「無能」って定義の問題じゃない? - 『今夜もウェブで会おう』 (第10通目)
📧将軍川→梶 ①
梶さんへ
最近、ひろゆきのトーク動画を聞き流しながら仕事をするのが日課になってるんだ。その中で、「有能さ」と「無能さ」の意味について、ひろゆきが語っているエピソードがとても心に残っててさ。
「有能な人」が存在すると、それよりもヒエラルキーの下にいる人は、自動的に無能ってことになってしまうという話だった。
ハタから見ればウチは、たくさんお金を稼いでいない。フリーランスのイラストレーターとしては平均以下、すなわち「無能」の部類にはいる。でも、これは、稼げる人と比べて稼げてない、ってことであって、たまたまヒエラルキーの下に位置しているから「無能」なだけ、何にも悪くないってことなんだ。
「ウチは、フリーランスのヒエラルキーの中では下だ。そういう意味では、昔から今まで、ずっと『無能』だったんだ。」って気づいた瞬間、気持ちが楽になった。「そっか。そんなら、しょうがないね」って。
昨年末、相性が悪かったクライアントとの契約解除をきっかけに、取引先を古くから続いている一件だけに絞った。新規案件のための営業にもいかないし、積極的に仕事募集もしてない。
これがフリーランス的にはまずい動きだってのはわかってる。梶さんが言うように月に15万以上稼げば「世界が変わる」っていうのも知ってる。
けど、「無能」のウチは、今から「有能」になろうというという無理ゲーはしない。
これでいいのだ。
ブダペストも今日は晴れだ。
そっちも晴れだといいな。
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📧梶→将軍川
やほー
そんなこと考えてたんだ!
わたしは将軍川くんを無能って思ったことないよ。
多分それは、金を稼げるかじゃなくて、どれだけ絵が上手いか、非凡か、というところで見ていたからなのかもね。
わたしにとって将軍川くんの絵の才能は、いつでもすごいものだよ。
ひろゆき氏の考え方は、抽象的で
人間は、自分のできることの範囲内では「有能」なんだと思う。
たとえば、ソフトバンクの孫さんや、ファーストリテイリングの柳井さんに経営をさせたら「有能」。
だけど、あの2人がもし、ジャズバンドのトランペットに任命されて、ディナーショーに出ることになったら、観客にヤジを飛ばされて、「ちっさいレストランのライブもこなせない無能な人」になる。
だから、「できないこと」じゃなく、「できること」を見ればいいんだと思うの!その範囲内では「有能」だから。
で、他のすごい人と比べると、必ず、相手の方が優っている部分があるから、比較するのはやめよう。どっかで「無能」判定が出る。
それって、「落ち込み量産マシン」みたいなもんだと思うんだ。まあわたしは、「わたしってかわいそう…」と思いながら泣きたい気分の時に、やってるけどね。
そして、お金を稼ぐなら、まず、自分が何なら「有能」かを知ればいいと思う。
いまのところ、ネットサーフィンできてるんだから、パソコン使えて「有能」。あと、英語が日常会話レベルでできてて「有能」。ペットの世話やごはん作りでは「有能」。
人と温かい関係を作るという部分も「有能」だよね。あと、仕事が自分に適しているかどうかわかるようになった、これも「有能」。
こういう「有能」の部分が役に立つと思うんだよ。
将軍川くんの「絵が描ける」という有能に、ほかの有能を掛け合わせれば、すばらしいことになると思うんだ!
使えるものを使おう!人生短い。
そういうことで、将軍川くんが「金を稼ぐ」という点では無能だということを知ったけど、あんまり気になんないな。
あと、個人的には、「こいつアホだな」って思われてる方がラクで好き。
こっちは5月晴れだよ。
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📧将軍川→梶 ②
今は悟りを開いたというか、かなりポジティブな気持ちだよ。
そこを報告したかったんだ。
人間・将軍川としては、ウチはある程度の能力は持ち合わせていると思っている。
自分の名誉のために言っておくと、「金を稼ぐ」という能力の点では、一応諦めてないよ!
ただ、ウチは「依頼を受けて絵を描くイラストレーター」としては無能だった。その事実を「晴れている日中の空は青い」と同じくらいニュートラルに認識できるようになったんだ。
これまでずっとウチは「自分には『絵の描写力』がある、つまりスキルがあって有能なはずなのに、なんで思うように依頼がこなせないんだろう。どうしてだ」って、苦しみ、悩み抜いていた。
でも、それは間違った思い込みだった。
欲しかった結果がついてこないというのは、ウチが「無能」な証拠だった。そこを受け入れることができたんだ。
フリーランス・会社員関係なく「依頼を受けて絵を描くイラストレーター」は複数のスキルで成り立っている。『描写力』だけじゃなくて、
・会社や取引先に好かれる人間スキルと営業力
・理不尽なやり直し要求に耐え続ける鋼のメンタル
・安い報酬でも元が取れる程の作業の速さ
・みんなが好きそうな流行のスタイルを抵抗なく取り入れる柔軟性
・クソダサい要件でもワクワクしながら仕事ができるピュアな心
…まだまだある。
けど、ここまで書いてみて、さて、自分自身を振り返ると、「残念、キミ、持ってないねー」って評価をするしかない。そういう自分自身を認めるしかないんだ。特にメンタルなんて豆腐だしな…
長年、仕事を取ってきては、これきっかけにうまくいってやる、と心をすり減らしながら戦ってきた。それでも崖っぷちが見えてきたウチにとって、前の案件は「最後の砦」だった。
でも、ウチは「依頼を受けて絵を描くイラストレーター」として無能なんだ、ってことに気づいたおかげで、長年抱えてきた、このつらくて鬱屈した気持ちを、あっさり手放すことができた。「はい、さよーなら」って具合に。
人生は長く、世の中は常に変わり続け、色々なことで満ち溢れている。だから向いていないことは無理をしてやらなくてもいいって分かったんだ。
つまり、梶さんの言う通りですよ~!
資本主義社会っていうヒエラルキー的には、ウチ下の方にいるから「無能」かもしれない。今はね。
けど大丈夫。人間・将軍川としては、ウチはある程度の能力は持ち合わせているから。
未来は明るい。2020年は今、始まった。
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🍬おまけ
東京@めっちゃいい天気
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