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人生とマグカップについて - 『今夜もウェブで会おう』 (第15通目)

結局、原点に戻る

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梶さん

最近調子どう?
先月まで、ドイツのベルリンにある、ヴィーガン(完全菜食主義)専用の集合住宅に住んでいたよ。住人は5人で、だいたい1ヶ月ぐらいの滞在だった。

ウチは確かに、「ベジタリアン」的な食生活をしているけど、卵類と虫、時々乳製品を食べるから、厳密にはヴィーガンではない。
けど、居住の条件として、そこにいる間は完全植物性の食事さえしていればOKみたいだったから、住むことにした。

思い返すと、ドイツで友達の家に泊めてもらったり、現地の人の家に間借りをしたり、現地の人の留守宅で、動物や植物の世話をしたりしながら暮らす生活も1年半になった。
そういう暮らしを続けていると、他人の物をさも自分のものかのように、抵抗なく使えるようになってくるんだよね。
そして、そこに住んでいる人たちの食器や寝具を使うことを通して、持ち主の趣向や生活感を感じ取ったりする。

ヴィーガン物件の人たちの持ち物も特徴的だったよ。たとえば、健康志向が強いのか、こまめにお茶や水が飲める大きめのマグカップがたくさん置いてあった。
中には軽く700mlは入りそうな、片手鍋の弟分みたいなマグカップもあってさ。
そのマグカップは需要が高くて、みんなが取り合ってるから、なかなかお目にかかることができないんだけどね。

制作作業をしている間、ずっとチミチミ飲み続けられるような大きいカップはすぐに取られちゃうから、とにかく大きなカップがいいウチは、デザインの良し悪しに拘らずに、とにかく大きい順から取って使っていたな。

ウチがよく使ってたのは、いかにもオーストラリア土産なこのカップ。なぜか誰も使いたがらないんだけど、ゆうに250mlは入るので個人的には嫌いじゃない。大好きなコーヒーがたくさん飲めるサイズ。これ、一番大事。

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けど、もしウチがどこかに定住してて、自分の思うような家具が持てるなら、流石にもうちょっとデザインにはこだわるね。
だってこの絵柄、アボリジニの伝統文様を押し出しまくってるけど、お土産屋が勝手に作ったもので、売り上げがアボリジニの人たちに一銭も入ってなさそうじゃん?

ウチがマイカップにしたいのは、このカップみたいに見た目がうるさくなくて、飲み物の色が外側から見えるような容器だね。コーヒーでも紅茶でも、香りや味だけじゃなくて、色も楽しみたいしね。

そういうわけで、ヴィーガン・シェアハウスでいろいろなカップを試した結果、うちに一番合ってるマグカップは、メイソンジャー(広口瓶ふうの大きなガラスカップ)っていう結論になった。
むかし、東京で会社勤めしていた時も、メイソンジャーをマイカップとして使ってたっけな。

ちなみに、そのヴィーガン・シェアハウスは、今はもうなくなっちゃったんだ。
先月末にシェアハウスの持ち主と地主さんとの契約が終わったから、ウチだけじゃなくて、そこに住んでいる全員が出て行かなきゃいけなかったんだよね。

最後の大掃除の日、玄関口に積まれているゴミの山にふと目をやったら、その中に、ウチがずっと使ってたのと同じメイソンジャーをつけ見ちゃったんだよね。思わず拾ってアトリエに持って帰ってきてしまった。

そのメイソンジャーは今、ウチのデスクの上でマイカップとして活躍している。
まさか、ここベルリンでもメイソンジャーを使うことになるとは。
いろいろな場所を旅していても、こだわりは意外と変わらないもんだね。

梶さんはマイカップ、どんなのを使ってる?

将軍川



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なんだかんだで10年以上ずっと同じ

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将軍川くん

こっちは梅雨だよ。

雨の日には雲が上空を覆っているので、地上に降りてくるのは、波長の長い光(赤い光)が多くなる。ただ、室内はLED灯の白を使ってるから、たまに外を見ると、ほんのり風景が赤っぽくて、植物の緑色が鮮やかに見える。

そうそう、マイカップの話だよね。
今、手に持っているのは「SUNNY DAY」って書かれた、すっごく普通の白いマグカップだよ。
17歳の誕生日に、部活の友達にもらったもので、10年以上365日、ずーーっと使ってる。
変える必要のないものは積極的に変えないんだよね。マグカップとか、仕事用の防水ジャケットとか、いくつかのものは、タイムスリップして過去のものを持ってきたんじゃないかっていうくらい、ずっと同じキャストでやってもらってる。

実家の家族も高校時代からずっと同じキャストだけど、人は経年変化が激しいし、買い直せないところが日用品と違う。

わたし自身はモノを買うのが好きな方だから、調理器具や服、靴、焼き物なんかはよく買ってる。ただ、マグカップについては買い換えようと思ったことがないんだよ。

今も使ってる「高校時代マグ」は普通の大きいカップよりも30mlくらいたくさん入るところが気に入っているし、本体は厚めで安定性があるから、机に置いてもこぼしにくい。電子レンジにもしっかり対応してるから、冬は冷めた紅茶を何回も温め直して飲んでる。夏は麦茶を入れてガブガブ飲んでる。

まあ、結局、振り返ってみると、他のマグカップではもはや替えが効かないんだろうな。

このマグカップみたいに、デザインがどうとかじゃなく「問題がなくて頑丈だから」ていう理由で生き残っている持ち物って、たまにある。
体温計とか、紅茶の缶とか、マウスパッドとかね。

まあ、生活用品の中に、地味で頑丈なものが生き残りやすいカテゴリっていうのがあって、そこでは現役50年のマグカップやら30年の防水ジャケットやらが、時を超えて頑張ってるんだと思う。
あ、でも、こんなふうに書いちゃうと、このマグカップが割れるのが、ちょっと怖くなるな。

じゃ、またメールするね。いつも締め切りギリギリでごめん。




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🍬おまけ

アイコン_将軍川

最近小さな手帳を持ち歩いて、スケッチを始めた。
自分の作品とは直接関係ないものばかりだけど、
何気ない生活が生活がちょっと楽しめるようになった気がする。

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