【1日1冊書評】LEAP――ディスラプションを味方につける絶対王者の5原則(著)ハワード・ユー
こんにちは。
本日は、「LEAP――ディスラプションを味方につける絶対王者の5原則(著)ハワード・ユー」を紹介します。LEAPとは、「跳躍」という意味で、本書のなかで、長期的に成長するためには、それまでの知識分野から「跳躍」することで、新しい知識を創造することが必要とあります。
この本は、「イノベーションのジレンマ」のような成功した企業が新興企業との競争に負けてしまう事例と、イノベーションのジレンマに陥らず、成長している企業との比較から、競争に勝ち続ける・成長し続けるための戦略をまとめています。そして、個人としても自分をどう成長し続けていくかの方法としても参考になると思います。
テーマ:成長し続けるためな戦略はなにか?
既存の成功企業は、イノベーションのジレンマを語るまでもなく、新たなイノベーションをいかに創発するかという問いを重視していると思います。そして、昨今では、業界の変化のスピードが早く、数年前に成長著しい企業であっても、現在では別の新興企業に市場を取られているということが発生しています。
僕も所属していたインターネット業界や、SNSやソーシャルゲーム業界などでも、以前は急成長し、時代の寵児ともてはやされていた企業が新しいプラットフォームへの転換が果たせず、失速しています。これからの事業には、LEAP(跳躍)が必須です。これは大企業やかつてイノベーションをおこした企業だけに限らず、これからイノベーションを起こす企業にも必ず必要になります。
印象的な文章として、下記の本書の引用があります。つまり、要するに「未来永劫続くような完璧なポジションというものはどこにも存在しない」ということです。変化というLEAPし続けることでしか生き残ることはできないということです。
最もシンプルな言い方をすると、優位性が揺るがないような、独自のポジショニングを追求しても、それは幻想に過ぎない。知的資産やポジショニング、ブランド認知、生産規模、そして流通ネットワークすらも、長期間の競争に耐え得るものではない。どんな価値提案も、それにどれほど独自性があっても、脅かされないことはない。よいデザインや優れたアイデアも、それを企業秘密にしても、特許があっても、結局はまねされる
ハワード・ユー. LEAPディスラプションを味方につける絶対王者の5原則 (Japanese Edition) (Kindle の位置No.220-224). Kindle 版.
LEAP の5つの原則
LEAPの5つの原則
- 原則1:自社の基盤となっている知識とその賞味期限
- 原則2:新たな知識分野を見つけ、開拓する
- 原則3:地殻変動レベルの変化を見方につける
- 原則4:実験、実験、実験
- 原則5:実行への「ディープダイブ」
引用:ハワード・ユー. LEAPディスラプションを味方につける絶対王者の5原則
この原則は、知識を石油のような埋蔵資源と考えることだと思います。既存の成功は、埋蔵されている石油を発見した状態だと言えます。しかし、埋蔵されている石油は掘り返していけばいずれ尽きてしまいます。企業は石油が尽きる前に、新たな資源(知識)を手に入れる必要があります。そして、新たな資源の可能性がでた際には、他社に資源を取られる前に急ぐ必要があります。
これも色んな書籍で言われていることですが、新しいイノベーションを起こさなければならず、そのためには、新しいチャレンジをしなければならず、そのチャレンジを成功するには、実験とマネジメントの意思決定が必要です。
商品に変化はなくとも変革は起こる
日米ピアノ戦争という日本のヤマハと、アメリカのスタインウェイのピアノ事業の争いが紹介されています。この競争は、ピアノという商品は、まったく代わっていないにも関わらず、古くから最高級ピアノとしてスタンウェイは認識されていたが、新興のヤマハとの競争に負けてしまうことになります。
これは、スタインウェイは、最高級のピアノを作るために、熟練の職人が昔ながらの作り方で作り続けています。しかし、知識というのは進化していくため、変化はさけられないとあります。
その知識の進化は、ピアノ製造に関してだけでなく、製造業や他の業界でも同じような下記図のようなモデルが起きているとあります。
この2や3は、最初は品質が低くローエンド市場向けになることが多いが、ローエンド市場で足場を固めると時間と資金をかせぎ、品質を改善していくことで、業界の中の競争に買っていく力をつけていくことができます。
これは、製品に変化がなかったとしても、それが職人技のフェーズであれば、次は大量生産・オートメーションという段階に変化が発生します。これは、変化の初期段階では、融通が効かず、品質が低く、販売は苦戦することは予想されます。また前の段階の利益を最大化するために、育成など投資したコストがあり、回収しなければならないと思考が働きます。そのため、次のフェーズに映ることができず、新しいフェーズに進出した新興企業に競争に負けていくことになります。
これは、職人技という表現をしていますが、どういう技術でも同じです。これはプログラミングであったとしても、遺伝子工学であったとしても、特定の企業がもっている技術は、いずれ普及し、一般化されてしまうことになります。
この手頃な価格の製品は新たな顧客を引き付け、それによってさらに需要が刺激される。こうして早期にオートメーションを実現した企業は、成長する業界で優位性を獲得して自然に勝者となっていく。ヤマハの彗星のような台頭もこのようにして始まった。スタインウェイが低迷していったのは、技術の進歩とオートメーションをなおざりにして、近視眼的に職人技にこだわり続けたことが大きく影響している。
ハワード・ユー. LEAPディスラプションを味方につける絶対王者の5原則 (Japanese Edition) (Kindle の位置No.546-549). Kindle 版.
新しい知識分野へのLEAP
次に、事業がオートメーション化のフェーズになった後の変革について、P&Gの事例が紹介されています。P&Gは、石鹸を販売していましたが、石鹸は既に工場で作られるようなオートメーション化されていました。類似品も大量に市場に出回っているなかで、生産を効率化しても大きな伸びしろはありません。
そして、P&Gは、石鹸を生産することで改革するのではなく、広告活動やマーケティング活動によって、成果をあげることになります。石鹸のビジネスは、機械工学から、消費者心理学へとLEAPしたのです。
この消費者心理学へのLEAPは、初期の段階では、機械工学と同じように、属人的、あるいわ直感的に広告活動が行われていました。しかし、その広告活動が次第に効果のあるものに集約していき、専門的なマーケティングへとフェーズが変わります。この専門的なマーケティングとういのは、前述のピアノの事例と同じように、初期では職人技のように属人的なものだったものが、事例を通じた汎用的な知識となり、その後、さらに誰でもできるようなルール・ノウハウとしてオートメーションが可能な状態になります。そして、機械工学からの消費者心理学へのLEAPにより、P&Gは、さらに継続的に成長することになります。
これは、既存の知識は、新しい知識に競争で負けてしまうため、適切に新しい知識にLEAPする必要があります。まずは、知識の進化として、職人技が大量生産、オートメーションという進化をし、その次に、違う知識へLEAPする必要があります。
これからの話し
LEAPには、過去のトレンドだけでなく、未来として、現在起きているユビキタスのクラウドで課題を解決する事例が載っています。このクラウドでの課題解決は非常に興味深いのですが、分量が多くなってきたので、次回に書きたいと思います。
本日のメモ
言い尽くされていますが、成長し続けるには、学びとリスクマネジメントのための実験と、セルフカニバリゼーションを怖れない意思決定が大事だと思いました。
これは個人にもいえる話で、同じところにとどまっていて価値をあげられるはずはないので、実験をし続け、意思決定をしていく必要があると思いました。
支援は、コミュニティ研究の取材、サービス開発などに費用にあてさせて頂きます。