見出し画像

告白

その日、大人十数人で掘り上げてきた筍が、離れにあるお台所の土間に無造作に積まれていた。筍掘りというイベントに満足したのか、筍の行方を誰も気にすることなく、広間の囲炉裏を囲んで宴会が盛り上がっている。

掘りたてを米糠で茹でた鍋も気になっていたし、残りも皮を剥いて下処理しておきたいし。コップ酒を手に私はひとりで筍を次々と調理していた。

そこは元カレ親友ご両親がご隠居されている隣県の古民家風お住まい。過去拙筆「友だちの友だちはみな友だちだ、世界に広げよう友だちの輪は難しい」登場人物たちが主要メンバーだった。

「申し訳ないなあ。"おさんどん"させちゃって」

そう言いながら、家の主である元カレ親友父がお台所に入ってきて呑み始めた。

私が仕込む筍ご飯や炊き合わせの作り方を聞かれたり酒の話をしたりして談笑していると、シンクを前に作業する私の背後から突然抱きつかれた。

ぎょっとしたが、酔っ払った悪ふざけだと思い(たかった)「お父さん、酔っちゃいましたか〜?お具合悪いですか?先に休まれたらいかがですか?」大人の対応として選んだ精一杯の言葉を口にして離れようとしたが、無言のまま私の腰を両手で掴み、下半身を当てて腰を振り始めた。

「お父さん、お父さん。冗談きついです。やめてください」それでもやめてはくれない。

張り付いた身体を振り解き、皆のいる広間へ私は走った。元カレ親友父はそのまま寝室へ入ったようだった。楽しく呑んでいる皆には話せなかった。

我を忘れるほど酔っていたようには見えなかったけれど酩酊していたのか?そうでないなら、離れた別室とはいえ、自分の妻、息子夫婦、孫、息子の友人たちが大勢いる家の中で?そんなことが頭を支配して眠れない夜を過ごした。

翌朝、また囲炉裏のもとで皆朝食を摂りながら、それとなく様子を窺った。私から目を逸らし避けているような姿を見て、しっかりと記憶があることを知った。

帰路、車の中。昨夜起きたことを元カレに話すと黙って聞いていたが、私がひと呼吸するのを見計らって

「俺は自分の目で見たことしか信じない」

「ジブンノメデミタコトシカシンジナイ?」

声にして私は繰り返していた。

「それって私が話したことを信じられない、信じないってこと、かな」

少しの沈黙の後、自分が親友父とどれだけ長い付き合いか、どれだけお世話になってきたか、どんなにいい人か、そして私との付き合いが親友父とのそれと比べればいかに短いか。

矢継ぎ早に元カレは言葉を続けた。

途中から元カレの言葉は電波妨害にでも遭ったように奇妙な音としか聞こえなかった。

「信じて、寄り添ってほしかった」それから二日後、元カレへの最後の言葉にした。

*数日前、フォローさせて頂いているnoterさんの同じような苦い思い出を拝読しました。そして、ずっと鍵を掛けていた箱を、この場をお借りして開けさせて頂きたい、そう思いました。

「クソ男とエロじじいの事故に遭った」(言葉が悪くて申し訳ありません)と思えるようにまでなりましたが、今この瞬間、悩まれていらっしゃる方もどこかにおいでになるかも知れません。

特に男性の皆さま、もし大切な方や周りの女性から相談があった時には、ご自身と加害者との関係性に迷うところがおありだとしても、どうか公平なご判断で受け止めて差し上げて頂きたく思います。お聞き苦しい記事をご容赦ください。お読みくださいましてありがとうございます。

この記事も一切の創作を含みません。願わくば、元カレそして元カレ親友ご夫婦の目にも私の言葉が留まりますように。

いいなと思ったら応援しよう!