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ベジタリアン・ヴィーガンJAS制定プロジェクトチーム委員会発足

 日本でも最近ベジタリアン、ヴィーガンOKの食品やレストランが増えてきています。元々は2020年オリンピック・パラリンピック開催を見据えた、インバウンド需要を捉えるための動きだったのかもしれませんが、世界的なトレンドやコロナ禍で高まった健康志向などにより、国内での反応もなかなか悪くないようです。

 ただ、日本ではまだまだベジタリアン、ヴィーガンについての理解が不足しており、不適切な材料を使っていてもベジタリアン、ヴィーガンとして提供されるケースも見られます。そのため、2019年11月に発足した「ベジタリアン/ヴィーガン関連制度推進のための議員連盟」(ベジ議連)でも、かねてより、ベジタリアン・ヴィーガンJASの必要性が議論されていました。

 そうした動きを受け、2021年5月11日、衆議院第二議員会館にて、「農林水産省ベジタリアン又はヴィーガンに適した食品等JAS制定プロジェクトチーム」第1回委員会が行われました。委員会には、ベジ議連から河村建夫会長(衆議院議員・元官房長官)、松原仁事務局長(衆議院議員)も出席し、挨拶を述べました。

※これまでのベジ議連のリポートはリンクからご覧ください(第1回第2回第3回第4回第5回)。

JASとは

 JAS(Japanese Agricultural Standards 日本農林規格)は、「食品・農林水産分野において農林水産大臣が定める国家規格」農林水産省HPより)であり、国内だけではなく海外に日本製の食品や農林水産品を輸出する際にも、JASマークは高い信頼性の証となります。「ベジタリアン・ヴィーガンJAS」は、「高付加価値やこだわりのある規格(特色のある規格」である「特色JAS」としての制定が目指され、海外への輸出も視野に検討されています。

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 前述の農水省HPによると、JAS制定の流れは、①民間発意→②規格化の事前相談→③プロジェクトチームの編成→④プロジェクトチームにおけるJAS原案の検討→⑤法第四条に基づくJAS原案の申出→⑥JAS案の作成→⑦通商弘報・パブコメ→⑧JAS調査会による審議・議決→JASの制定・公示 となります。「ベジタリアン・ヴィーガンJAS」については、今年3月に認定NPO法人日本ベジタリアン協会が申し出をし(①)、②、③を経て、現在④の段階です。今後、7月、9月、11月に委員会が開かれ、今年11月に⑤のJAS原案申出、12月〜2022年1月に⑦通商弘報・パブコメ、⑧を経て、2022年3月のJASの制定・公示が見込まれています。

※法第四条(日本農林規格等に関する法律 第4条)については、こちらをご参照ください。

プロジェクトチーム委員会出席者一覧

 農林水産省JAS原案作成マニュアルによると、プロジェクトチームのメンバー構成は「制定しようとするJAS原案に利害関係を有する者(以下「利害関係者」という)及び中立者それぞれの属性のバランスを考慮して決定」とあります。「ベジタリアン・ヴィーガンJAS」のプロジェクトチーム委員会(第1回)出席者は以下になり(敬称略)、【食品会社等】【小売業】【レストラン】は利害関係者にあたります。

【申し出者】および【事業者】認定NPO法人日本ベジタリアン協会代表・垣本充
【学識経験者】高井明徳(日本ベジタリアン学会会長)、嵐雅子(相模女子大学准教授)、中川雅博(ふみ技術士事務所代表)
【食品会社等】不二製油グループ㈱、エスビー食品㈱、マルコメ㈱、(一般社団法人)ジャパンズビーガンつぶつぶ
【小売業】イオン(株)、(株)ファミリーマート、㈱セブン-イレブン・ジャパン
【レストラン】㈱ニッコクトラスト、TOKYO-T's㈱、㈱真
【JAS登録認証機関】有限会社リーファース
【自治体】東京都
【農林水産省関係】農林水産省食料産業局食品製造課基準認証室、(独立行政法人)農林水産消費安全技術センター(FAMIC)
【オブザーバー】ベジ議連事務局、ミートフリーマンデー・オールジャパン
【ベジタリアン・ヴィーガンJAS制定事務局】認定NPO法人日本ベジタリアン協会事務局長 橋本晃一

ISO規格を元にした規格案

JASの認証は、「国際的に通用するJAS認証の枠組みとして、国際的に広く用いられている国際標準化機構(ISO)で定める枠組みに準拠」するとされています。ベジタリアン・ヴィーガンに適した食品に関するISO規格は2021年3月に初めて発行され、今回の委員会でもその規格を参考に規格案が作成されました。今後、これを叩き台にして議論が進められていくこととなります。

農水省の担当者によると、「用語や定義に係る部分はISO規格の基準を用いているが、JAS認証に適するよう、ISO規格には定められてない具体的な基準(原材料の取り扱い、料理の配合計画など)を加え、国内事業者の方が取り組みやすいように構成した」とのことです。なお、ベジタリアン・ヴィーガンに適した食品に関するISO規格の原文(英文)は購入が必要ですが、要旨については、ISOホームページ(英文)をご覧ください。

第1回委員会で提示された規格案は、「ベジタリアン、ヴィーガンに適した食品JAS」と「ベジタリアン、ヴィーガン料理を提供する飲食店等の管理方法JAS」の2つです。①適用範囲、②引用規格(なし)、③用語及び定義、④ベジタリアン(「卵及び乳製品を摂食するベジタリアン」「卵を摂食するベジタリアン」「乳製品を摂食するベジタリアン」)、ヴィーガンそれぞれに適した食品における要求事項 が記されています。

①の適用範囲に「この規格は、ベジタリアン[(菜食主義者(卵及び乳製品を摂食するベジタリアン、卵を摂食するベジタリアン、乳製品を摂食するベジタリアンを含む。)又はヴィーガン(完全菜食主義者)に適した食品について規定する」(ベジタリアン又はヴィーガンに適した食品JAS)に続けて、「ただし、人の健康、地球環境保全、社会経済的配慮(フェアトレード、アニマルウェルフェア等)、宗教的信条に関する食品には適用しない」とあります。この「ただし〜」以下については委員会で質問が上がり、「今回のJASがこれらの内容を認証するものではない(単にベジタリアン、ヴィーガンに適した食品についての認証である)」という意味だとのことでした。

また、③の用語及び定義には、「食品:全ての生鮮食品及び加工食品(酒類を除く)」とあります。酒類の中で、通常の製品ではヴィーガンでないワインなどでヴィーガンマークを付けて差別化を図る商品も見られることから、農水省担当者に(酒類を除く)の意味を確認したところ、「JASを所管する法律(日本農林規格等に関する法律)第二条において、酒類はJASで定めることができない旨規定されていることから、今般除外させて頂いている」とのことでした。

※日本農林規格等に関する法律第二条には、「この法律において「農林物資」とは、次に掲げる物資をいう。ただし、酒類並びに医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和三十五年法律第百四十五号)に規定する医薬品、医薬部外品、化粧品及び再生医療等製品を除く」とあります。

「ベジタリアン又はヴィーガン料理を提供する飲食店等」とは

「ベジタリアン又はヴィーガン料理を提供する飲食店等の管理方法JAS」規格案の5「サービスの提供に関する要求事項」に、「5.1ベジタリアン又はヴィーガンに適した料理の数」は「主食、副食を含め5品目以上提供できなければならない」との記述があります。これはたとえば、野菜サラダが一品あるからということではJAS認証は取得できないということでしょう。ただし、参加者から「給食会社のように一日に提供するメニュー数が限られているケースではどうなるのか」との声も上がっていました。

動物実験についての規定

動物実験についてはISO規格に基づいて、規格案では「ベジタリアン又はヴィーガンに適した食品」に関する「いかなる動物実験も実施したことがあってはならない」、また「個々の原材料及び添加物に関し、食品関連事業者、その代理として機能する企業、又は食品関連事業者が実効支配している企業は、義務的かつ規制上の要求事項がある場合を除き、いかなる動物実験も実施したことがあってはならない」とされています。これについては、参加者から「関連業者まで含めるとなると、厳しいメーカーもあるかもしれない」との意見もありました。このあたりは、今後の議論に注目していきたいと思います。


 

 



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