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『黄金風景』太宰治 「幸福な読後感」と、満足げに

このnoteは、まだ本を読んでいない人に対して、その本の内容をカッコよく語る設定で書いています。なのでこの文章のままあなたも、お友達、後輩、恋人に語れます。 ぜひ文学をダシにしてカッコよく生きてください。

『黄金風景』太宰治

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【太宰治の作品を語る上でのポイント】

①「太宰」と呼ぶ

②自分のことを書いていると言う

③笑いのセンスを指摘する

の3点です。

①に関して、どの分野でも通の人は名称を省略して呼びます。文学でもしかり。「太宰」と呼び捨てで語ることで、文学青年感1割り増しです。

②に関しては、太宰治を好きな人が声を揃えて言う感想です。「俺は太宰治の生まれ変わりだ」とまで言っても良いです。

③に関しては、芸人で文筆家の又吉直樹さんが語る太宰治の像です。確かに太宰治の短編を読むとユーモアがあって素直に笑えます。


○以下会話

■読後感が良い小説

 「読後感が良い小説か。そうだな、そしたら太宰治の『黄金風景』がオススメかな。『黄金風景』は、心の広さがいかに大切かを痛感させられる小説なんだ。あまり有名じゃないけど短編で読みやすく、とても印象深い小説なんだよ。

『黄金風景』は、主人公とその女中との話なんだ。主人公の家は裕福だったから、何人もの女中が家にいたんだよ。その中に動きがのろいお慶という女中がいたんだ。お慶は、りんごの皮を剥かせても、掃除をさせても、何をやらせてものろくて、ふと目を離すと空中を物憂げに眺めているような女中だったんだ。当時子供だった主人公は、そんなお慶のことが妙にカンに触って、「おい何やってるんだ、早く動け」って口うるさく叱っていたんだよ。

そんなある日、主人公はお慶に、絵本に描いてある兵隊の絵をハサミで切り抜くように命じたんだよ。不器用なお慶は朝から夕方までかかってやっと切り抜いたんだ。主人公が完成品を確認すると、ギザギザに切られてたり、頭がなくなっていたり、とても下手くそだったんだよね。主人公は癇癪を起こして、お慶の顔を蹴ったんだよ。するとお慶は、頬をおさえて泣きながら「一生おぼえております」ってうめくような口調で言ったんだ。

そして主人公が大人になった現在、彼はある事情で家を追われて病気をしてお金もなく海の近くに小さな家を借り、毎朝の牛乳だけが生きる喜びとしてるくらい疲れた生活を送っていたんだよ。簡単にいうと恵まれた幼少期から転落してしまったんだよね。

ある日、戸籍調査のために警官が家を訪ねてきたんだ。身元を言うと主人公と警官は同郷だと分かったんだよ。地元の名主だった主人公の家を警官は知っていて、「あそこの坊ちゃんでしたか」と言われたんだ。主人公が「そうです、今はこの有様です」って自虐すると警官は「小説を書いているなら立派じゃないですか」って言うんだよ。そして続けて「お慶がいつもあなたのお噂をしています」って言うんだ。

主人公はハッとしたんだ。どうやら、この警官はあのお慶と結婚して子供にも恵まれ家族で近くに暮らしているらしかったんだ。主人公は幼少期にしたお慶へのひどい仕打ちを克明に思い出して、申し訳なく恥ずかしく、とてもいたたまれない気持ちになったんだよ。何か償う気持ちで、恐縮しながら「幸せですか」と聞くと「それは、もう」って屈託無く答えるんだよ。警官は続けて「子どもの世話も大変でしたけど、なんとかなりました。お慶も苦労しましたけど、やはりあなたのような大家で行儀見習いした者はどこか違いますね。」って言うんだよ。警官は奥さんの昔の主人である主人公を全く疑ってなくて、主人公の人間性を信頼しきっているんだよね。そして「おかげさまでした。今度お慶と一緒にお礼に上がります」って続けるんだ。主人公は飛び上がるほどギョッとして、いいえ、もう、それには、と激しく拒否したんだ。

それから三日後、お金のことで思い悩んでじっとしていられなくなり、海でも見てこようと玄関を開けると、門の外に浴衣を着た父と母、赤い洋服を着た女の子の3人が絵のように美しく並んで立っていたんだ。お慶の家族だったんだよ。主人公はびっくりして「今日は私はこれから用事がありまして、お気の毒ですがまたの日に」って恥ずかしさのあまりそそくさと逃げたんだよ。

主人公は海には行かず、特に用もないのに街に出て、「負けた負けた」と心のどこかでささやく声を聞きながら三十分ほど歩いたんだ。家に帰ろうとして海辺に出ると、「平和の図」を見つけたんだよ。砂浜にはお慶の家族3人が海に向かって石を投げて笑いあっていたんだ。彼らの声は主人公の元まで聞こえてきたんだ。

「なかなか」お巡りは、うんと力こめて石をほうって、「頭のよさそうな方じゃないか。あのひとは、いまに偉くなるぞ」
「そうですとも、そうですとも」お慶の誇らしげな高い声である。「あのかたは、お小さいときからひとり変って居られた。目下のものにもそれは親切に、目をかけて下すった」

主人公はこの声を聞いて涙が流れてきたんだ。そして彼らの幸せな生活が、主人公のこれからの人生にも光を与えると確信して、お話は終わるんだ。

お慶は、主人公からのいじめを、自分を鍛え上げるための叱責だって捉えて感謝しているんだよね。そして旦那の警官もそれを嬉しく思っているんだよ。主人公は玄関で警官に会って以来、お慶への仕打ちを申し訳なく思う罪悪感と、今は落ちぶれてしまった情けなさが相まって、お慶とその家族に顔を見せられないと思っていたんだ。だけど、警官もお慶も主人公を心の底から信頼してくれて、幸せな生活、まるで「黄金のような風景」を見せてくれたおかげで、主人公の罪悪感も情けなさも涙とともに浄化されていったんだよ。もはや神からの許しだよね。過去の行為をお慶によって許されたことでまばゆい光に包まれるんだよ。

■ものごとは捉えよう

『黄金風景』は読後感が本当に温かくてタイトルの通り光に包まれるような感覚になるんだよね。お慶の強さとお慶と警官の人の良さに主人公が浄化されていく感じが見事だよね。

『黄金風景』を読むと、人生は捉えようでなんとでもなるなって思えるんだよね。何か嫌なことが起きても、自分の中でプラスに捉えていくことで、その後好転していくことってあるよね。別にこの小説から陳腐なビジネス書みたいな格言を見出さなくてもいいんだけどね。

とにかく読後感が素晴らしくて自分も何かを許された気持ちになれるから、是非読んでみて。」



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