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税制に関する会計検査院の指摘 その2

2019年度決算検査報告では、税制に関して2つの指摘がなされています。前回は留保金課税の指摘を取り上げました。

今回は、もう一つの源泉所得税事務の指摘をご紹介します。こちらは、一般のニュースで報道されていないので、あまりご存知ない方もいると思います。あまり税金に詳しくない方にも分かるように書きました。

指摘の概要

まずは指摘にリンクを貼ります。

完全子法人株式等及び関連法人株式等に係る配当等の額に対して源泉徴収を行うことにより生ずる還付金及び還付加算金並びに税務署における源泉所得税事務及び還付事務等について

https://www.jbaudit.go.jp/report/new/summary01/pdf/fy01_tokutei_02.pdf

長ったらしいタイトルですね(笑)

制度の概略

会社が配当を支払う際、20.42%の所得税を源泉徴収することとなっています。株を持っている人はよく分かると思います。

こちらの制度は、支払い先が法人・個人問わずなので、ある会社が別の会社に配当を支払う際にも、所得税を源泉徴収しなければなりません。そして、源泉徴収された所得税分は、法人税の前払として、確定申告時に法人税から控除することになります。

ところで、配当金は法人税を支払った後の利益が原資になっているので、これを受け取った側でも法人税が課税されるとすると、法人税の二重課税になってしまいます。

そこで、一定の場合、受取配当金の益金不算入といって、課税されない所得として扱われます。特に、100%子会社等から受け取った配当金は、その全額が法人の所得となりません。

するとどうでしょう?配当金部分の所得に法人税が課税されない結果、前払した所得税を還付しなければらならない場合が生じます。

例えば、ホールディングカンパニーのように、事業を行なってい親会社は、社員の人件費等を子会社からの配当金で賄っています。配当金が所得にならず、人件費等が損金(税務上の費用)として扱われる結果、課税所得計算上は赤字になります。すなわち、法人税が発生しません。そして、源泉徴収により法人税を前払しているので、これを還付してもらう必要があるのです。

指摘について

純粋持株会社が解禁されてからだいぶ経ちますが、上記のようなホールディングカンパニーは増え続けています。すなわち、最初から還付が見込まれる法人もあるのに、一緒くたに源泉徴収するのはどうなのか、というのが検査の着眼点ですね。

結論的には、制度を見直せば、税務署の還付事務に係る工数を減らせるでしょと言えます。

また、還付金には1%超の利子(還付加算金)が付くので、余計な利子も払わずに済むでしょということが言えます。この無駄な利子ですが、2017年〜2019年の3年間で計3億6563万円にもなっていました。会社からすると、超低金利下のおいしい運用先として国が使われていたことになります。狙ってやっているわけではないですが(笑)

ということで、この制度については、今後見直しが行われると思われます。

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