山賊の後輩とオンラインゲームして楽しかった話
「この低気圧は人死にが出るぞ…!!」
そんな縁起でもないことを考えながらリビングで死体のようになっていた。
虚弱体質な人の例に漏れず、僕は気圧が低くなると体調が悪くなる。
おまけにメンタルもあまり強くないので、心も荒む。
ネガティブ・被害妄想の類の思考がぐるぐるしだして、
ゾンビのようにうなるしかできなくなる。
「ゲームしましょ!」
そんな午後のこと山賊のような後輩の片割れからLINEが飛んで来た。
某バトルロワイヤルFPSゲームのお誘いだ。
次の予定まで時間はあったし、やってみることにした。
そのゲームは基本的に三人一組でプレイするゲームなので、
手練れの山賊二人とズブの素人の僕で組むことになる。
僕はプライドがエベレスト並みに高いので、
チームプレイで人様に迷惑をかけるということがこの上なく嫌いだ。
だけど山賊たちが度々こうやって声をかけてくれるので、
その厚意に甘えて勇気を出してみることにした。
「最近調子いかがですか?」
そう聞いてくる山賊の片割れに僕はこう返した。
「いや〜、最近雨続きなせいか完全に統失気味だねぇ。被害妄想激しすぎてヤバイ」
聞く人が聞けば小一時間説教をされるくらい不謹慎な発言だが、
山賊たちは二人とも笑ってくれる。
「そういえばあいつらがコソコソ先輩の話してましたよ…」
そして悪ノリをして僕の被害妄想をネタにする。
僕がこの二人を山賊と揶揄しながらも、
友人としてアテにしてるのにはこういうところがある。
今まで僕はメンタルの問題みたいな後ろ暗い話は、
同じようなパーソナリティを持った人とした共有しなかった。
そうじゃないと無理解な態度で返され傷つくと思ったからだ。
その考えは間違いじゃないけど、
そういう繋がりは前進のない傷の舐め合いになる可能性もある。
山賊たちは別に病んでいる人達というわけではない。(変わってはいるけど)
むしろたくましい側の人とも言っていい。
そういう人たちにあえて自分の弱さを開けっぴろげにして、
「愛嬌」として笑ってもらう。
27年生きて来てようやく見つけた、
自分との一つの向き合い方なのかもしれない。
「よくもnoteに山賊って書いてくれたな」
そう言いながら山賊たちは初心者の僕に超上質な接待プレイをしてくれる。
プレイのサポートからアドバイスまで至れり尽くせりだ。
しかし、いざ敵と対面すると彼らは、
書くのを憚れるほどのラフプレイで相手を蹂躙していく。
やはりこいつらは山賊だ。
「見てください親分!こいつらのザマを!」
「親分は俺たちのブレインだからな」
気づけば僕は山賊の頭目になっていた。
「やなこった」と心中でつぶやく僕は、
低気圧の呪いから自由になっていたかもしれない。