか?」と質問をし、詳細に調査をしていきます。ここでは、サイズや味についてのアイデアがでてきました。そして、顧客への調査結果を元に、施策を実施していきますが、思ったように売上に変化が現れませんでした。

次に、「どういう目的(ジョブ)のために、あなたはこの店に来てミルクシェイクを買ったのですか?」「ミルクシェイクでなければ、他に何を買いましたか?」という質問をしました。(前者の質問は回答者が戸惑ったため、後者の質問に変えられたとあります)

結果は、早朝の顧客の競合は、バナナやベーグル、ドーナツなどであり、「通勤のために、長い時間退屈な運転をしなければならない。だから、通勤時間に気を紛らわせるものがほしい」ということが導かれました。そして、夕方の顧客の競合は、玩具屋に立ち寄ることや、あとでキャッチボールをすることであり、「子供と温かく触れ合う機会、優し父親の気分を味わうためのものがほしい」という早朝の顧客と異なった答えがでてきます。

この顧客の調査結果からは、同じ顧客でも早朝と夕方で必要なものが異なっていました。そして、プロダクトを購入する理由は、重要なジョブを解決するためであり、「商品」の機能的な改善を実施したとしても、「片付けるジョブ」を解決できなければ売上は大きく変化することはできないということです。

ジョブ理論の中核は、顧客がなぜ特定のプロダクト / サービスを生活の中に引き入れるのか、その理由という因果関係を説明することです

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ジョブハンター

片付けるべきジョブを特定するために、すぐ目の前にあるかもしれないジョブを明らかにする方法として、下記の5つが紹介されています。

1. 生活に身近なジョブを探す
2. 無消費と競争する
3. 間に合せの対処策
4. できれば避けたいこと
5. 意外な使われ方

2. 無消費と競争する

片付けるべきジョブについて学べるのは、既に何かの商品・サービスを雇用している人からだけではなく、何も雇用してない人からも多くのことを学べるとあります。ジョブを満たす解決策を見つけられず何も雇用しない道を選ぶことを、「無消費」と読んでいます。

事例として、airbnb と、キンバリー・クラーク社の成人向けの失禁用製品がとりあげられています。キンバリー・クラーク社は、既に成人用オムツの市場で大きなシェアを獲得していました。しかし、市場の規模よりも多くの人が、失禁や尿もれに悩まされているにも関わらず、実際には製品を購入している人はごくわずかということに気が付きます。

そこには、「成人用オムツを購入するくらいなら、我慢する」という無消費状態の人たちが多くいたのです。こうした人たちの片付けるべきジョブは、「楽しい生活を取り戻すこと」となります。

そして、キンバリー・クラーク社は、見た目もつけ心地も通常の肌着と変わらない製品を開発し、パッケージを一般の肌着に似せ、商品が本物の肌着そっくりであることがわかるようにした。この商品は、発売1年目に6000万ドルを売上、2年目には30%の増加をし、しかも、既存プロダクトの市場シェアを減らすことなく成長することができた。

新規事業や普段の既存事業でも、事業目標は市場規模からシェア◯%を目指すという考え方を一般的にしますが、ここでは、既存の市場の外に需要が存在していることがわかります。ここで重要になるのは、一度、市場のカテゴリから引いてみることです。

airbnb のようなシェアリングサービスは、ここに該当するものが多いと思いました。実際に、今まで自分の所有するものを「シェア」するということを考えてはいませんでした。しかし、折角購入したのに廃棄するのはもったいないので、使わないままおいておくという無消費状態の人たちがおり、その人たちが片付けるべきジョブは、「利用されていない所有物を有効に活用すること」となるのではないでしょうか。

4. できれば避けたいこと

「やりたいこと」ではなく、「できれば避けたい」というジョブも多く存在しており、「ネガティブジョブ」と定義されています。

事例として、CVSミニッツ・クリニックを紹介しています。これは、予約なしの患者をその場でナース・プラクティショナーと呼ばれる一部の医療行為が認められている看護師が診察し、日常的な疾患に対する薬のみ処方できるサービスです。

これは、突然発生するちょっとした病気(頭、喉の痛みなど)の際に、病院の待ち時間、薬の待ち時間などの憂鬱な待ち時間という「医者には行きたくない」というジョブを解決するサービスになっています。

CVSミニッツ・クリニックの事例は、コロナ禍における「病院」や「密な空間」ではないでしょうか。飲食店については、既にテイクアウトやデリバリーが増加しましたが、おそらく、コロナ禍が落ち着いても続くことになると思います。

他にも、「役所の待ち時間」などの手続きに関するものも「できれば避けたいこと」に入るかもしれません。最近の話題になった「退職代行サービス」もここに該当するといえると思います

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感情面の配慮

片付けるべきジョブを見つけたあとも、ジョブの文脈を理解する必要があるとあります。

顧客が、求めている進歩の機能面だけでなく、社会的・感情的な側面を深く掘り下げなければ、偏った文脈のジョブに引きずられてしまうとあります。

事例として、P&Gが中国で紙オムツの進出が紹介されています。当初は自社のノウハウをもってすれば、低価格で紙オムツが提供できれば、市場に受けいられれると考えていましたが、実際にはそうはいきませんでした。そして、オムツの機能性や値段について調査をしましたが、明確な答えはでませんでした。

そして、ユーザインタビューの結果、おむつによって解決される片付けられるジョブは、夫婦関係や家庭生活に影響する社会的側面や人の感情を動かす感情的側面などもありました。

これらの機能的な側面以外を考えるということを意識して、「コーヒーメーカー」は、どういうジョブと文脈をもっているかを考えました。コロナの影響で、コーヒーメーカーなども売れているという話がありました。

これを「コロナの影響で外出できないが、美味しいコーヒーを自宅で手軽に飲みたい」ということであれば、効率的にコーヒーという機能面や価格の改善が重要だったかもしれません。しかし、「コーヒーを淹れる」という行為が仕事の休憩であったり、リフレッシュの時間として機能していたとしたら、実は抽出に時間がかかるような待ち時間があったほうがいいのかもしれません。(コーヒーを飲むというのは、思考を整理したり、仲間とコミュニケーションを促すといった側面があったように感じます。)

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まとめ

ジョブ理論は、とても読みやすいのですが、ビジネスの実践で活用できるには、これも繰り返し試してみるしかないと思います。ジョブハンティングなどは良い事例だと思いますので、同じ手法で身の回りにある商品やサービスがどういう片付けるべきジョブを解決しているかを考えると鍛えられると思いました。

クリステンセン氏の「イノベーション・オブ・ライフ」も、とてもおすすめです。ビジネスの理論を人生というものをより良くするものとして活用しています。仕事一辺倒になっているビジネスマンはぜひ読んでください。

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小倉 研太 / プロマネ x フルリモート
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