ほとんどの人が勘違いしているグロースハックにおける最適なフレームワーク
グロースハックにおいて、最も有名なモデルはおそらく 「AARRR(アー)」モデルでしょう。
サービス全体をユーザーの行動に合わせた5段階のステージに分け、各段階の離脱率をファネル(ろうと)の形で整理したものです。
「AARRR」 は 、 ①ユーザーを獲得 (Acquisition、アクイジション)し、②そのユーザーにサービスの価値を感じさせ(Activation、アクティベーション)、③繰り返しサービスを使ってもらい(Retention、リテンション)、 ④友人紹介 (Referral、リファラ ル)や⑤課金(Revenue、レベニュー)をしてもらう、という5つの段階でユーザーの流れを整理し、改善箇所を発見するためのフレームワークです。
AARRRモデルはユーザーの動きを把握するフレームワークとしては非常に強力です。
しかし、このモデルに沿ってグロースハックの施策を行っていくと、高い確率で失敗します。
本記事では、「なぜAARRRモデルがうまくいかないのか」、「グロースハックにおける最適なフレームワークは何か」を解説します。
なぜAARRRモデルではうまくいかないのか
1つ目の理由は、AARRRモデルは施策を行うべき順番ではないということです。
当然ですが、顧客が継続しないサービスや、収益を生まないサービスでいかにユーザーを獲得してもサービスは成長しません。
グロースチームは、しっかりと施策の順番とサービスの成長が連動したフレームワークを用いる必要があります。
2つ目の理由は、AARRRモデルでは各段階での離脱率に力点が置かれているため、“ユーザー体験の最大化”という本来最も重視すべき概念が抜けてしまっていることです。
よくあるグロースハックの間違いが、ユーザー体験の最大化から目をそむけ、細かいABテストなどでファネルの部分最適化ばかりをやってしまうことです。
成熟した大きなサービスではこのような小さな部分最適化でも売上などのメトリクスの”絶対値”は大きく伸びるでしょうが、まだ規模の小さなスタートアップではこうした細かい部分最適化は害でしかありません。
このあたりに関しては、私の古巣でもあるVASILYの金山さんの話がわかりやすいです。
まずは根性、そして「ユーザー体験の最大化」を考えろ!iQONの投稿数を40倍に急成長させたグロースハックの考え方
今記事ではこれら2つの欠点を補う形で、オリジナルで作成したグロースのフレームワークを紹介します。
ARRRA(アーラ)モデルに沿ってグロースハックは行う
AARRRモデルの弊害を回避するために、私は「ARRRA(アーラ)」モデルを使っています。
単純にユーザー獲得(アクイジション)の Aを最後に持ってきただけのように見えますが、その中身はまったく別物です。
まず、ARRRA(アーラ)モデルではアクティベーションの概念を拡張し、“ユーザー体験の最大化”という最も重要なテーマを盛り込んでいます。
また下図から分かるように、本質的な成長を自然と達成できるような施策の順番になっています。
まずはアクティベーション(ユーザー活性化)を達成しよう
多くのサービスやスタートアップが失敗する理由はただ1つ、顧客に求められないサービスを作ってしまうことです。
すべてのサービスは「誰の・どんな課題を・どうやって解決するか」、つまり「顧客・課題・解決法」という3つの要素から成り立っています。
よくあるのが、そのサービスが解決しようとしている課題が実は存在していなかった、というものです。
開発やマーケティングに膨大な時間と資金を使った後でこうした事実に気付くのでは遅すぎます。
本格的な開発をするよりも先に、「そもそも解決しようとしている課題を、本当に顧客は抱えているのか?」「そもそもこのサービスは顧客が求めるものか?」という問いを先に検証しましょう。
こうした検証が完了した状態を「Problem Solution Fit(PSF)」と呼びます。
PSFの検証をするにあたって非常に強力なフレームワークがあるので、次回のアクティベーションの記事で詳しく解説します。
また、ニーズが存在していることが分かったら、顧客の初回体験時にしっかりと製品の価値が伝わるようにします。これは俗に「ユーザーオンボーディング」と呼ばれています。
PSFの検証によって「そもそも、このサービスには価値があるのか」を見定め、ユーザーオンボーディングによって「その価値がしっかりと顧客に伝わる」ようにするのです。
Problem Solution Fitの達成と、ユーザーオンボーディングの最適化という一連の作業がアクティベーションであり、何よりも優先して行うべき作業です。
参考)CB Insightのスタートアップが失敗する理由 TOP20
1位は「マーケットニーズがなかったこと」で42%。おそらく本当に突き詰めると99%はこの理由によるものだと思います。
( https://www.cbinsights.com/blog/startup-failure-reasons-top/ )
そしてリテンション(継続)させよう
顧客が求める価値を持つ製品が作れたからといって、継続して使い続けてもらえるとは限りません。
しっかりと使い続けてもらうためには、継続させるための仕掛けを製品内に組み込んでいく必要があります。
リテンション(継続)はアクティベーションと同等に重要なものです。
使い続けてくれるくらい製品の価値に満足してもらわなければ、課金や招待などしてくれるはずもなく、さらには継続されない製品にいくら新規ユーザーを連れてきても無駄だからです。
リテンションに関しては、また別の記事で詳説します。
ほかの3ステップは後からついてくる
このように、ARRRA(アーラ)モデルはサービスを本質的に成長させるためのロードマップとして適しています。
アクティベーションとリテンションの2つのステップがクリアできて、ユーザーに製品の価値が伝わり、使い続けるほど満足してもらえたならば、残りのリファラル (紹介)、レベニュー(収益化)、アクイジション(ユーザー獲得)は後からついてきます。
なぜなら最初の2つのステップをクリアしているほど満足度の高いユーザーは、喜んでそのサービスを友人に紹介したり、喜んでお金を払う可能性が高まるからです。
また、最初の2つのステップによって継続率が高まり、リファラルとレベニューの達成によって顧客1人あたりの収益(ARPU)が上がると、アクイジションに使える顧客獲得コスト(CAC)にも余裕が出るため、結果的にアクイジションの成功にもつながります。
まずはアクティーベーションとリテンションという本質的なステップを達成し、それから紹介・収益UP・ユーザー獲得にフォーカスを移していくことで本質的なGrowthを達成していきましょう。
さいごに
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