「役者は一日にしてならず」中村敦夫編
春日太一さんの著作「役者は一日にしてならず」の読書感想文を書いています。
中村敦夫さんのイメージは、私にはニュースキャスターの姿しか思い浮かばないのですが、今回このインタビュー記事を読んでみて、非常に面白いと思いました。
私が、この一つ前に書いた夏八木勲さんのインタビューと時代が重なっている部分が幾つかあったのも興味深く思いました。生年月日的には夏八木さんの方が2ヶ月ほど先輩ですが、俳優座養成所では中村さんの方が6年も先輩です。
そして、中村さんもまた、養成所のカリキュラムをキチっとはやらなかったクチだったようです。
不思議とアウトローな方々は、大成していたりしてて面白いですね。
中村敦夫が語る、1960年代の演劇•映画業界の話は激動さに目を見張りました。
劇団がテレビへ俳優をエージェントして得た利益で劇団の赤字を埋めるとか。
演劇の演目も、社会主義な内容をやりたい人がいたり、そうではない人がいたり。そうすると内部で分裂したり。中村さんが俳優座と揉めた理由も当時を想像するとなるほどと思います。
フジテレビで「木枯し紋次郎」が大ヒットしたのは私もテレビ番組でなんとなく知っていました。
中村敦夫さんは、この作品がヒットしたのは、内容が時代の気風に合っていたことと、そして自分が時代劇を知らなかったから「何もしなかった」からであるとおっしゃっています。
殺陣の身のこなしがまるで出来ていない。
「そこで殺陣師の美山晋八さんが僕を見て『これはアカン』と思って『ドキュメンタリーでいこう』と。
足だけは速かったから、僕が本気で逃げるのを敵は大勢で追っかけてきて、あとは勝手にやってくれという。」
この、紋次郎での殺陣のシーンのお話は、そのドラマを見ていない私でも、想像して、さぞ痛快であろうと思えました。
三船敏郎さんと、三國連太郎さんとのエピソードも良かったなぁ…。
「演技の勝負どころ」についても、例えがわかりやすく、日々そうやって俳優さんたちは様々なフィールドで試合をするかのごとく演じ合っているんだと思うと、表現の世界の面白さに改めて、俳優さんをしていることって、いいなぁと思いました。
その後の中村敦夫さんの人生的には、報道番組のキャスターになり、さらに参議院議員にもなっています。
そのエピソードを語る上で、
人間は誰でも演技をしているというお話が素晴らしかったと思います。
「社会を形成するためには、誰にでも役割がある。それを果たすために、演技をしているんです。
親父は親父らしくする。いつまでも若者みたいだったら困るわけでしょう。」
そして、シナリオの大切さにも言及しています。
全部転記したいような言葉が、これでもかと書かれていて、読ませていただけて実に勉強になりました。
面白かったです。
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