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ルーマニアの詩人、作家、俳人のClelia・ Ifrimの俳句を読む

クレリア・イフリム(Clelia・Ifrim)とは、2019年8月の、ルーマニアのコンスタンツァで催された俳句祭で初めて知り合った。彼女はブカレストに住んでいる。そののちにも何人かで、ブカレストからコンスタンツァまで車で旅行したこともある。その夏の美しいルーマニアの横断する旅は私にとっても忘れ難い想い出だ。さて、彼女はすでに三十冊以上の小説、詩、俳句、エッセイなどの本を出版しているが、この最新の句集(短歌、俳文を含む)『SOARELE,PRIMUL MEU VECIN(THE SUN,MY FIRST NEIGHBOUR)』の中から、少しばかり訳してみたい。(英訳は彼女自身)彼女やダニエラ・ヴァルヴァラとは、連詩や連句を一緒に作ったこともある。(興味のある方は、前の記事の『羅・日 詩歌フォトセッション』や『国際連句 with AI』などを参照)

Steaguri fluturănd-
o mierlă rătăcită
se ia după vânt.

The flags fluttering-
a blackbird loses its way
and follows the wind.

はためく旗-
迷ひたる鶫
風に従ふ

(訳 三宅勇介)

前にも書いたことであるが、ルーマニアの俳句は、ルーマニア語の音節で5,7,5になっている。だから、英訳や日本語訳すると、当然、その5,7,5は崩れる。それはしょうがないのであるが、それでも日本語訳ではなるたけ5,7,5に寄せてみた。ちなみに、ハイフンはルーマニア語俳句では何を意味しているのか。一種の「切れ」であろう。クレリアに聞いたことがあるが、俳句の「や」や、「かな」などの切れ字をどのように表すか、というのはルーマニアでは相当工夫しているらしい。ちなみに、「や」→「,」で、「かな」→「,,」などで表現したりする。彼らは本当に俳句や日本文化が大好きなのだ。日本ではあまり流行らない「俳文」もルーマニアの俳人たちの間では人気だ。さて、このクレリアの俳句の季語はblackbirdであろう。辞書で引くと、クロウタドリとかヨーロッパ産のツグミ、とか出てくるが、クロウタドリは日本の季語にないので、鶫、と訳した。晩秋の季語。では、日本とルーマニアの季語の違いは?これも前の参照記事に書いたので、今回は省略。

Trec printre ele
cu-o frunză roșie-n inimă-
umbre de copaci.

I'm passing through them
with a red leaf in my heart-
shadows of the trees.


紅葉胸に
樹々の影中
歩きつつ


Martie ploios-
ca un sentiment uitat,
perdeaua albă.

Day of rainy March-
a forgotten sentiment
as a white curtain.

雨の三月-
蘇る想ひは
白きカーテン






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