明けない夜と、明けてほしくない夜。
電気を消した部屋にドアの隙間から廊下の蛍光灯の光が入ってくる。寝るには少し明るくて。でも、たった一人の部屋で独りじゃないことを教えてくれてる。
頭がいっぱいになって、何も考えられなくなる。そのふわふわした、もやもやした気持ちがずっと回り続けてる。
ブルーライトはよくないらしい。特に寝る前には。
そんなことわかってながらつい2分前までパソコンやスマホとにらめっこしてた。だからなのかな。目を閉じてもまぶしいまま。
眠れない夜には、眠りたくなかった夜を思い出す。
小学生のときの、お泊り会。
何度あの家に泊まっただろう。本当にお世話になった友達の家。
初めての夜。夜ごはんを食べて、ボーリングに連れて行ってもらった。あんな大きなボールを投げるのなんて、まだ小さかった私には難しくて。
夜9時過ぎにカラオケへ。初めてのカラオケ。初めて見る小さくて大きな音の世界。一曲も歌わずに見てただけだったけど、ポテトだけは人一倍食べた。
全然寝れなかった。いつも親の漁を手伝うあいつはすぐに寝たっけ。朝は誰よりも早く起きてゲームしてたけど。寝たくなかったけど、みんなぐっすり寝ちゃったんだよなぁ。朝の9時まで。
いつものレギュラーメンバーにたまに加わる友達もいて。
4度目の夜の、あいつ。小さくて高い声のあいつ。元気でうるさくて歌が下手なあいつ。転校したけど元気なのかな。きっと今は私より大きくて、声も低いんだろうな。
最後の夜。泊まらなかった、最後の夜。
中学のルールで友達の家には泊まれなくなって。進路が決まって某ステーキ&ハンバーグ屋さんで夜ご飯だけ一緒に食べた。どうすんの?わかんない。そんなことばっか言ってて。初めての夜は幼稚園児だった友達の妹も、春から中学生らしい。
帰りたくなくなって、結局友達の家に行って。
はしゃいで。はしゃいで。夜11時。
高校生なんだもんなぁ、私たち。
もう高校生なんだよね、私正確には違うけど。傘で空飛べる論を提唱し続けたあの子には彼氏ができて。会話は全く嚙み合わないけど仲のいいあの子は獣医を目指してて。
楽しかったあの夜の記憶はどんどん薄れてきてて。
きっといつか忘れちゃうのかな、って。
いつか、なかったことになるのかな、って。
小学生だったもの、しょうがないよ。といいつつ。
このもどかしさに体がうずうずする。
胸が熱くなって、暑くなって、眠れない。
たった一人のこの部屋で、みんなの声が聴こえる気がして。
目を開けると、やっぱり、独りだったりする。
何やってんだろ。
戻りたいとか、戻れないのを知ってるから思わないけど。
今も楽しいから、思わないけど。
でも。
明けない夜はないなんて言うけど、
明けてほしくない夜もあって。
それがあの日の夜で、あの日の夜で、あの日の夜で。
明けてしまった朝を毎日過ごしていく。
悪いのはわかってるけど、スマホが見たくなって。
あの日の夜の写真を見て、最後の夜の写真を見る。
変わってしまったけど。
変わんないな。
変わらないだろうな。
変わってほしくないな。
そんなこと考えて寝てしまった。
今日も夜が明ける。