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# 実験設備の設営が完了した.

渡独して5か月.博士課程に進学して4か月.今所属しているグループでプロジェクトの立ち上げを任され,奔走し始めたのが渡独して3か月が経ったころだったので,3か月かけて設営だけかよ,と思う人もいるかもしれない.ところがこれがなかなか難しい.

そもそも何もない状態から始まった.先行研究もほとんど存在しない状態.似たようなテーマで似たようなことをやっていた,といううっすらとした希望を手に始めたプロジェクトが遂に目の前にモノが見える,というところまで来た.

必要な部材を自分で図面を書いて製作会社に発注を依頼する.ドイツの会社に頼むと待っているだけで僕の留学期間が終わってしまうから,という理由で日本の会社とやり取りをすることになった.8時間の時差を経て行われたやり取り.

そしてとにかく沢山存在する”担当者”から情報をかき集めて一つの設備を整えた長い旅.流石ドイツで一位を争う研究所というか,実験器具が一つ違うだけで担当者が変わるから,次々登場するドイツ人の名前を上手くさばいて自分で記憶・整理し,話を聞きにいく.納得のいく回答が得られなければ相手の要求を満たすために再度別の担当者に話を聞きに行く.おかげでこの数か月で部門に知り合い・友達は沢山できた.

言いたいことは沢山あるけど,大切なことを一つだけ.今回のことをきっかけに思った自分が価値を見出すものは何か,ということに関して,次の通り書き記す.

一つの目的を達成するために,大勢の知恵を集結させ,力を合わせて実現する.そして今回,その中心は確実に僕だった.

こんなに楽しいことが他にあるのか,と思った.誰もやったことのない,やっていないことを実現するために周りを巻き込んで協力してもらい,一つのことを実現する.そこには働き方の違いから来る齟齬も多々存在した(大半はドイツ人のワークタイムが短すぎるのと完全な分業制,というところから来るものだったけど,これについてはまた後日述べるとしよう).それを乗り越えて目的を達成する,自分が”これを実現したい!”という考えが具現化していく,その過程を全て自分で管理した.自分にしかできないことを,自分の力で,しかも他人を巻き込みながら進めていく,この価値観は僕のこれまでの人生,そしてこれからの人生でもおそらく変わらない”軸”というものに他ならなかった.そしてそれが今日遂に実現した.勿論これから結果を残すことの方が重要だし,設備を整えただけでは何の成果にもならないのでひけらかすような真似をするのはあまりに愚かだが,僕にとってはとても嬉しい出来事だったし,多分このエピソードで多くのみんなが抱く”研究”へのイメージは変えられる,そう思う.

研究は決して一人では進められない.

これは僕の持論だし反対意見はいつでも受け入れるし,専攻によっても大きく異なる部分はあるかもしれない.だけど,でも世界中の人間が同じテーマに向かってあれこれ考えている世界において,一人で考えることなんて本当にたかが知れているはずだし,だからこそ協力して一つの目的を達成することこそ問題解決への近道ではないか,と思う.

机に向かって”一人で”あれこれ考えることだけが研究じゃないんだよ.僕が言いたいのはこのことですかね.研究も思ったほど悪くないよ,と言って少しでも研究したいと思う後輩が増えることを祈って今日は終わります.あまり言いすぎると洗脳みたいになって良くないですがね.





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