あなた私の○○盗ったでしょ?
買取屋で働いていると毎日さまざまなお客様がご来店されます。
来られるお客様は、良いお客様からちょっと困ったお客様まで飽きることはありませんが、やはり全てのお客様が良いお客様という訳ではありません。
その中でも、とくに困ってしまうのが「あなた、私の○○盗んだでしょ?」とおっしゃられるお客様です。
実際に、筆者が体験したエピソードをお話しましょう。
できる限りお客様の目の前で対応するルールを守ったハズが
まず、どうしてお客様が「自分が持ってきたものを盗られた」と感じてしまうのか。それは、買取屋ならではの査定の流れがひとつの原因です。
買取屋を利用したことがある方は想像しやすいと思いますが、多くの買取屋では接客のカウンターで預かった商品をお客様の目に見えない査定室に持って入って査定をします。
貴金属の場合は、査定室に置いてある検定済の秤で重さを測ったり、試金石に金を擦り付けて金性の確認をしたり。また、ブランド品の場合は写真を撮ってフランチャイズの本部やブランドのバイヤーに値段を問い合わせることもあります。
そうした査定の流れは、本来はお客様に見せたくない「バックヤード」の部分ですので、お客様に見えない査定室で行うことが多くなっています。実際に、当店でも査定室での査定が基本的な流れです。
しかし、お客様の目の前で査定を行わない以上、持っていったはずの品物が無くなったら対応した査定員を疑うのは無理もないことです。
筆者も実際に、査定をしたお客様から「あなた、裏に持って入った時にネックレス盗ったでしょ」と電話で怒鳴られたことがあります。とはいえ、当然査定室にもカウンターにも監視カメラがありますので、「監視カメラの画像を一緒にご確認されますか?」と言えばほとんどの場合はご納得頂けますし、後になって「やっぱりあったわ~」と電話がかかってくることもあります。
そうした経験を積み、最近では、特に多量の荷物をお持ちこみされるお客様は、極力お客様の目の前で査定をするように心掛けています。多量の商品をお持ちこみの場合、お客様自身もどれを持って行ったのか忘れてしまって、「無くなった!」と感じることも少なくないのですね。
今回、トラブルに発展してしまったお客様のケースでも、大量の商品のお持ちこみに加え、他店舗の値段と比較されるという条件が重なったのでカウンターで対応しました。他店舗との比較を前提としている場合、商品をお持ち帰りする結果になることが多く、お客様が商品が無くなったと勘違いされる可能性はより高くなります。
しかし、接客自体は終始笑顔で終わり、数点のお品物をお買い取りさせてもらったにも関わらず、「そこに、時計忘れていないかしら」という電話がかかってきてしまいました。
親切にと気遣ったことが裏目に出たケース
すぐに、カウンターを映した監視カメラを確認すると、お客様が自ら持ち帰りの商品をまとめたカゴに時計を入れていることを確認しました。
それをお客様にお伝えしましたがご納得されず、再来店されたので一緒に監視カメラの画像を確認。さらに、蓋のないカゴだったので、車に落ちている可能性を考えて私もお客様の車を確認しましたが、そこにも時計はありません。
ようやくご納得され、「もう一度、家を探してみるわ」と帰られたものの、すぐに電話があり、家にやっぱり無いのよねとのこと。
しかし、監視カメラを一緒に確認した以上、店内に時計を忘れたのではないことはご納得頂いているハズです。
ためしに、「○○さん、正直に言って私を疑ってらっしゃいます?」と聞いたところ、ハッキリと盗ったでしょとは言わないものの、それしか考えられないよねとのこと。
今回、持ち帰りの商品をカゴに詰めたのはお客様自らでしたが、大量のお酒もありましたので、重たいでしょうと私が車までお運びしました。
お客様が言うには、そのカゴを運んでいる一瞬のうちに、私が時計をカゴから抜いたのでは?ということでした。
当然、お客様の隣で話をしながら、お酒が10本近く入った重たいカゴから時計だけをお客様に気づかれずに抜くことは不可能です。手品師でもない限り難しいのではないでしょうか。
加えて、お持ち帰りになった時計はバイヤーへの売却額が2万円程度の一般的な時計、職を失ってまで盗むリスクを冒すようなお品物ではありません。
そうした点をご説明のうえ、ご納得頂けないようなら警察にご相談なされても構いませんというと、「でも、警察に行っても時計返ってこないわよね」とお客様。
そうですね。私は盗ってないので、警察に行っても帰ってきませんね。
ご納得頂けていない様子でしたが、そこで話は打ち切り、その後お客様からのご連絡はありません。
どこまでサービスをするべきか
今回のケースでは、監視カメラに映っていない駐車場に、私が品物を運んだことでお客様に疑われる余地を残してしまいました。
では、監視カメラに映っていない外で商品を触るのは危険だから、重たい荷物でもお客様自身で運んでもらうべきでしょうか?
しかし、一部のお客様で予定外のトラブルが起こったとは言え、リスクを避けるために全てのサービスを控えるというのも違う気がします。
できるだけ、リスクヘッジはしながら、困ったお客様ではなく良いお客様に合わせたサービスをしていきたいところです。